「悪党たちは千里を走る」 貫井徳郎 2007-017
いわゆる「ドタバタ・クライムノベル」なのですが、個人的なその道の王道である「陽気なギャング・・・」があることから、どうしても比較しちゃうんですよね~。
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出版元 |
光文社 |
初版刊行年月 |
2005/09 |
著者/編者 |
貫井徳郎 |
総評 |
20点/30点満点中 |
採点の詳細 |
ストーリ性:3点 読了感:3点 ぐいぐい:4点 キャラ立ち:3点 意外性:3点 装丁:4点 |
あらすじ |
「誘拐だと? 子供をさらって親を脅迫しようって言うのか。世の中で一番卑劣な犯罪じゃないか」 真面目に生きるのが嫌になった3人が企てる「人道的かつ絶対安全な」誘拐とは? ユーモアとスピードたっぷりの誘拐ミステリ。 <<Amazonより抜粋>> |
主要登場人物は、ちょっと間抜けな詐欺師と、更に輪をかけて間の抜けた子分と、あることがきっかけで知り合うこととなった美人詐欺師と、可愛いくてかしこい(要するに生意気な)富豪の息子。
その4人を中心に、とある誘拐を取り巻く物語です。
ちなみに、視点は章立てごとに変化しますが、メインは、高杉(前述した間抜けな詐欺師)と菜摘子(前述した美人詐欺師)視点となります。
ストーリー自体は、「とある誘拐を取り巻く物語」なのですが、要所要所にミステリ要素が含まれているのは好感触でした。
物語自体を牽引している陰の主人公は、巧(しつこいのですが、前述した要するに生意気な富豪の息子)だったりするのも、バランスが良かったですね。
加えて、ドタバタとまでは行かないものの、それとなくスピード感もあり、かっちりはまるとぐいぐいといけちゃう種の作品です。
ただ、登場人物のキャラとしてはやや弱いといった印象です。
詐欺師という非日常的な役割を持っているにもかかわらず、とても「普通の感覚」を持った人ばかりで、際立った部分がないことからの印象かも知れません。
なんなら「普通の感覚」よりも『やや、やさしい』、そして『どろくさい』くらいの善良な市民だったりするのです。
でも詐欺師。
ある意味においては、このようなギャップ感がこれまたかっちりはまると良かったのですが、もうちょっとスタイリッシュな感じも期待していた分、残念な印象も受けました。
ま、これは冒頭にある伊坂作品の代表的なクライムノベルの「陽気なギャング・・・」が頭にあるからの感想なのですがね。
そうそう、クライムノベルと言えば、あのトカジ本(エロ・グロ・バイオレンス・・・)あたりも相当個人的に影響受けちゃっているんで、やっぱり全体的にキャラが弱いんですかね。
ラストも、心地よいくらい「善良市民的終焉」です。
普通の「娯楽小説」としては十分楽しめますが、伊坂・トカジあたりを読んでいる人は、それなりに気をつけてください。