もう一つのマジすか学園 第3章8話 | 指オタクオリティー

もう一つのマジすか学園 第3章8話


シブヤは不思議な気持ちだった。

ダンスとミソを連れ自分の卒業したマジ女の同級生であったゲキカラに

ヤバ女の制服を着て会いに行くのが。

またもう一つ不思議に思ったのがミソである。

なぜ出所してきてゲキカラとタイマンなのか?

ミソがゲキカラを刺した時は人に命令された訳じゃなく自分の判断だった。

確かに戦争相手だったが普通に考えたら高校生の喧嘩で刺すなんて行為は有り得ない。

幹部室で言い争った感じから暴力に快楽を求める人種だと思っていた。

こういう人種は自分が傷つくのを嫌い、暴力を振るう相手を徹底的に痛めつけるのが

好きなはずなのだが今回のようにタイマンだと自分が思うように暴力が振れないはずだ。

シブヤはこの点が引っ掛かっていた。



「おいミソ。なんでゲキカラとタイマン張りたいんだ?」

前をダンスと楽しそうに歩くミソを呼び止めた。

ミソは振り向いて不思議そうな顔をしたシブヤに

「私が入っていた鑑別所でゲキカラさんて伝説の人扱いだったんですよ。マジ女での武勇伝も

そうだけど街のチンピラ狩りとか・・・でも私の前で簡単に倒れちゃったので本当なのかな?~

って思ったんです。あっ!それと刺しちゃったのはシブヤさんにもダンスさんにも怒られたので

悪い事しちゃったかな~と思って、それに関しては謝ろうと思っています」

ミソはまるで友達と学校帰りにドコに寄って何を食べると話すかのような気軽さで答えた。

それを聞いたシブヤは刺した行為自体には何とも思っていない、それどころかミソにとっては

ナイフを使うと言う事は普通の人間がパンチやケリを使う感覚の延長線上だと理解した。

「お前まさか今日は持ってないよな?」

シブヤは確認のためにナイフを所持していないかを聞いた。

「ナイフですか?持ってませんよ。簡単に終わっちゃったらツマラないですから」

満面の笑みで答えるミソにシブヤは敗北を予感した。

いくら何でもナメ過ぎたがゲキカラ自身と対峙した事があって、これからタイマンを

張るのにこんな笑顔でいられるものなのか・・・

コイツはバカか大物かどっちなんだろう?と難しい顔をしてシブヤは歩き始めた。



待ち合わせ場所につくとゲキカラとおたべが立っていた。

「待たせたか?」シブヤが口を開いた。

「いや、待ってへんで」おたべが答えた。

ゲキカラはスデに臨戦態勢なのか爪を噛んでコチラを見ていた。

シブヤは振り返りミソに前に出るように促した。

「ゲキカラさん、その節は申し訳ございませんでした。それと今日は私の我侭にお付き合い

頂きありがとうございます」と言ってチョコンと頭を下げた。

「今日はヤバ女・マジ女関係無く2人のタイマンや。2人がどうなろうと私等に関係あらへん。

それでええな?」おたべがミソとシブヤに向かって言い、2人は頷いた。

それを見たゲキカラは一歩前に出てシブヤは後に下がりながら

ミソの肩を軽くポンと叩いたところでタイマンが始まった。

ミソが声を発しながら前に進みゲキカラに一撃を入れた。

いや入れさせたと言って良いだろう。

「こんなもんなのか?」

ゲキカラはミソのパンチを貰ったが平然と答えた。

「ふざんけんな!」

ミソが再びパンチを入れようと拳を振り上げたがゲキカラにガードされ逆に腹にパンチを貰った。

そこからは一方的だった。

ゲキカラの拳や蹴りが雨の様にミソの体に降りそそぐ。

もうタイマンでもなくなっていた。



ふとゲキカラが動きを止め「早く出しなよ」と目の前で倒れているミソに向かって言った。

