冒頭いきなり宣言する。
「ロックンロールの寓話」
これは、もう完全にウォルターヒルの宣言である。
ここからは、おれの好き勝手をやるぜ。
すべておれの好きで固めるぜ!!
この映画にある
アクションも
銃も
タイプライターも
キャラクターも、
衣装も、
炎も、
そしてライクーダーの音楽も、
すべてウォルターヒルである。
かっこいいガンプレイも、
趣味の悪い衣装も、
すべてウォルターヒル。つまり、この映画は、ウォルターヒルの寓話なのだ。
ウォルターヒルが好きなら、もうそれだけで、この映画は文句なしである。
もしこの映画が嫌いなひとは、文句なしにウォルターヒルの映画は嫌いである。
他のどの映画を見ても、
嫌いだろう。
埃っぽい街、ほとんどが恐らく肉体労働に従事しているであろう、住民。
ロックコンサートがはじまる。
この冒頭の音楽と、カッティングは、
ちょっとびっくりした。
おっとっと、これはすごい。
どうしたんだい、ヒルさん、今回は張り切ってるねえ・・と姿勢を正した。
ライクーダーが「おれの音楽に合わせて絵を作れ」という素敵な暴言を吐いただけある、見事なロックンロールに、傑作の予感は高まる。
そしてやってきたのが、鮫男、ウィレム・デフォーだ。「天国の門」で出演シーンをカットされた、呪いの顔で登場だ。
このウィレム・デフォーの役は、本当に最後まで笑わせてくれる。
えらく大げさに出て、なにをやるかと思えば、ロック歌手のダイアンレインをかっさらって、自分の部屋に縛り付けて監禁。つまりストーカーなわけね。
その大切なスケを、優男のパレーちゃんに、連れ戻され、挙句の果てに、遊び場まで、燃やされちゃう。
かわいそうなデフォーちゃん。ほんと、彼はいつもロクな目に合わない。戦場では仲間に殺されるわ、最強になったと思ったら蜘蛛男に殺されるわ。
いつになったら幸せになれるんだろう。デフォーちゃん。
この映画はなぜか、本国ではコケたが、
日本ではヒットした。
キネマ旬報の読者投票では一位になった。
いつもの逆である。
本国ではウケるのに、
いつも日本ではヒットしないのが、ウォルターヒル映画である。
それを証拠に、ウォルターヒル映画は、この映画と「48時間」以外は、
日本でヒットするどころか、知られてもいない。
「48時間」だって、ウォルターヒル映画というよりは、エディマフィーのデビュー作として知られているだけだ。なんで、この映画が日本でヒットしたのか?
無理やりこじつけて考えてみれば、この映画が日本人の好きな「寅さん」みたいだと。
旅に出ていた男が、故郷にフラリと帰ってきて、ひと騒動起こして、また旅に出る。
マイケルパレーは、渥美清だと・・。
冒頭に書いたが
この映画は、すべてウォルターヒルです。
この映画に、
ウォルターヒル映画のすべてがあります。
べたつかない人間関係
深入りしない愛情関係
出てこない父親と母親
そして登場人物たちの職業の倫理が
性格設定のすべて。
だからつまらないひとには、
くそにもならない映画。
北野武が「48時間2」をクソみそにこきおろしていたが、それもわかる。
彼にとって、殺し屋がいかにも殺し屋という顔をして、そういう行動をするなんてのは、
馬鹿らしくて観てられないのだろう。
でもそれが
「ウォルターヒルの寓話」なのだ。
またまたおまけ画像
ちょっと待てよ。このフィギュアの写真が一番、大きいじゃねえか・・・