私は見習い魔法使いのノア。
私もやっと、自分のアトリエを持てるようになって、
今日はお引越し。
家具や荷物を整理するのって、案外大変なのね。
「ねぇ、ねこ、わたし疲れちゃった、
紅茶でも飲んで、一休みしましょうよ」
ねこ…私のペットのネコの名前。
ねこってそのままでも可愛い名前だと思うのよね。
だから、そのまま名前をつけちゃった。
「にゃ~」
「あら?にゃ~ってあなたしゃべれなかったっけ?
しょうがないな~、もう。ほら!」
私のプログラミングの魔法でねこをしゃべれるようにする。
「休んでばっかいないで、ちゃんと整理すれば~。
今日中に終わらないよ~」
「あなた、ご主人様に向かってずいぶんと生意気なのね」
「君がこうプログラミングしたんでしょ~」
「そうだったかしら」
仮に動物が人の言葉をしゃべれるようになっても、
人のようにしゃべれる訳ではないわ。
それができるように、いわばソフトのようなものを入れてあげれば、
しゃべれるようになるの。
そういう魔法をプログラミングして、かけてあげればいいんだけど、
これは非常に難しい魔法で、しっかり魔法を組み立てていかないと、
ちゃんとしゃべらなかったり、性格が歪んだり、大変なの。
それをさらっとやってのける私って天才よね♪
「私って天才!」
「ば~か」
「あっ!酷い!ねこのくせして~!」
「だから、君がプログラミングしたんでしょ~」
「でも、どこか変だわ。ねこ立って!」
「はいはい、君ってひねくれてるよね~。
ねこに立たせるようプログラミングするなんて」
「でも、便利じゃない?」
「疲れるだけだよ~」
「やっぱ、立ったわ、そこから逆立ち」
「は~い」
「まぁ、ほんとにそんなことできるのね」
「ちょっと、知らないでそんなことしたの?」
「じゃあ、倒立前転よ」
ねこがごろんと前転する。上手だわ!
「上手ね」
「君、ふざけてるよね」
それにしも、ここまでできてるのになんで、
性格だけおかしいの?もっと、私に忠実になるように
設定したはずなのにな~。
「まぁ、いっか」
「よくないです~。このままだと引越し終わらないです~」
ムカッ!
「なによ、ねこのくせして。私は魔法使いよ。
魔法でやれば、ササっと終わるわよ、えい!」
「あっ!!それはやめた」
ねこがそういうと同時に、2階のほうからズドーンと音がした。
「あっ…」
「ほら~、プログラミングの魔法って案外魔力使うんだよ~」
「…ああいう仕様なのよ!」
「うそつき」
結局、引越しに丸一日かかっちゃった。