業界特性に応じたビジネスモデルに関しては、マイケル・ポーターが、
次のような代表的な業界構造を指摘し、そのビジネスモデルの基本パ
ターンを明らかにしています。


1.市場分散型業界
2.新興業界
3.成熟業界
4.衰退業界


今回は、「市場分散型業界」と「新興業界」におけるビジネスモデルの
基本セオリーを説明し、次回は「成熟業界」と「衰退業界」について
説明します。



1.市場分散型業界におけるビジネスモデル

市場分散型業界とは、多数の小・中規模企業が存在しますが、市場シ
ェアの大部分や主要技術を占有するような企業がない業界をいいます。

サービス業界や小売業界の多くはこの分類に入るでしょう。

業界が市場分散型になる理由は、参入障壁がほとんど存在せず多数の
小企業の参入を招く場合や、規模の経済がほとんど存在しないため企
業が小規模であり続ける場合などです。

こうした市場分散型業界に存在する「ビジネスモデル」は、多数の小・
中規模企業を少数の企業に集約するような戦略を実施することです。

例えば、多数乱立する小規模企業をチェーン化したり、フランチャイ
ズ方式を導入することで規模の優位が生まれたりします。

われわれの周りでは、会社勤めに疲れたサラリーマンが、よく次のよ
うなことを口にします。

「独立して、○○業でも行おうか」

しかし、その「○○」がとんでもなく競争が激しく、簡単には生きて
いけない業界なのです。

例えば、「独立して、飲食業でもするか」とよく言われます。

こんな安易な考えを聞くと、実際に必死で頑張っておられる飲食業界
の方は、
「とんでもない!」
と憤慨されるのではないでしょうか。

そもそも、「独立して○○でもしようか」といわれる業界は、参入障
壁が低く、特殊な技術も要求されないので、競争レベルが非常に高く
なります。そして、多数の小規模企業が乱立します。

そのような業界の基本的な「勝ちパターン」は、規模の拡大です。規
模の優位性によって、業務の効率性を実現したり、バイイングパワー
を獲得できたりします。

飲食業界でフランチャイズ方式が多く見られるのはこのためです。


2.新興業界におけるビジネスモデル

新興業界とは、技術革新や市場需要の変動、または新しい顧客ニー
ズの出現などにより新たに生まれた業界、またはいったん消えたが
復活した業界のことです。

新興業界におけるビジネスモデルは先行者優位です。

これは、業界が発展していくごく初期に、重要な戦略的・技術的意
思決定を下した企業が享受できるものです。

先行者優位は、一般に次の3つの要素を源泉としています。

(1)技術的リーダーシップ
ある業界発展の初期段階で、特定の技術を確立した企業は、技術的
リーダーシップをとることができます。

これにより新興業界で次の2つの競争優位性を生み出します。

まず第1に、ある特定の技術に基づく累積生産量が後発的企業より
も大きくなるため、より低い生産コストを実現できます。

ただし、その優位を持続するためには、その技術が競合他社に急速
に拡散しないようにしなければなりません。

第2の優位性としては、ある技術に早期投資をした企業が、その技
術に関して特許による保護を受け、自社のパフォーマンスを高める
場合です。

(2)戦略的に価値ある経営資源の先制確保
新興業界において、戦略的に価値ある経営資源を、その真価が知れ
わたる前に手に入れた先行企業は持続可能な競争優位を獲得できま
す。

このような経営資源を入手できた企業は、その業界において模倣に
対する強力な障壁を築き上げることができます。

先行企業によって先制確保される戦略的に価値ある経営資源の例と
しては、原材料へのアクセス、特に好ましい地理的ロケーションな
どがあります。

(3)顧客のスイッチング・コストを高める
顧客のスイッチング・コストは、顧客がその企業の製品やサービス
を利用するために何らかの投資をし、かつその投資が他社の製品や
サービスを利用する時には何の役にも立たない時に生じます。

