「神狩り」 山田正紀 2006-116
1976年に刊行され、一部の方々には「SF小説の金字塔」と呼ばれてる「神狩り」を読了しました。
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出版元 |
早川書房 |
初版刊行年月 |
1976/11 |
著者/編者 |
山田正紀 |
総評 |
20点/30点満点中 |
採点の詳細 |
ストーリ性:4点 読了感:3点 ぐいぐい:4点 キャラ立ち:3点 意外性:3点 装丁:3点 |
あらすじ |
若き天才情報工学者、島津圭助は、神戸市で調査中の遺跡、花崗岩石室内壁に、ある『文字』を見せられる。十三重に入り組んだ関係代名詞と、二つの論理記号のみの文字。論理では解くことのできないその世界の言葉を執拗に追うある組織は、島津の卓越した頭脳に、この文字を通じて『神』の実在を証明することを強要する。 ―語りえぬことについては、沈黙しなくてはならない。ヴィトゲンシュタインの哲学に反く行いに幕を開ける、SF小説の金字塔。<<紀伊国屋Bookwebより抜粋>> |
あらすじの通り展開なのです。
加えて、いわゆる神の言葉とされる「古代文字」を巡って、組織やら個人やら霊能力者やらが、私利私欲なりなんなりを理由に、その真実を追究(もしくは阻害)しようとするといった内容です。
物語は主人公である島津圭介の一人称で語られていきます。
ストーリテラーである島津の語り口は、往年のハードボイルド的要素があって読みやすく、ストーリそのものもSF的要素を含んだハードボイルドっぽくあり、この手の小説の中では飽きさせません。
また、本書のキーワード自体が、論理では解くことのできない複雑な構成を持つ「古代文字」であり、その行き着く先に<神>という存在を用意していることで、高尚なニュアンスを受けてしまいます。
ま、「読みやすくて、ややアカデミック」という点で評価してしまうところですが、一方で結論は、極めて歯がゆい感じがしました。
<神>との会話(もしくは対決)といった、とても大きなテーマについては、結局のところ、うまくまとめられておりません。
せっかくなので、勝手に解釈すると、それも<神>の仕業といったメタ的結論も在りうるのですが、やや苦しい感じです。
実は本書には続編があるらしく、それについては追々読んでみたいなと思いました。
同じ結論だったらちょっと悲しいですけどね・・・
P・S
ちなみに文庫版には、「不在の私が、不在の君に」という著者あとがきがあり、2002年の著者が、1976年当初の著者に向けて語っています。
これはこれでとても趣き深い文章でした。