157 「炎のランナー」 品と知性と才能に対する自信の度合が、普通じゃない映画 | ササポンのブログ

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最近、めっきり
映画評を書く頻度が低くなってしまったが
別にやる気がなくなったわけでもなく
ただ
忙しいだけです。

今回、
取りあげる映画とは関係ないけど
最近少し
思っていることなんだけど
僕は
たとえ
自分の中で
この映画評を書くことに対する
モチベーションが
下がったとしても
書き続けると思います。

なぜなら
一端、やめてしまうと
再び
書き出すのがどれだけ困難かということが
わかっているからです。

もし
これを読んでいるひとで
家庭の事情とか
身体的理由がないのに
なんとなく
そろそろ書くのが辛くなったので
ブログ、しばらく休もうかな・・と思っている人がいたら
とにかく
休むのだけは、やめたほうがいい。
なんでもいいから
一言だけでもいいから
続けたほうがいい・・と
思います。

理由は
再びはじめるには
物凄いパワーがいるからです。

続けるのに要する
何百倍の精神的なパワーがいりますから。

と、いうことで、この辺で
本題に
「炎のランナー」
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恐ろしい映画です。
こんな恐ろしい映画はありません。

よくもまあ、こんな映画
撮れるなあ・・と。
その監督の根性というか自信が恐ろしいです。

もし僕がシナリオライターとして
この映画のストーリーを渡されたとします。

ふたりの短距離ランナーの
オリンピックを頂点とした
物語。

こんなん
5枚で終わりです。

実際
この映画のシナリオ、そのまま採録したら
5枚ぐらいで終わりだと思います。

たとえば
ファーストシーン。

海岸を、ランナーたちが走っている。


文章にしたら、これだけですよ。

これだけなのになんであんなに綺麗なんですか?
なんで観ている人間が
映画を観ているという喜びに震えるんですか?

なんですか
あの音楽は
全米ナンバー1ですよ。
インストで。

恐ろしいです。
こんな画面を作れると思っているこの監督に
恐怖します。


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走ることによって
栄光を勝ち取り
真のイギリス人になろうとする
ユダヤ人のハロルド・エイブラハムス。

このハロルド
最初は
とても傲慢で自信家で
いやな男に見えます。

ただ
それが内面的な人種的なコンプレックスに
根ざしたものだということがわかると
俄然
魅力に満ちていきます。
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神のために走るスコットランド人宣教師エリック・リデル。

ハロルドに対して
描かれる
エリック。

これはもう最初から
人間的な魅力に溢れ
ヒーロー然として見えます。

神を心に秘めた人間というのが
なにゆえに
これほどまでに強いのか
ある種の
皮肉にも観えます。



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このふたりの最初で、最後の対決。

僕は、このシークエンスを見たとき
あまりのことに
唖然としました。

あのレースシーンの
あっさりとした描き方。

アッという間にはじまり
アッという間に終わる。

はい、ハロルド、負け。

そりゃ、短距離だから
アッという間に終わるのは当たり前だけど
それをそのまんまやる。
恐ろしさ・・。

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負けたハロルドが座っている客席のロング。

パタンバタンという音。
椅子を元に戻している掃除夫。

そして
負けた瞬間を何度も何度も思い出しているハロルド。

何度も何度も・・。

恋人が来て
負けたぐらいで子供みたいになにクヨクヨしてるのよ・・と

しかし
ハロルドにとって
勝つことがすべてであり
負けは終り。
負けは、
死の宣告だった。

「負けるぐらいなら走らない。
勝つために走るんだ」

そして
ハロルドにはわかっていた。
いまのままでは
あの男、エリックには勝てない。
いまのままでは・・・。


その思いは
なかなか伝わるもんじゃない。

そこに
名コーチのサム・ムサビーニが来る。

「あと3歩、縮めることができる」

サムの部屋で
名ランナーの写真を観る。

そこで
サムはハロルドの問題点を解く、
ストライドと
精神。
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神を心に持ったあの男に勝つには
それにまさる
強い精神と
それを培うための
高い技術が必要・・。


そこから
ハロルドとサム
そして
エリックのトレーニングシーンが描かれる。

そのシーンの美しさといったらもう痺れるしかない。
音楽と映像が
ここまで力を持つものなのか・・。

それも
ただのトレーニングシーンだ。
そりゃ「ロッキー」みたいに
そこまでに、
観客のモチベーションを上げるだけ上げていれば
走っているだけでも
躍動感は出せる。

でも、
それほど
盛り上げてもいない
むしろ
淡々とした展開である。

それなのに
観ているものを陶酔に誘う、あのトレーニングシーン。
やはり恐怖するしかない。

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さらに
さらにさらに
恐ろしいことに
この後に
このふたりの対決はないのだ!!

そんなの普通のハリウッドのプロデューサーなら
絶対に許さない。

たとえ
実在の二人のランナーを描いた映画であっても
絶対に
事実を曲げるはずである。
普通のプロデューサーなら・・。

ところが
この映画のプロデューサーはデヴィッド・パットナム。
ジェリー・ブラッカイマー レベルの普通の方々とは
品と知性と志が違う。

とにかく
この後も
このふたりのランナーのオリンピックまでの日々が
綴られていく。

そこにも
名シーンは続々とあるが、それを書きだすと
また長いし、
たとえ
ここで書いたとしても
それを観て、
わかる人とわからない人がはっきりと別れる映画であることは確かだ。

ひとつだけ好きなシーンを上げると
やはり
ホテルの一室から
イギリスの国歌を聞いて
ハロルドの勝利を知ったサムが
喜びのあまり帽子をぶちぬくシーンだ。
あの時のサム役のイアン・ホルムの「あっ、しまった」という表情と
静かに感激に泣くところ。
もう名人です、見事です・・としか言いようがない。






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