こうした投資は顧客を特定の企業に固着させ、顧客が他企業から製
品やサービスを購入することを困難にします。

例えば、パソコンで、あるアプリケーションソフトを導入した企業
は、他のアプリケーションソフトに切り替える時は、オペレーター
の再教育やデータの再利用にコストがかかるため、スイッチング・
コストを高めることになります。

以上のように、新興業界におけるビジネスモデルは先行者優位です。

最近では、IT産業が新しく生まれ、目覚しい発展を遂げています。
わが国でば、ソフトバンクや楽天といった企業が、この戦略によっ
て急成長した企業です。


このように、業界特性によって、ある程度、構築すべきビジネスモ
デルが決まってきます。




*本文は、私は発行しているメルマガ
 「再生コンサル直伝!会社を幸福にする業績のあげ方」
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会社の重要な方針で、社員に絶対に実行してもらわなければならな
い事項に関して、意思決定を少数の経営幹部だけで行ない、その実
行だけを社員に押しつけたりすれば、
「どうせ幹部が決めたことだから、自分たちは黙ってそれを実行す
 ればいいんだ」
という意識が生まれ、社員の主体性を奪ってしまいます。


会社の重要な方針に関し、社員がそれを理解し、彼らが一体となって
本気で実行に移してもらうためには、意思決定プロセスに対する彼ら
の参加意識や意思決定内容に自らの意見が反映されているという自己
決定意識を醸成することが必要です。


では、どのようにしてすれば、社員の参加意識や自己決定意識を醸
成することができるのでしょうか?


通常の会議の運営方法では、緊張した雰囲気の中で意見を発表する
ことはかなり勇気のいることです。結局、声の大きい人の意見が通
ったり、トップの「鶴のひと声」で決定されたりします。


これでは、せっかく会議に参加しても、本当の意味での参加意識や
自己決定意識は生まれません。


実を言うと、私もこの点で非常に苦労しました。建前で、参加意識
や自己決定意識といっても、なかなか参加者はその気になってくれ
ません。


そして、いろいろ試行錯誤を重ねた結果、一つのうまいやり方に出
会うことができました。


それは、模造紙1枚とポストイットを用意することです。


ポストイットって、皆さんご存知ですよね。本などによく付箋を貼
られると思いますが、それをもう少し大きくしてカード状にしたも
のです。


まず、参加者に意見をポストイットに1枚ずつ記入させます。その
際、出来るだけ多くの意見を記入させて下さい。1人5枚以上記入
して下さいと、指示してもいいと思います。


そうしないと、彼らは必要最小限の意見しか言わないからです。


そしてそれを模造紙に貼り付けてもらうのです。


そうすると、同じような内容のポストイットが何枚か出てきます
ので、それをグルーピングしていきます。さらにグループにまと
めたものについては、そのグループのタイトルをつけて、意見を
整理します。


このようにポストイットを使用すると、参加者全員の意見が表面
に現れます。そして、模造紙を前にして議論をしていけば、自分
の意見はどこかに反映されているので、自分は議論に加わってい
るという意識が生まれます。


そして、このようなプロセスを通して意思決定された事項に関し
ては、自分たちが参加して決めたのだという自己決定意識と、自
分たちが決めたのだから必ず実行しようという、自己責任に基づ
く実行意識が生まれます。


このように、社員の意見を融合させた上で、最終的に経営側で意
見をまとめれば、このプロセスを経て出した結論に対しては、社
員の方でも、納得のいく結論として素直に受け入れてくれます。




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経営者および社員が社会人として幸福な生活を送るためには、仕事
が好きで楽しめることが必要だと思います。他人から強制されてい
るようでは、仕事は楽しめません。自分の意思で仕事をすることが
大切です。


仕事を楽しむためには、社員の「内発的動機づけ」を重視すること
が有効です。内発的に動機づけられている状態とは、活動すること
自体がその活動の目的として動機づけられている状態をいいます。


例えば、ものづくりがおもしろくて夢中になっているように、自分
の行っている活動それ自体を楽しんでいる状態です。


人間は本来、自律性あるいは自分で決定したいという生得的な欲求
があります。人は自ら決定することによって自分自身の行為の根拠
を十分に意味づけることができ、納得して活動に取り組むことがで
きます。


