167 「交渉人」  映画職人たちの手によるバランス感覚抜群の娯楽映画 | ササポンのブログ

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「交渉人」
・・・味平・・・。




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あるパーティで
ケヴィン・スペイシーに会った
サミュエル・L・ジャクソンは、
聞いた。

「君は出るつもりか?」
「ああ、出るつもりだよ」
「そうか、じゃ僕も出よう」

と、いうわけで
この作品で共演することとなったふたり。

あの意味、
この瞬間に、この映画の成功は保障された。

とにかく
理想的なキャストであった。
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シカゴ警察のトップ人質交渉人ローマン(サミュエル・L・ジャクソン)は、
相棒のネイサン(ポール・ギルフォイル)から
警察の年金基金が何者かに盗まれ、
内務捜査局の人間が関わっているらしいと聞かされる。

呼び出された約束の場所にローマンが行くと、ネイサンは殺されていた。

殺人と横領の濡れ衣を着せられた彼は、
愛する妻カレン(レジーナ・テイラー)との幸せと生きる権利を取り戻すため最後の手段に出る。


連邦政府ビルの20階にある内務局に赴いたローマンは、
居合わせたタレ込み屋のルーデイ(ポール・ジャマッティ)や
秘書のマギー(シオバーン・ファロン)、
フロスト警視(J・T・ウォルシュ)と共にニーバウムを人質にして立て籠もる。
警察内部にも裏切り者がいるため、

彼は西地区のトップ交渉人セイビアン(ケヴィン・スペイシー)を指名するという大博打に出た。


トップの交渉人が
他の地区のトップの交渉人を指定して
自分の仲間内の裏切り者をあぶりだす。

抜群のアイディアである。

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お互いの手を知り尽くしたプロ同志、
その攻防は
前半でたっぷりと見せる。

シナリオ的なテクニックを言えば
これによって
人質との交渉というのが、
どういうものか
交渉のプロの仕事が説明できる。

さらに言えば
交渉人のプロが
人質を取るというアイディアを生かすのには
相手も、
それと同等の
プロの交渉人でなければ
サスペンスは生まれない。

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さらに
この脚本が優れている点は
交渉の相手として選ばれたセイビアンが
最後の最後、
ぎりぎり真実がわかるまで
ローマンの味方ではないというところだ。

変だと感じながらも、
あくまでも
人質犯として接触している点だ。

この辺のバランスは
本当に
とても難しい。

同情的であってはならないし、
かといって
敵意むき出しではいけない。

ケヴィン・スペイシーという役者は
バランス感覚の化け物です。

この人の演技で
イライラしたことはない。

これは
別にいつも冷静ということではなく、
イライラした役を彼がやると
きっちり安心して
イライラさせてくれる。

自分の存在を消すこともできるし
前に押し出すこともできる。
その辺のバランス感覚が
このセイビアンという役にぴったりなのだ。

サミュエル・L・ジャクソンが
その強い個性で
いるだけで我が前に出てしまう。
彼の場合は
とにかく前に出てしまう。

だから
相手役がバランスを取って
その演技を受けなくてはならない。

そういう役目をやらせたら
ケヴィンスペイシーは世界一である。
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昔の日本映画には
この手の
映画によってバランスを取れる
俳優がゾロゾロいた。
しかし現在では
堺雅人がこの役目をひとりで引き受けている。

ケヴィンと堺雅人の
共通している点は
豊富な舞台経験である。

舞台というのは
このバランスが命である。
この場面では
自分はどこに立って
どういう声でセリフをしゃべりながら
どういう動きをすればいいのか?

それを
一瞬のうちに判断しなくてはならない。
その反射神経がなくては舞台の役者は務まらない。

もちろん
ふたりとも我を前に出せといわれれば
ガンガンだせることは
みんな承知だろう。
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さらにこの映画を傑作としているのが
監督であるF・ゲイリー・グレイの見事なまでの職人演出である。

とにかく
ガチャガチャとありもしない個性を
CGに頼ってこちらに押し付ける監督がバッコする昨今
シナリオをきっちりと読み、
それを見事にスクリーンに映し撮ることに徹した職人監督。

久しぶりにアメリカ映画らしい
娯楽に徹した
いい監督であります。

しかし
難を言えばこの脚本家コンビ、
TVドラマの「キルポイント」もそうなのだが
最初のアイディアは抜群なんだが
詰めが甘い
ラストの展開が凡庸なのだ。

だが、まあ、
それを除けば
この映画は、
見事な職人たちの手による
バランス感覚抜群の
娯楽映画であります。

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