77 「ストレンジャー・ザン・パラダイス」  絶対に真似のできないもの・・ | ササポンのブログ

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久々に、思い出話。
その当時、僕のまわりには
映画監督を夢見て
8ミリを持って(ビデオじゃないよ、フィルムだよ)
ウロウロしている連中が
たくさんいました。

僕も
左手に8ミリ
右手にえんぴつを持って
ウロウロしていました

そんな連中が
この映画を観て、
大騒ぎした。

こんな映画を
おれも
こんな映画を撮りてぇぇぇ

当時の映画青年たちにとっては
トピーフーパーや
ロメロのホラー

ペキンパの西部劇

そして
スピルバーグの映画と

同じぐらいに

この映画があこがれだった。

なによりも低予算で撮れる
つまり自分たちでも撮れるとおもった。
本当は
それが一番、大きかったのかもしれない

でも僕はなんとなくわかっていた。

これは撮れない・・
撮ろうと思って撮れる映画じゃない・・。

友だちに「この映画みたいなシナリオを書いてくれ」と頼まれた。
僕は「無理だよ」といった。
「この映画は、他人が真似してかけるもんじゃないよ。」

その時、なぜ
僕がそう思ったか、わからない。
僕は
ロメロの真似をしてゾンビ映画を撮った。
ロメロにはなれないが、真似ぐらいはできる。

でもこれは無理だと思った。
ジム・ジャームッシュの真似すらできない
頭の悪い僕でもわかった。

なぜか?



今回、久しぶりに観て驚いた(最近、このフレーズ多いなあ・・)

本当にすべてが
孤高なまでにオリジナリティなのだ。

ウィリー(ジョン・ルーリー)は、10年来ニューヨークに住んでいる。ハンガリー出身で本名はベラ・モルナー。クリーヴランドに住むロッテおばさん(セシリア・スターク)から電話が入り、彼女が入院する10日間だけ、16歳のいとこエヴァ(エスター・バリント)を預かるこどになった。エヴァはアメリカで新生活を始めるため、ブダペストからやって来るのだ。やって来たエヴァに、TVディナーやTVのアメリカン・フットボールを見せるウィリー。彼にはエディー(リチャード・エドソン)という友達がいて、2人は、競馬や賭博で毎日の生活を食いつないでいる。エヴァの同居をはじめ迷惑がっていたウィリーも、彼女が部屋の掃除や万引きしたTVディナーをプレゼントしてくれるうちに、親しみを覚えていった。お礼に贈つたドレスを、エヴァはうれしそうにもらうが、気持ちだけ受けとって、その趣味の悪いドレスをゴミ箱に捨てた。彼女がクリーヴランドに発った直後、ウィリーとエディーは、いかさまポーカーで大儲けして、借りた車でクリーヴランドヘ向った。クリーヴランドは雪におおわれており、ロッテおばさんの家で暖まった2人は、ホットドッグ・スタンドで働いているエヴァを迎えに行く。エヴァと彼女のボーイフレンドのビリー(ダニー・ローゼン)とクンフー映画を見に行ったり、エリー湖に行ったりした2人。数日を過ごした後、ウィリーとエディーは、ニューヨークに帰ることにするが、いかさまで儲けた600ドルのうち、まだ50ドルしか使ってないことに気づき、エヴァも誘つてフロリダに行くことにする。サングラスを買って太陽のふりそそぐ海辺に向かう。2人分の宿賃で安モーテルにもぐり込む3人。翌朝、エヴァが起きるとウィリーとエディはドッグレースに出かけており、有り金を殆どすって不機嫌な様子で戻って来た。やがて競馬でとり返すと言って彼らが出て行き、エヴァは土産物店でストローハットを買うが、その帽子のために麻薬の売人と間違えられ大金を手にする。競馬に勝って勇んで帰って来た2人は、エヴァのおき手紙と大金を発見して驚く。飛行場に急ぐ彼ら。しかし、エヴアは、その頃、考え直して安モーテルに戻ることにするのだった。
gooより


これがストーリーです。
確かにこういう話でした。
ただこう書き出してしてみても
この映画が
全然、
説明できていません。

ストーリーがどうでもいいというわけではありません。
ただ
このストーリーで
普通の才のない監督が撮っても
映画青年たちは熱狂しません。

このストーリーで
日本のドラマディレクターが撮っても
僕は孤高を感じません。

でも、
これをジム・ジャームッシュが撮ると
恐ろしい誰も真似できない孤高の映画となるのです。






まず今回、発見したのは
この映画の、構図の凄さです。

この映画のポスターはすべて
映画のスチールです。

つまりこの映画は
すべてのシーンの構図が
ポスターになるほどかっこいいのである。

たとえばこのシーン、
男女が3人後ろ向きに立っているだけです。
その向こうは雪におおわれてたクリーヴランド・・。
こんなシーンがポンと入る。

なんとなく間が抜けておかしい・・
でもなんとなくいい・・

これだってポスターになる。

映画で最も重要なポイントのひとつは
構図、レイアウトです。

押井守監督は「映画はレイアウトがすべて、俳優はそのパーツにすぎない」と
言い切りました。

有名な監督たちはみんな独自の構図を持っています

シンメトリック(左右対称)に狂気と美を表現したキューブリック。
撮影所の床に穴を掘って、そのなかにカメラマンを入れまでローアングルにこだわった加藤泰

とにかくこの映画のレイアウトは完璧です。

人の配置、物の配置、そして風景
すべてが、
独特の間を持っていて

それが
彼のセリフの間と相まって
あまりにも見事な
空間を作り出している。

こんなのは
真似できるわけがない。

さらに
音楽のセンスがいいときたら
無敵である。

こうして映画のスチールを張っているだけで
マニアックで
ダサダサの僕のブログが
一気に
丸井のフリーマガジンのようになってしまう。

おしゃれでかっこいい・・

それは
本当に研ぎ澄まされた
独自の感性によって作られるものであります。

すでに
おしゃれだといわれているものを
撮っていて
なにがおしゃれであるか・・

独自の視線を持てば
ジョン・ルーリーとリチャード・エドソンが
並んで立っているだけでも
おしゃれなのだ。