
ある男がTVで言っていた。
「死を前提とした話はしたくない」
ひとが唯一、わかっている運命は
ただひとつ
いつかは死ぬこと。
武士は戦いの生活の中で
誰の下で
どうやって死のうと考えながら生きている・・・と
言われている。
そんなのは嘘だ。
武士の哲学など
みんな格好つけで大嫌いだ。
生き方の末にある死に方。
マパッチ将軍が
伝令に来た子供の
自分に対するあこがれのまなざしを感じて
いい気分になった。
きっとこの子供の口からは
おれは偉大な将軍として語られ
後の世にはおれは英雄となるに違いない。
おれは尊敬される人物となるのだ・・。
みんながおれのために死んでくれるような人物となるのだ
武器さえあれば・・。
「泥棒だ・・好きにしろ」
そう言い放ってアーネスト・ボーグナインは
エンジェルを、
将軍のもとに置いていく。
エンジェルが殺した婚約者、テレサの母親の密告で
武器を彼が盗んだことがばれたのだ
金を払う。
だからエンジェルを返せというウィリアム・ホールデン
しかし
将軍は、返さないという。
武器が手に入ったお祭りの生贄として
なぶり殺しにするつもりだ。
すでに車にロープで繋いで引き摺り回し
ボロボロにしているのに・・。
ウィリアム・ホールデンたちは
なにも言わずに帰ると
女たちを抱いた。
翌朝。
「お金払ってよ!!」
女の罵倒を浴びながら服を着るウォーレンオーツとベンジョンソン
抱いた女の部屋にいる赤ん坊を見ながら上着のボタンをはめるウィリアム・ホールデン。
金を払って隣の部屋にいくとウォーレンオーツに言う。
「いくぞ」
「いいとも」
あの時、エンジェルを見捨てた自分に対する悔しさで
女を抱く気にもなれず
外で座って
木を削っていたボーグナインが
出てきて銃を戦えるように準備する仲間の姿を観て
笑う。
並んで歩きだす男たちに
またあの歌が聞こえてくる。
エンジェルの故郷の村人たちが歌ってくれたあの歌。
行方も知らず
疲れた翼で、
つばめはどこへ飛んでいくのかあてもなく
隠れ家を求めて、むなしい旅へああ神様
もう私は飛べない。夢に見るのは愛のねぐら
だけどそっけ無く愛は飛び去る
1人残って途方にくれる
ああ神様 もう私は飛べない
自分たちのような無法者の命にも
生きる意味があることを
教えてくれたあの村人たちが歌ってくれた歌が
また聞こえる。
そして
銃声が奏でるメロディに乗って
死のバレエが始まる。
「撃てえええ!! 撃って撃って、撃ちまくれ!!」
血まみれになったボーグナインに叫ぶウィリアム・ホールデン
叫びながら機関銃を撃ちまくるウォーレンオーツ。
ベンジョンソンが必死に援護する。
やがて
女と少年兵に撃ち殺されるウィリアムホールデン。
そして
他の三人の指から
引き金を引く力が抜けたときに
銃声が止み
死のバレエは終わった・・。
機関銃を持ったまま死んでいるウィリアムホールデンのホルスターから
かっての仲間、ロバート・ライアンが銃を抜きとる。
そこに
ジェリー・フィールディングの美しい音楽が流れる。
座り込んだロバート・ライアンにはもう昔の仲間の死体を
運んでいく禿鷹のような賞金稼ぎを
殺す元気もない。
ただ座り込んでいる。
やがて銃声が轟き渡った。
きっとあの禿鷹どもが殺されたんだろう・・。
顔なじみの昔の仲間、エドモンド・オブライエンを先頭にした
パルチザンの一団がやってきた。
「昔のようにはいかないかもしれないが
楽しいぜ、きっと・・」
ここで
ロバート・ライアンがはじめて笑った。
ひどく不器用に笑った。
エドモンド・オブライエンが大笑いする。
パルチザンたちが
武器を黙々と運び出す。
ロバートライアンが立ち上がって馬に乗る。
笑い顔が重なる。
ウィリアム・ホールデン
アーネスト・ボーグナイン
ウォーレン・オーツ
ベン・ジョンソン
そしてエンジェル、ジェイミー・サンチェス。
最近、よく考える。
俺はどうやって死ぬんだろう。
考えたってわかるわけがない。
わかったって楽しいわけじゃない。
なら考えるのはやめよう。
生きていけば自然にその先に死があるんだ。
言い古された言葉だが
どうやって生きれば
死ぬ時に後悔しないか・・。
どうやって生きれば
笑ってその死を迎えられるか。
40歳の僕が観るこの映画は
とても明るい映画だった。
笑って滅びることができる場所を見つけた男たちの物語だった。
さて、
明日から
僕は
そして
あなたはどうやって生きるだろう。
いつかかならずくるはずの死を大笑いで迎えられるように
生きようではないか、
明日も・・。