まずは軽いお笑いを。
この映画のタイトル、「まぼろしの市街戦」を普通に漢字変換すると「幻の紫外線」。
軽い思い出話を。
昔、池袋に文芸坐という名画座があった。いま、あるのはリニューアルした文芸坐。昔のは、地下に小劇場ル・ピリエがあり、隣には映画専門の本屋があった。
そこの人気プログラムに「陽の当たらない名画祭」というのがあって、この映画は、常連だった。
前説終わり。
例の如く
このコーナーの常でありますが、
ここに取り上げるような映画は
とても画像が少ない。
今回もたった6枚。
ただこのコーナーに取り上げる映画の検索率は高い。
つまり他に誰も書いてないから仕方がなくここに到着と相成るのだろう。
さて、この「まぼろしの市街戦」
とても毒に満ちた快作であります。
どれぐらい毒に満ちているかと言えば、
サラッと見ただけでは
その毒の強さに気がつかない
中国産のお米で造ったおにぎりのような映画であります。
監督は、フィリップ・ド・ブロカ。
ベルモンドと組んで「大盗賊」「カトマンズの男」「リオの男」など、次々と娯楽アクション映画を撮った監督。
そんな彼は一方で独特な風刺を込めたコメディも作っていた。
この映画や『君に愛の月影を』。
特にこの作品は観た人は少ないが、観た人の心に絶対に残る傑作であります。
いつものようにストーリーをウィキーさんにお願いするが今回は、読んでね。短いから・・。
第一次世界大戦末期、1918年10月、ドイツ軍は敗走していた。これは、解放を待つ北フランスの寒村でのできごとである。
イギリス軍に追撃されたドイツ軍は、その田舎町から撤退する際に、
いやがらせとして大型の時限爆弾を仕掛けていった。
誰が町に潜入し、爆弾の時限装置の解除をするか。たまたまフランス語が出来るというだけの理由で通信兵(伝書鳩の飼育係)のプランビック二等兵がその命令を受ける。
町に侵入したプランピックは、残留していたドイツ兵とはちわせをして精神病院に逃げ込む。
そこでプランビックは「ハートのキング」と自称したことから、患者たちの王にまつりあげられる。
町の人々が逃亡し、ドイツ兵が撤退して、もぬけのからになった町。
患者たちはその町に繰り出し、思い思いの役を演じる。
司祭を選ぶ者、軍人を選ぶ者、貴族を選ぶ者、娼館を営む者。戦争の跡が色濃く残る町の中で、リアリティのない奇妙な日常生活(の・ようなもの)がはじめられる。プランビックはその奇妙な日常生活に取り込まれていく。
もぬけのからになった街で、精神病院のキチガイさんたちが、
楽しそうに自分たちの役柄で、
生活をはじめる。
そのなかで唯一、
まともなオツムのプランビックも
徐々に
キチガイたちの仮想・・いや仮装の日常にまきこまれる。
なぜなら、
それが、なんとも楽しいから。
めちゃくちゃに楽しいから。
でも爆弾も探さなきゃ・・
戦争という現実によって
爆弾が仕掛けられたというクライシスによって
もぬけの空となった街に
キチガイたちのたのしい街が出来上がる。
その風景だけで
恐ろしい風刺である。
やがて
映画は、驚きというか・・
なんとも表現しょうもない
なんといったらいいのだろう・・
どうにも表現しようもない
見事な
ラストになだれ込む・・・。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/46/3d/10095507538_s.jpg?caw=800)
![](https://stat.ameba.jp/user_images/03/05/10095507532_s.jpg?caw=800)
この映画でバレリーナを演じるジュヌヴィエーヴ・ビジョルドがかわいい。
本当にかわいい。
実は、
この映画の後に、
偶然にも
クローネンバーグの「戦慄の絆」の彼女を見て、
月日はかようにも過酷に女を変えるものか・・・と涙してしまった・・というのは嘘。
この映画がどうしてカルトなのかはわかりません。
僕は、
リメイクは大嫌いだが、
もしどうしてもリメイクの企画を出せと言われたら
この映画を推薦する。
ものすごい出来のいい世界観を持っていながら
あまり知られていない傑作。
リメイクをするならこういうのをすればいい。
僕は、
フランス映画をあまり観ていないが、
時々、
こういうとんでもなく出来のいい映画が出てくるので怖い。
いまではレンタル屋にもあまりないので
残念だが
機会があれば見てほしい映画であります。