72 「シービスケット」  負けたら昨日に逆戻りな「明日のジョー」映画!! | ササポンのブログ

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まずこのポスター、かなりいい。
馬が好きということを差し引いても、
僕の評価は高いです。
かなりセンスがいいと思います。



とりあえず競走馬の映画なので
それだけで
観ていないひとがたくさんいると思う。
それもアメリカでは有名だが
日本ではほとんど知られていなかった馬の話である。
なので
日本で公開されたときは絶対にコケると思っていた。
ところが
意外と、そこそこ入った。
僕が劇場に行った時も半分は埋まっていた。

それはほとんど口コミだろう。
この映画は
映画としての出来がとてもいい。
観た人は感想を聞かれて
「いや、おもしろかったよ」
とか
「泣いたよ・・ほんと」
とか答えるような映画なのだ

この映画は完全にハリウッドの必殺技を使っている。
古き良きハリウッド全盛期の必殺技である。

まず主要な登場人物3人の設定からしてハリウッドである。

自動車販売で成功したものの、
息子を事故で亡くし、妻にも去られた大富豪ハワード(ジェフ・ブリッジス)。


開拓時代の終焉により、時代遅れのカウボーイとなったトム・スミス(クリス・クーパー)。




一家離散の憂き目に合い、草競馬のジョッキーに身をやつした青年レッド(トビー・マグワイア)。






人生の辛酸をなめていた3人の男は、運命の糸に導かれるようにして一頭のサラブレッドに出会う。
その名はシービスケット。
彼らと同じく運に見放された小柄な馬だった…。

すべてから見捨てられた男3人と
1頭の馬が

再起を掛けてもう一度挑戦する。

ディスイズハリウッドである。
この設定で「おおおおお!!」と燃えないひとは、
映画好きにはいないはずです。

やったら出来るってやつです。
やらなきゃ、出来ないってやつです。

立たなきゃ
昨日に逆戻りの「明日のジョー」です。
ね・・好きでしょ、こういうの・・


でも、こういうのは
もう誰も堂々とやらなくなってしまった。
好きなくせになんでやんないの・・・と
制作総指揮のトビーマグワイアは思い立ち
腰が悪いのに主役までやってしまった。
とにかく
まずこの映画がいいのは、
現実の話のなかから
映画として映えるエピソードを見事につなぎ合わせた点だ。

この映画に描かれたことは
まるで映画のために考えられたようであるが、
ほとんど現実に起こったことだ。

しかし
当たり前のことであるが、
現実をすべて描いているわけではない。
膨大な史実や資料のなかから
ピックアップしている。

そのピックアップされたエピソードは
すべて
観客が観たい部分である。

これはなかなか出来る芸当ではない。



綺麗事を並べただけでは
いまの時代、
観客に馬鹿にされるだけだ。

現実に起こったけどあえて観たくない部分も織り交ぜなければ
本当の感動にはならない。

まず典型的なアメリカンドリームの体現者である大富豪ハワードの
事業成功と私生活凋落の物語を
時間をかけて描いた。
アメリカ映画が好んで描いたおなじみの世界だ。
これで観客は気持よくなる。

そして
さりげない感じで
時代遅れのカウボーイとなったトム・スミスが登場する。
これはあくまでもさりげなくやるのがかっこいい。
演じているクリス・クーパーのさりげない、渋さもいい。

そして
アメリカ版、矢吹ジョーこと、レッドが登場する。


この映画で
とても重要なシーンがある。

レッドとトムが
はじめてハワードの大邸宅に招待されて
食事をするシーンだ。

このときに
3人の男は
家族として団結して
人生を戦っていくことを認識する。

レッドはこのとき、
戸惑いを感じる。
自分を見捨てた家族というモノに対して
そんな感じを
トビーマグワイアは見事に演じる。
このひとは本当に演技がうまい。


あくまでも映画の紹介なので
馬についての
細かい素敵なシーンは
書かないが
レースシーンについては、
もう完璧といえる。

この映画でレースシーンのアドバイザーとして
そして
アイスマン、ウルフとして出演までしてしまった
ゲイリー・スティーブンスは
ケンタッキーダービー3回制覇した
名ジョッキーです。
本当に当時の競馬を
マニアックなまでに忠実に表現した映像は
この映画にかけるスタッフたちの意気込みが感じられます。

ほんの少し前
アメリカ映画がとってもおもしろかったとき

みんなが
アメリカ映画が、映画そのものだと思っていた頃
映画を作っていたひとたちは
観客を望んでいたものを的確にわかっていたと思う。

観客が観たいと思っていたものを
しっかりとわかっていたと思う。

そんな時代の映画の息吹が
この映画からは伝わってきます。

競馬ファンというよりは
映画ファン必見の映画です。