「ミステリアス学園」 鯨統一郎 | 流石奇屋~書評の間

「ミステリアス学園」 鯨統一郎



著者: 鯨 統一郎
タイトル: ミステリアス学園

いわゆる「作中作」「メタもの」の部類でしょうか?
文中にこの小説の的確な表現があったので引用します。それは「マトリョーシカ」です。

最終話を含めて全7章からなる構成ですが、6話までの話が、入れ子構造となっています。すなわち2話が1話を包含し、3話が2話までを包含しています。繰り返していくと6話までが、前回の話をすべて包含しています。
そして最終話で語られる、本当の真実(あえて「本当の」と修飾しています)。
最初とラストの一文ずつでこの物語全体を包括しているのは、秀逸だと思います。

ミステリアス学園のミステリ研究会のメンバーが巻き込まれる数々の事件。それらを解決するとたびに、何かが壊れていく。

個人的にはこの手の話は好きだったりしますが、同一のパターンの繰り返しに、やや「胸焼け」がしてきました。このような小説について驚きを持って接することができないということ自体がもしかしたら不幸なのかもしれないと思わせる作品でした。

また、作中で大いに語られる「ミステリ講義」は、なかなかためになるものでした。「本格」「新・本格」「社会派」「ハードボイルド」などのカテゴリの説明。「密室」「アリバイ」など、あまたのミステリの定義や、果ては、「キャラ萌え」の説明など。実際の著作・著者を文中に紹介しつつ、それらの評論をしている点については、ふむふむと思うことも多かったです。