AKB49~恋愛禁止条例~スピンオフ『偉大で意外な先輩』
「みのり、戸賀崎さんが呼んでたよ~」
レッスンも終わり帰りの身支度を整えていると同期の水野春子に声を掛けられた。
「あんた何、驚いてるの?」
背後から声を掛けられると女装している事がバレたのではといつもヒヤヒヤしている。
そう俺は12期研究生吉永寛子と同じ高校に通う浦山実、吉永の夢をサポートするために
何故か女装してAKB48の12期生オーディションに合格してしまい浦川みのりとして今ここにる。
「分かった。行って来る。ありがとう」
そう言って事務所に顔を出してみた。
「戸賀崎さん、なんすか?」
目の前にいる体重100kgを越える男性がこの秋葉原の劇場支配人戸賀崎智信さんだ。
私達のお目付け役だが情にもろく熱い人だ。
「おお、浦川か。お前明日のA公演の小嶋のアンダーやってくれ」
「はい。分かりました。でも大丈夫ですか?」
「何が?」
「あの、その・・・」
「何だ?ハッキリ言え」
「いや最近って言うか、その~色々問題あったから大丈夫かなと思いまして」
「余計な事は考えなくていい。明日の公演を成功させる事だけを考えろ。分かったな」
「はい。分かりました」
そう言って事務所から出ると吉永が待っていた。
少し浮かない顔の俺を見て「みのり、どうしたの?何かあった?」と聞いてきた。
「ううん。別に何にも無いよ。明日、小嶋さんアンダーだって」
「みのりはスゴイよね~色々なチームのアンダーやってるよね。岡部さんと2人で12期生を引っ張ってくれる」
「あっうん。ありがとう」
そんな会話をしていると「最近の先輩達のスキャンダルが心配なんでしょう。みのりは」と
同期の田子千明も会話に入ってきた。
「実はそうなんだ。何にも無いって信じているけど劇場の雰囲気が少し心配なんだ」
前にも先輩のちょっとしたスキャンダルで劇場の空気が悪かったのを
経験したことがあった俺は明日の劇場が少し心配だった。
「大丈夫だよ。他の先輩達もいるし」
吉永は笑顔で励ましてくれた。
サポートするつもりでAKBに入ったのにこれでは逆になってしまう。
「分かった。明日はみんな(12期生)の分まで頑張るよ」
「うん。その調子」と
俺と吉永はハイタッチした。
「おはようございます」
また1番乗りの高橋みなみさんが念入りにストレッチをしていた。
「おはよう、みのりっち。いつも早いね」
「たかみな先輩の方が早いじゃないですか」とストレッチしながら答えた。
たかみな先輩は最近、俺に冷たい・・・ほとんど話してくれないし目も合わせてくれない。
これを機会に聞いてみようかと思った矢先に
「おはよ~です」と他のメンバーも入ってきた。
「みのりっち、今日のMCだけどさー好き勝手にしゃべって良いよ」と指原先輩が話しかけてきた。
「好き勝手ですか?何を話せば良いのか・・・」
「大丈夫だよ。何でも拾ってあげるから」
「指原、テキトーなことばっか言って大丈夫?」とたかみな先輩が俺の心を代弁してくれた。
「大丈夫。大丈~V」このヘラヘラした先輩は本当に大丈夫なんだろうか?
やはり劇場の雰囲気の事を考えるとMCは不安だった。
数日前、12期研究生で話をしていると前田敦子さんが現れた。
ちょうど夢の話をしていた時に「みんな(12期生)はAKBでどうなりたいの?」と聞いてきた。
みんなが答えに悩んでいると1人が「指原さんのポジションが良いです」と答えた。
みんなはそれに同調するかのように頷いた。
すると前田先輩が「指原のポジション?なんで」と聞いてきた。
「2流のトップって感じが良いです」と誰かが答えた。またみんな同調した。
「2流?何言ってるの指原は1流だよ」と
前田先輩は笑いながら部屋から出て行ったけど
本当にこのヘラヘラしたテキトーな人が1流なんてとても思えなかった。
いくら俺が不安に思っていても劇場の幕は上がる。
ミニスカートの妖精を歌った前座ガールズの先輩達が顔を真っ青にして帰ってきた。
やはり劇場の雰囲気は相当悪そうだ。
そうこうしてるうちにovertureから目撃者・前人未踏・いびつな真珠・憧れのポップスターまで終わってしまった。
いよいよMCだけど劇場の雰囲気が悪いのは歌っている時から分かっていた。
「はい。あなたもあなたも指原クオリティー覚醒。大分県出身指原莉乃で~す」
反応はイマイチだった。
ところが指原先輩が話し始めると劇場のお客さんが徐々に笑顔になっていた。
それどころか大爆笑の渦に包まれていた。
数日前に前田先輩の言った1流の意味がようやく俺にも分かってきた。
普段ヘラヘラしていて何にでもテキトーな感じでスグに土下座する姿しか見てない
けど劇場で、MCで話す姿は間違いなく1流だった。
この日の公演は結局、指原先輩のMCから大盛り上がりを見せ大盛況で幕を閉じた。
楽屋に戻るとき
「だから指原は1流って言ったでしょ」
と前田先輩が俺に声を掛けてきた。
「選抜の力を見せつけられました。これから頑張ります」と
しか答えようが無い俺の横を無言で通り過ぎ前田先輩は帰ってしまった。
見に来るなら出ろよと思ったが今の俺はあまりにも無力だった。
スイマセン。前にネタにしたものを書いてみました。クオリティーに関しては本当に申し訳
ないです^^; AKB49で漫画化してくれれば嬉しいですがさっしーをメインには使ってくれないと
思ったので勝手にスピンオフ(と、言って良いのかですが)しました(笑)