「扉は閉ざされたまま」 石持浅海 2006-144
「このミステリがすごい!
2006年版」および「本格ミステリ・ベスト10
2006年版」の第2位(両方とも)を獲得した「扉は閉ざされたまま」を読了いたしました。
確かに新しいタイプの推理小説かも知れませんね。
ギリギリの心理戦ってやつですかね。
人を殺し、その現場を密室にした犯人である伏見亮輔の目線の3人称で語られていきます。
読み終わった直後の正直な感想は、(嘘つくってのは、疲れるのよね)ってことでした。
序章で、伏見の殺人現場の描写がなされ、続く、第1章「同窓会」がその殺人前、第2章「談笑」から以降は、殺人後となっています。
ようするに時系列的には「第1章」「序章」「第2章」「第3章」ってことです。
前述したように物語自体が、犯人である伏見の目線ですので、読み手は結局のところ伏見と同様に、その殺人がばれてしまわないか「ドキドキ」するわけです。
と同時に、読み手≒伏見ではありますが、知りうる情報は「どのように殺害したか(=密室を作り出したか)」だけなので、それ以外の情報(動機・密室にする必要性など)については、読み手自ら謎ときをしていくといった構造も持っています。
なので、この時点で読み手は「犯人」という立場と「探偵」という立場の両方を獲得してしまい、「お得」ってことになるわけです。
この辺りの構造が、新しいのかも知れません。
この主人公「犯人」伏見、相当の”キレモノ”という設定なのですが、一方でその謎を解く相手「探偵」も、同級生の妹であり更に”キレモノ”な優佳であり、物語後半は”キレモノ”対”キレモノ”の心理戦だったりするのです。
このあたりは正直、疲れます(もちろん良い意味で。)
言葉を変えれば、見事に引き込まれてしまったということになるのですが、この辺りが、前述した「嘘つくってのは疲れるのよね」に繋がるのです。
ラスト自体は賛否両論あると思います。
優佳と伏見の心理戦の先にあるものは何か?
最後まで読み手自身が、「本来の立場」=「第3者的立場」であったりすると、確かに納得感がなかったりします。
ただ、読み手の意識が「犯人」であり、同時に「探偵」であったならば、それなりに「犯人」「探偵」双方について、同じ感情を持つことになるあたりは、もう一つの著者の小技なのかも知れません。
う~ん意外に、この物語の構図は、テクニックを駆使されているのかも知れませんね。
確かに新しいタイプの推理小説かも知れませんね。
ギリギリの心理戦ってやつですかね。
amazonリンク |
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出版元 |
祥伝社ノンノベル |
初版刊行年月 |
2005/05 |
著者/編者 |
石持浅海 |
総評 |
23点/30点満点中 |
採点の詳細 |
ストーリ性:4点 読了感:3点 ぐいぐい:4点 キャラ立ち:5点 意外性:3点 装丁:4点 |
あらすじ |
久しぶりに開かれる大学の同窓会。成城の高級ペンションに七人の旧友が集まった。(あそこなら完璧な密室をつくることができる―)当日、伏見亮輔は客室で事故を装って後輩の新山を殺害、外部からは入室できないよう現場を閉ざした。何かの事故か?部屋の外で安否を気遣う友人たち。自殺説さえ浮上し、犯行は計画通り成功したかにみえた。しかし、参加者のひとり碓氷優佳だけは疑問を抱く。緻密な偽装工作の齟齬をひとつひとつ解いていく優佳。開かない扉を前に、ふたりの息詰まる頭脳戦が始まった…。 <<Amazonより抜粋>> |
人を殺し、その現場を密室にした犯人である伏見亮輔の目線の3人称で語られていきます。
読み終わった直後の正直な感想は、(嘘つくってのは、疲れるのよね)ってことでした。
序章で、伏見の殺人現場の描写がなされ、続く、第1章「同窓会」がその殺人前、第2章「談笑」から以降は、殺人後となっています。
ようするに時系列的には「第1章」「序章」「第2章」「第3章」ってことです。
前述したように物語自体が、犯人である伏見の目線ですので、読み手は結局のところ伏見と同様に、その殺人がばれてしまわないか「ドキドキ」するわけです。
と同時に、読み手≒伏見ではありますが、知りうる情報は「どのように殺害したか(=密室を作り出したか)」だけなので、それ以外の情報(動機・密室にする必要性など)については、読み手自ら謎ときをしていくといった構造も持っています。
なので、この時点で読み手は「犯人」という立場と「探偵」という立場の両方を獲得してしまい、「お得」ってことになるわけです。
この辺りの構造が、新しいのかも知れません。
この主人公「犯人」伏見、相当の”キレモノ”という設定なのですが、一方でその謎を解く相手「探偵」も、同級生の妹であり更に”キレモノ”な優佳であり、物語後半は”キレモノ”対”キレモノ”の心理戦だったりするのです。
このあたりは正直、疲れます(もちろん良い意味で。)
言葉を変えれば、見事に引き込まれてしまったということになるのですが、この辺りが、前述した「嘘つくってのは疲れるのよね」に繋がるのです。
ラスト自体は賛否両論あると思います。
優佳と伏見の心理戦の先にあるものは何か?
最後まで読み手自身が、「本来の立場」=「第3者的立場」であったりすると、確かに納得感がなかったりします。
ただ、読み手の意識が「犯人」であり、同時に「探偵」であったならば、それなりに「犯人」「探偵」双方について、同じ感情を持つことになるあたりは、もう一つの著者の小技なのかも知れません。
う~ん意外に、この物語の構図は、テクニックを駆使されているのかも知れませんね。