「オレンジの季節」 鯨統一郎 2007-034 | 流石奇屋~書評の間

「オレンジの季節」 鯨統一郎 2007-034

鯨統一郎氏「オレンジの季節」読了しました。
本帯には「鯨統一郎が放つ、本格家族小説!?」と書かれております。
ま、正直”!?”が怪しいと思っていたのですが、(そうきたか~、でもね~。)といった感じです。

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鯨 統一郎
オレンジの季節
出版元
角川書店
初版刊行年月
2006/07
著者/編者
鯨統一郎
総評
20点/30点満点中
採点の詳細
ストーリ性:4点 
読了感:3点 
ぐいぐい:3点 
キャラ立ち:3点 
意外性:3点 
装丁:4点

あらすじ
会社員の立花薫は、憧れの上司・戎怜華にプロポーズした。怜華が突きつけた結婚の条件は「薫が専業主夫になること」だった。泣く泣く会社を辞めた薫を待っていたのは、大家族である戎家のしきたりと膨大な量の家事だった。専業主夫として慣れない家事に忙殺される薫。やがてストレスが爆発しそうになったとき、戎家である事件が起き―。 <<Amazonより抜粋>>


それなりに出世欲もありつつ、結婚するために専業主夫を目指す、男と、その嫁いでいった先の家族の物語です。

非常にリアリティがあって、改めて(極めて個人的に)(この環境は、私は無理だな~)などと、思ったりしました。
仕事に忙殺している時は、憧れちゃったりする主夫ライフですが、これは面倒ですね。
ってくらいリアリティーのある専業主夫が描かれています。

そういった意味では、本帯の通り、とても本格的な家族小説なのですね。

で、この家族ってのが、それほど問題もない、いわゆる”上の中レベルの家族像”であり、これまた普段の家族なもので、よりリアリティがあったりします。
頑なな父親が居て、理解ある母親が居て、歓迎する娘が居て、拒否する弟が居て、寝たきりの祖母がいる。そんな構成です。
ま、物語ですから、それなりに事件が起こりますし、ご近所付き合いの難しさ(というか鬱陶しさ)とか、洗濯物はどうやって洗うとか、まったくもってマイノリティーな世界でありつつ、その中での王道を描いており、前述した、(極めて個人的に)(この環境は、私は無理だな~)などと、思ったりするのでした。

と、まぁ、ここまではいいのですけど、本帯の「!?」にあたる部分について触れたいと思います(ややネタバレ)

よくよく本の章構成を先読みするとなんとなく「!?」になったりするのですが、ラスト前に、唐突な展開が訪れます。

「これは意外(賞賛!!)」と言いたいところなのですが、正直「なんでこの展開にしちゃったのだろう??」と、”!!”より”??”が先に立ってしまいました。(なもんで、意外性は淡々と3点だったりします)
はっきりいって、何を目的にこの展開を持ってきたのでしょうか?
まさか、大きな世界観の序章だったりして

もやもやした感じの感想ですけど、是非手にとってお読みいただければと思います。
「ラスト前までのリアリティー家族小説+これは何が目的なのラスト」という一度で2度美味しい(本当か?)作品です。

楽しめればいいじゃないと開き直りたいところですが、それにしちゃ、よく分らんラストでございました。