しかも自ら決定する機会を提供することによって創意工夫が生まれ、
問題をうまく解決することができるようになるのです。


社員が、仕事自体がおもしろいと感じられるように彼らを動機づけ
ていくことは、経営者や上司の大切な仕事だと思います。


例えば、「勝てる場」を創造する過程は、会社の経営政策上、最も
重要な意思決定過程です。


この過程に社員を参加させることは、彼らを内発的に動機づけ、目
標に対する達成感と一体感を感じてもらうためには、極めて重要で
す。


「勝てる場」の意思決定プロセスでは、次のような工夫を取り入れ
ることによって、社員を内発的に動機づけることができます。


1.「勝てる場の創造」決定過程における社員の参加

ただし、すべての社員をこの過程に参加させることは物理的に不可
能ですし、議論が混乱するだけです。

「勝てる場を創造する」という点に関して、自分の意見を明確にし
発表できる社員であれば、できる限り参加をさせることが望ましい
といえます。


2.意思決定に社員の意思が反映されている

意思決定過程に社員が参加するだけでなく、意思決定に社員の意思
が反映されていなければなりません。

もちろん、次に述べるように社員がすべてを決定するという意味で
はありません。


3.経営者の意思との融合

意思決定をすべて社員に任せていたのでは、意思決定の方向はバラ
バラになりかねません。しかも、意思決定に時間がかかったり、場
合によっては決定が困難になったりします。

特に戦略的な意思決定には、業界に対する冷静な分析や大胆な経営
判断が必要です。

重要な意思決定には、経営者の意思が反映されていなければなりま
せん。

とりわけ、今日のように情報が一瞬にして世界を駆けめぐる時代に
は、意思決定のスピードが非常に大事です。重要な意思決定をいち
いち社員に委ねているようでは他社に先を越されてしまいます。

従って、経営者は絶えず、自分なりの意見や戦略を持って、重要な
意思決定が必要な時には、瞬時に判断できるように事前に準備をし
ておかなければなりません。

しかし他方、経営者の一方的な押しつけで施策を推進しようとして
も、社員にはそれが理解ができませんし、本気で実行しようとは思
わないでしょう。

トップダウン型の経営ばかりを推し進めていたのでは、自ら判断を
下せない受身の社員ばかりを養成してしまいます。

私はこれまでに、多くの素晴らしい経営者を見てきました。ユニー
クな感性でもって、魅力的なビジネスモデルを構築し、長年業績を
向上させてこられました。

ところが、世の中の変化のスピードが速すぎて、ビジネスモデルが
変化に対応できなくなったり、経営者がある程度お年を召して、そ
の感性がお客様の感性と合わなくなってきた時に、急速にその会社
の業績が低下し、倒産の危機に瀕する会社を多く見てきました。

これらの経営者には、自分の能力が素晴らしいために、自分ひとり
の意思で会社を運営してこられたワンマン経営者が多くおられたよ
うに思います。

残念ながら、社員は命令されなければ動けないように躾けられてき
たために、会社が危機に瀕しても何も対策が打てなくなっています。

社員を内発的に動機づけ、自ら意思決定させるためには、重要な意
思決定過程においても社員を参加させ、経営者と社員の意見の融合
をはかることが必要です。

そして、社員に任せるべき時には、彼らの意見を全面的に受け入れ、
思い切って権限委譲すべきです。

自分の意見を一方的に押し通すのではなく、うまく社員の意見を経
営に融合させることが、経営者の能力の大きさであるように思いま
す。


4.自ら決めたことは自らやり切る意識の醸成

意思決定過程に参加し自らの意見が反映されていれば、社員はその
決定事項を実施しなければならないという気持ちになります。

この意識は、決めたことはやり切るという社風づくりのためには極
めて重要です。


「勝てる場」を創造する場合など、経営の意思決定に社員を参加さ
せ、彼らのモチベーションを上げるためには、上記4つのプロセス
を丁寧に実践していく事が大切です。




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