138 「シザーハンズ」 ティムバートン初期の集大成。閉じてしまった美しき奇形の物語 | ササポンのブログ

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ティムバートンと
ジョニーデップ

恐らく映画史に残るであろう
名コンビの出会いの映画であり、
「バットマン」の大成功により
自分の撮りたい映画を撮れるようになったバートンの念願の企画。

映画会社の意志が
まつたく入らない脚本を作ったと
バートンは言い切っている。
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もうまるっきり初期のバートンの世界が
すべて網羅された
総集編のような映画です。

それを象徴するかのように
この映画の後の
バートンは、
多少、もたつき気味というか
もう一段高い自分の表現を模索しているように感じた。

そういう意味では
本当に
これは
完璧なるバートン映画。

キーワードは、
閉じる。


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まずこの両手が鋏、それも
かなり鋭利な巨大な鋏というのが
もう完全に閉じている。

その姿は、
完全に
他人とのコミュニケーションを拒絶して
自分の中に、閉じってしまっている。

たとえ
誰かを愛そうと
誰かから愛されようと

その姿は
祝福の触れあいを拒絶している。

ウィノナライダーに抱きつかれて
その身体を抱こうとする。
「アイ・キャント」

このつぶやきこそが
この映画のテーマであり、
初期のバートン映画のすべてです。


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その特異な才能によって
街に溶け込もうとするが
所詮は
奇形です。

それは結果的には
迫害されて
逃げるだけ。

元々
この頃のバートン映画には
ひとと努力して
コミュニケーションを取ろう、
頑張ろうというやつは
ひとりもいない。

ただ、ただ、もう
自分の殻に閉じこもり
自分なりの閉じた世界を
作り上げようとしているだけ、
他の人間は、
それを壊そうとしているだけの存在だった。

「バットマン」の二作に至っては
奇形同志の争いである。

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唯一、
心を開いてくれそうだったウィノナライダーを
自分の屋敷に閉じ込める・・という
愛ある暴挙すらできず
ただもう
自分の鋏で
氷を削り続けるだけ。

その姿は
自分の世界を始終大切に閉じ込めておいて
世間をすべて排除する
僕のような
オタク気味の男の象徴である。

それが
気持ち悪がられず
世界の女性の涙を誘う作品になったのは
ジョニーデップの美しさ・・ゆえである。

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美しいというのが
一種の奇形であると気がつく人間は
少ない。

美しいというのは
他とは違う特徴を持っているがゆえに
美しいのであって、
普通であっては
美しくはない。

世間に受け入れられる奇形
それは
美しさ・・であることを
バートンは
ジョニーデップを起用することによって
学んだのだと思う。


バートンが
デップを起用した理由は
その眼だという。

完全なる無垢を表現できる眼。

無表情なこの美しき奇形にとって
感情を表現できるのは
眼だけなのだ。

お互い
眼と眼を合わせていれば
それですべてを理解しあえれば

それぞれの姿など
関係ないのだ。

そして
この物語自体も
完全に閉じている。

「何故、雪は降るの?」
その問いかけに答えるだけの
閉じてしまった物語。

この映画と「チャーリーとチョコレート工場」を見比べれば
バートンの世界観の変遷がよくわかる。


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