「キャグニー&レイシー」 ニューヨークで、仕事をして家族を持って生きる女たちの、本当の姿を描く | ササポンのブログ

ササポンのブログ

映画、音楽、アニメにドラマ
そしてサントラなブログ
ひとを観ていないものを観ます



ニューヨーク市警のふたりのおんな刑事
クリス・キャグニーとメリー・ベス・レイシー。
キャグニーは、独身。
レイシーは、仕事に理解のある夫と、生意気盛りの子供がふたり。

普通に生きていくことすら大変なニューヨークで
ふたりは刑事という過酷な現場で
過酷な現実に直面していく。




このドラマで、キャグニーがセクハラを受け、上司を告発するというエピソードがある。
それによって生じる、同僚たちとの軋轢、組織としての警察との対立など
このエピソードは、いまでもアメリカでセクハラ問題を勉強するときに
テキストとして使われているそうだ。

それほどリアルに、徹底的に
描かれているのだ。

ニューヨークで
女が・・
いや、
人間が仕事をしながら
生きていくことの過酷さを・・。



この動画で、ふたつのことがわかる。

まずこのドラマは、このふたりが、署内のトイレやロッカールームで、ディスカッションする。
本気になって、
あらゆることを議論する。
時には相手を傷つけ
時には、相手の生き方を全面否定する。

相手を全面的に知り
理解しなくてはやっていけない。
なぜならば、刑事だから。
相手に命すら預けているから。

あとわかるのは、ふたりの演技力の確かさ。
特に少し太ったほう、レイシー演ずるタインデイリーの表情の豊かさは、さすがに舞台ですでに名を成したひとらしい迫力である。「ダーティハリー3」に抜擢されたのもうなずける。






「良心の行い」というエピソードがある。
レイシーが、妊娠休養にはいったので、キャグニーに新しいパートナーがつく。
名前は、ローウェル。
その男が、転属されてくると聞いた途端、署内は色めき立ち、怒った。
ローウェルという男は、警察署内の不正を、TV局に告発して有名になった男。
そう・・。「セルピコ」や「プリンスオブシティ」を観た人なら
その行為がどれだけ自殺行為かわかるはずだ。
当然、キャグニーも怒る。
こんなやつとは組みたくない・・と。
しかし上司からの命令で仕方がない。その上司すらも怒っている。

案の定、署内、署外から、嫌がらせが浴びせられる。
ローウェルとふたりで行くと資料がないと言われる。
キャグニー、ひとりで行くと、その資料が出てくる。
同僚たちも、堂々と、いやみをいう。
キャグニーは、犯人を追いかけるよりも、
その嫌がらせによって消耗していく。

そんなキャグニーに、休養中のレイシーがいう。
「彼の気持ちがわかるのは、あなただけよ・・」

そう・・。キャグニーもセクハラ告発のときに散々いやがらせを受けてきた。

ローウェルが、自分のロッカーを開けると、
ハンガーに突き刺さったネズミの死体がぶら下がっていた。

ローウェル「これは君からのプレゼントかい」
キャグニー「わたしは、そんな陰湿な嫌がらせはしないわ」

ローウェル「はっ!! この署の嫌がらせは、この程度のものなのか!! 僕が、他の署で受けてきた嫌がらせを教えてやろうか!!」

ローウェル「いいか、僕は最初からTV局に行ったわけじゃないんだ!! 署内の上司に、上層部に何度も、何度も訴えたんだ。でもとりあってもらえなかった。だからTV局に話したんだ!!
僕がこれだけいやがらせを受けながらどうして辞めないか教えてやろうか。
好きなんだよ。この仕事が!!
憧れだったんだよ!!  警察の仕事が!!」

結局、ローウェルはまた別の署に飛ばされる。
別れの日、デスクのものを片付けながら奥さんに電話する。
「うん・・こんどのところはもう少し長くいられると思うよ」
電話を切り、ローウェルがいう。
「そういうことさ」

立ち上がり、出でいこうとするローウェル。
その時、
部屋にいた全員が、雑音を立てる。
机を叩き、本をたたき、ドアを叩く。
ブーイングの雑音、出ていけの雑音。
そのなかを出ていこうとするローウェル。

キャグニー「ローウェル!!!」

雑音がとまる。

立ち止まり振り返るローウェル

近づくキャグニー。

そして・・・。



数あるエピソードのひとつです。
僕は、これは、ドラマ史上に残る屈指のエピソードだと思います。
ローウェルの吹き替えを担当していたのは、池田秀一。お馴染みシャー少佐。彼の演技力が遺憾なくはっきされます。


あえてラストは書きません。
それはこのドラマを
字幕版のDVD発売も、
再放送すらしないことに対する抗議です。

「セックスアンドザシティ」やうわべだけのニューヨークライフのレポートを見ているとなんかあの頃の日本と、あの頃の日本のドラマを思い出します。
バブル期と、そしてトレンディドラマ。
とっくの昔に崩壊したと思っていた、心の嘘が、また蘇っています。
装わなければ生きていけない、うまくつくられた、本当を装った嘘八百。
嘘も嫌いじゃないけど、
すぐに消えてなくなる嘘に時間を費やすほど若くないんでね。

前にも書いたけど

嘘は、すぐにばれる。
本当は、変わらない。






オープニングテーマです。
また最初の文章で、作曲者を間違えていました。
クレジットされていたのは、ビルコンティです。
kazzpさんの指摘をもらって再度、調べてみたら、
ビルコンティでした。

最初の文章では、ラロシフリンと書いていました。
正直、僕は、ラロシフリンとビルコンティも少しごっちゃにしているところがあります。(全然、似ていないのに・・)
こういうところで信用がなくなるんだよな・・書く文章に・・。