96 「死霊のはらわた」 8ミリ、16ミリ、35ミリ、そしてヒットメイカー!! | ササポンのブログ

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最初、この映画を、
この手の映画好きの人々、つまり僕やまわりの悪友たちは
どういう状態で鑑賞したのか?
輸入ビデオか海賊版である。
海賊版には、
誰かが趣味でつけた字幕が入っていた。
つまり映画泥棒である。
しかし
そんなものでしかこの映画の字幕つきは
観れなかった。

当時
この映画のビデオを発売しようとした会社など
どこにもなかった。

この映画だけではない。
「ビデオドローム」「デッドゾーン」「エルム街の悪夢」など
この手のマニアなホラーは、
劇場公開なんてとんでもない
ビデオでも発売する気がなかったのだ。

しばらく後にやってきた
ビデオの爆発的な普及と
それにともなうソフト不足により
異常な数のソフトがリリースされ、
やっとこの手の映画が発売されたのだ。

なにが言いたいかと言えば
僕らは
いつも時代の先をいっていたのだ、と言いたいのだ。ふん。



この写真を観てほしい。
写っているのは若き日のサムライミである。
そして
後ろの映画館でかかっている映画。
「BOOK OF THE DEAD」

これこそが
この映画「死霊のはらわた」である。
元々、この映画はサムライミたちが8ミリで撮った映画だ。
8ミリといっても、ビデオじゃないよ、
フィルムだよ。
それを
地元の人間に見せて出資者を募り
お金を集めて16ミリとして撮影した。
その映画のタイトルが
「BOOK OF THE DEAD」。
これを35ミリにブローアップしたのが
「THE EVIL DEAD」。




いまやハリウッドでも
トップクラスのマネーメイキング・ディレクターのサムライミも
この当時は
ただの田舎の困った自主映画野郎だったのだ。

あの異常なスピードで主人公たちを追いかけ回す
悪霊主観のカメラは
16ミリカメラの左右に棒をつけて、
ふたりで持って
走るという極めて原始的だが
効果的な手法で撮影していた。

この方法、
当時から友人であったコーエン兄弟も気にいって、
初期の「ブラッドシンプル」や「赤ちゃん泥棒」でも使っている。

あの恐ろしい場面の撮影現場は
棒のついたカメラを持ったふたりの男が
カメラの両側で走っていたのだ。

見事に自主映画である。



こんな自主映画がなんで
全世界でヒット、ビデオで売れまくったのか。

サムライミの見事な映像センス、
コミック映画全盛になる前に
まるでコミックをそのまま映像にしたかのような
恐怖とユーモアー。

そして
残忍なことをすれはするほど
笑えるという
はちゃめちゃなパワー。

そして、そして
アメリカのピエール瀧こと、
ブルース・キャンベルのゲヘヘヘ演技も
見逃せない。

とにかく
全編、
見事なコミックセンスで
ぶっ叩いて
ぶっちぎって
ぶっ飛んでくる映画。




まあ、頭の悪いフィルムメイカーなら
こんなもん、俺でも撮れるよ・・と思うだろう。

実際、
この映画が話題になった頃
この手のめちゃくちゃスプラッタ映画が撮られた。

ま、結果は
累々とフィルムの屑だけが生まれてしまった。

実は
この映画は
「悪魔のいけにえ」のようにオンリーワンなのですよ。

絶対に真似はできない、
センスに溢れているのですよ。



Ⅱでモロに「トムとジェリー」のパロディをやったように
サムライミが
自分のフィルムメイカーとして
お手本にしたのは
コミックやアニメであることは確かだ。

そういう意味でいえば
ティムバートンのようにオタク監督である。

オタクな感覚が
ハリウッドを席捲しているいま、
そこから
独自性を持って抜け出すのは
並みの才能ではむりだ。

8ミリの小さい解像度の低い画面を見せて
その映画の可能性を理解させ
金を出させた
そのパワーは

ハリウッドの化け物のような
出資者をもその気にさせ、
ついでに
観客の財布から金を出させる。

そのパワーの正体は
すべてこの映画の画面にあります。

日々、友だちの迷惑顔を顧みず
映画を撮っているフィルムメイカー諸君!!

これが
これこそが
人々の財布を開けさせる映画だよ。





おまけです。
最初、観た時は、パロディポスターかと思ったけど
どうやら
こういうスプラッタミュージカルがあるらしい。
それも韓国で・・。
情報求む。