42 「ゲッタウェイ」  マックイン映画? いやいや、しっかりペキンパー映画です | ササポンのブログ

ササポンのブログ

映画、音楽、アニメにドラマ
そしてサントラなブログ
ひとを観ていないものを観ます



監督 サム・ペキンパー

製作 デヴィッド・フォスター
ミッチェル・ブロウアー

原作 ジム・トンプスン
脚色 ウォルター・ヒル

出演 スティーブ・マックイン
  アリ・マッグロー

音楽 クインシー・ジョーンズ

誰かが、この映画は、ペキンパー映画ではなく、
マックイン映画だと書いていた。

確かに、ペキンパー映画としては異色だ。
まず当時スターだったマックインを使っているということ。
そして音楽が、
マックインのごり押し(?)で、いつものジェリー・フィールディングからクインシー・ジョーンズに差し替えられたこと。(個人的には、クインシーの曲もよかったと思う)

そしてなによりも、主人公が行動がかっこいい。美人のスケ(僕はあんまり好みじゃないが・・)と逃避行なんてのは、ペキンパーらしくない。

同じペキンパーの「ガルシアの首」を見れば明らかである。こっちは野郎の生首である。

確かにマックイン映画である。

でもそれでもどうしようもなくペキンパー映画でもあるのだ。
なぜなら監督は、ペキンパーだから・・。

どんな条件で、どんな状態で撮られたとしても、やっぱり監督の個性がにじみ出てくるものなのだ。
本物の映画監督なら・・。






いつものことだが、ペキンパー映画のオープニングから、メインタイトルに至るまでの映像は、凝っている。
刑務所内での主人公、ドクのいらだちと、稼動する作業機械がカットバックする。
そして囚人同志のロータッチに、メインタイトル。

それだけで、その映画の気分を、そして
主人公の気分を表現する、このペキンパータッチの見事さよ。
いかにもこれが、映画の呼吸だ。




街の実力者のジャック・ベニヨンによって刑務所を仮釈放されたドク、その条件として銀行強盗をやらなくてはならない。

ここから銀行強盗の準備の描写が丁寧だ。

決行する面子が集まって打ち合わせする場面で、我らがボーホプキンスが、櫛で髪の毛をとかしていてドクに注意されるシーンがあるが、あれは台本にないアドリブ。ペキンパーがボーにやってみろと言われて、やったらマックインが本気で注意したのをそのまま使ったそうだ。
マックインの性格を知り尽くしたペキンパーの作戦勝ちである。

それにしてもいいなあ、ボーホプキンス。
すぐに殺されちゃうけど・・。






結局、仲間は裏切るんだけど、
これが絶対に裏切る・・・という雰囲気なのが凄い。
十中八九、裏切る、強盗をやった後は、その金を誰が手に入れるか・・。
もうほとんど決行前から、みんなの腹の中にそれがある。
だからこそ、マックインもアル・レッティエリ演じるルディも、
防弾チョッキを着ていたのだ。


そこからはじまる、裏切りと逃亡劇。

自分の女房であるキャロルの裏切りを知ったマックインが、彼女を殴るシーンがある。
これは、完全にマックイン映画だ。
ペキンパー映画なら殴らない。
グチグチと愚痴はいうかもしれないが、殴らない。
それに自分を助けるために、いやな男と寝てくれるような女など
ペキンパー映画には出てこない。

やはりマックインのガンアクションについて、ふれなくてはならないだろう。
とにかくこの映画ぐらい、マックインが、細かくガンアクションを披露した映画もない。
なんせ四六時中、銃を持っていたのだから、その立ち振る舞いの一部に銃が含まれている。
僕自身、それほどガンマニアではないので、
細かいところまではわからないが、
まず撃った後の腕と体の、反動の表現には感心させられる。
日本映画の「蘇る金狼」という映画でやたらにガンアクションに凝ったとスタッフが自慢していたが、あの映画の銃の反動と、マックインのそれを比べれば、美しさとリアルの面で格段の差がある。日本刀も斬った後、銃も撃った後の仕草が最も大切なのだ。



写真が小さくて、恐縮だが、一部ガンマニアの間で話題となった、このマックインの仕草。撃った相手の血糊がこちらにかからないように、反対の手をかざしている。こういう細かい仕草が、やたらに出てくるから、たまらない。リメイク版で主演の誰だったか忘れたが、その俳優が同じ仕草をしていたが、笑止千万である。真似にもなっていない。後ろから撃たれて、すぐに死んでください。



そして話題のラストシーンだ。
ここではあえて、なぜ、話題なったかは、書かないが
とにかくあのラストに行くまでの
トラックのおっちゃんとのやりとりは
確実にペキンパー映画である。
淀川さんが、
まるで歌舞伎のようだ・・と解説で表現していたが、
まさにお互いの腹をさぐりあいながらも
交渉していくさまは、
よく出来た芝居のようである。



この映画に関して唯一、残念なのは、ヒロインが僕の好みじゃないということだろう。
なんで、アリ・マッグローがあんなにもてたのか、いまでもよくわからない。
映画全編を通しても、魅力があるように見えない・・。
ま、好みじゃないってことなのかな・・。



やたらに画像が多い上のは許してもらいたい。やっぱりこの映画のマックインはかっこいいのだよ。
青春のあこがれだったのだよ。
ちなみに、今回もマックインと表記した。僕の中ではあくまでもマックイーンではなく、マックインなのだ。

さらにおまけの映像。
予告編だ。もういたれりつくせり、石川セリだ。