おたべは何の事か分からなかったようだがシブヤはスグに気がついた。

「ダメだ!出したら中止だ」シブヤは怒鳴った。

それで気付いたのかおたべも「そんなんは喧嘩やない。それやったら中止やで」と言った。

ゲキカラは2人を見ずミソだけを見つめて

「コイツは病気なんだよ。私と一緒だ。私は優子さんに治してもらった。だから私がコイツを治す。

私しか治せないんだよ。大丈夫だから2人は黙っててくれ」静かに答えた。

「誰が病気だって?お前と一緒にすんなよ」

肩で息を切らせながら顔中、血だらけのミソがナイフを片手に持って立ち上がった。

おたべもシブヤも迷っていた。

今この状態のミソならスグにでも取り押さえる事は可能だがゲキカラの言う『治す』とは

ミソのためだと理解している。それは分かっているのだがリスクが高過ぎる。

2人は悩み動けないでいた。しかしシブヤはあのゲキカラが後輩それも他校の生徒を気遣い、

何より優子の名前を出して『治す』と言ったゲキカラを信じたかったのも動けない

理由の一つでもあった。

しかしミソはそんな外野の思惑をひっくり返すようにゲキカラに向かって口を開いた。

「もう面倒臭せぇ~これで終わりにしてやるよ」

「あんたは勘違いしてるよ。ナイフを出せばみんながビビると思っている」

「あぁ?てめぇだってビビってんだろうが」

「ビビらないよ。今のあんたにビビる奴はいない。みんなナイフにビビるだけ」

「はぁ?一緒だろ」

「違うよ。分からせてあげるから掛かってきな」

ミソはナイフをゲキカラに向けて突き出した。

それを全て避けるゲキカラにシブヤは優子の姿を見た。

相手がどんなに理不尽な攻撃をしてきても全て自分の拳で堂々と受け止めていた優子の姿を



そのうちミソの持っていたナイフも叩き落とされゲキカラが「ねぇ怒ってる?」と

聞き慣れた例のセリフを言いながら格の違いを見せつけボコボコにしていた。

最初こそイキがっていたミソもゲキカラが豹変して、その狂気に触れ圧倒的な戦闘力の

違いを味あわされて生まれて初めて人間に恐怖した。

それでもゲキカラは攻撃を止めずにミソは倒れては起され殴られを繰り返されていた。

(もう勘弁してください)と

心の中で叫び、小さくうずくまったミソが再び起された時に頬を触られた。

殴られると思っていたミソが目を開けるとゲキカラが

「殴られると痛いだろう。怖いだろう?それが人間なんだよ」

先程とはうって変わって優しい表情で語りかけてきた。

「ナイフなんかに頼るな。あれは道具なんだよ。分かるか?」

ミソは今になってゲキカラが言った『ナイフだけにビビる』の意味を理解した。

自分は今まで色々な奴と喧嘩してきた。

しかしナイフを出すと誰もがひれ伏した。

それを自分の力だと勘違いしていた事に気付いた。

いやゲキカラの圧倒的暴力で気付かされたと言って良いだろう。

「道具は弱い奴が持ちたがるんだ。お前は弱くないだろ?もう持つな約束出来るか」

ミソは黙って頷き、その場でへたれ込んでしまった。

それを見たシブヤはヤバ女の代表として、おたべにお礼を言い、

ゲキカラの目を見て拳を突き出した。

ゲキカラも笑顔でシブヤの拳にチョコんと自分の拳をぶつけた。

つづく

ドラマ『マジすか2』での役で話を進めていきますが各個人(キャラ)の呼び名が

ひらがなかカタカナ表記でしか違わないのです。

これだとややこしいので通常時(AKB48)でのあだ名に変更しています。

詳しくキャラブックを参照してください。キャラブックはコチラ

もう一つのマジすか学園 第3章9話

マジすか学園スピンオフ まとめ