172  「グラン・トリノ」 1 (鑑賞前に読むバージョン) あの映画の完成度に向かって・・ | ササポンのブログ

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I may not be the most pleasant person to be around but 
(おれは付き合って決して愉快な男じゃない。だが)
I got the best woman who was ever on this planet to marry me.
(おれはこの地球で生まれた最高の女と結婚した。)

切なくて
悲しくて

そして
優しい

イーストウッドの映画で
こんな感情がよもや
わき出てくるとは思わなかった。

まずこの映画の大半は
笑いです。

とにかく
クスクス、クスクス笑わせてくれます。

特に
イーストウッドが気に入らないことがあると
「ぐうううううう」とブルドックのように
唸る姿は
もう笑えて笑えてたまりません。

この頑固者のゴリゴリの人種差別のじじいが
たまらなく、かわいいのだ。
それは
イーストウッドが
自分のキャラを
ある種
客観視し
パロディぎりぎりのところまで描いている結果
生まれてくる笑いである。


評価も
興行も散々だったが
僕は意外に好きだった
「シティヒート」という映画があります。
当時、人気絶頂だった
イーストウッドとバートレイノルズが
共演して話題になった映画。

これで
イーストウッドは
自分の無骨で頑固なキャラのパロディを演じていたが
この映画では、
それによく似た、視線で
頑固者を演じている。

恰好はつけないけど
必要以上に
みじめにもならない。

最低限の感情表現と
そして
なによりも圧倒的な存在感。

正直
この圧倒的な存在感すら
ユーモアーにしているところが
この映画の凄味です。

イーストウッドが
いきがっている黒人のギャングたち前に立って
なにもしないのに
黒人を圧倒するシーンがあるが
観ていると
まるで
イーストウッドの人間としての凄味に
新人の俳優たちが
びびっていようにも見えて
やはりクスッと笑ってしまうのだ。
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僕は
以前に
「許されざる者」とか「荒野のストレンジャー」で
イーストウッド映画の変なところ
どこか
魅力的な破綻のことを書いた。

それが
「ミスティックリバー」において
まるっきりなくなってしまった・・。
まるでイーストウッドらしくない
完璧な
一分の隙もない
演出を観て
驚いた。

これがイーストウッド映画なのか・・と。

それが自分の出演している「ミリオンダラーベイビー」にまで
継続されているのを観て
どうしてしまったんだろう・・と。

そして
僕は
この映画を観て思った。

イーストウッドは
どんどん自分の映画を研ぎ澄ましているんだ・・と。

極限の完成度
余計なものがなにもない美に向かっているんだ。

イーストウッドが自ら演じたことのある映画監督
ジョン・ヒューストンが遺作の「デッド」において到達した
あの完成度に向かっているんだ・・・と。
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