群青のブログ

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 フローリングの床にはカラフルな色見本。
 繊細なレースにキラキラビーズ。

 その中心でお人形のように立っているのは高崎要、通称カナちゃん。
 邪魔にならないように緩く両腕を広げ、腰元で作業する姉に呼びかけた。

「ねぇ、茨ちゃん」


「なぁに、カナちゃん、動かないでね」

 手首のピンクッションから待針を数本抜き、スカート部分に細かくフリルを刻んでゆく。


「僕、好きな人が出来たのかもしれない」

「春?春なの?春めいているのね?高校デビューなのね!?」

 茨が少しだけテンション高めに針を打ってゆく。
 針の位置は正確だ。


「同じ学校の子?」

「そう、男の子」





「何気に問題発言ね」

 要がこの春から通っている高校は元々男子校で、2年程前から共学になりはしたものの、未だに女子数は少なく、しかも女生徒の8割は『同性』という単語に期待感を持っている子が多かった。
 実際、同性カップル多いしね。



「ジャケットの裾、もう少し長い方がいい?」

「いや、僕はこのくらいが好きだよ」


 黒とグレーの細いストライプのジャケットに白のフリルスカート。
 足元は約束のニーソックス。
 だが、着ている本人は正真正銘の男子高校生である。


 姉、茨(19)の趣味により、所謂ゴスロリ服のモデル中。





「文学少年のまにまに」




 緑の葉擦れがありました。
 女の子が泣いています。

 “どうしたの?”


 聞くと、女の子は泣きながら

 “猫がいなくなったの”


 と、言いました。



 鈴は付けていなかったの?と聞くと、涙を拭いながら。

「付けていたわ。いっぱい付けていたわ」
 とてもとても可愛いかったから、首に足に尻尾に大小様々な

 56個の鈴。


 大音量でシャラシャラ鳴って



 迷惑だっただろうな、と思いながら

「じゃ、その子は自由になれたんだね」

 そう言って笑んで見せました。



 めでたし、めでたし――――










「何がめでたいんだろうなぁ、猫逃げちゃったのになぁ…」
 呟きは誰に届く事も無く、地面に落ちて消える。

 春、入学したばかりの高校で中庭のベンチを占領して意味のわからない児童書を読んでいるのは霧島紫。
 紙媒体の物は大抵好き。ファンタジーからエロまで児童書からタウ○ページまで読む変体である。
 ちなみに、取り上げると発狂する等の特殊な性癖は無い。
 ただただ、なんとなく、『本を読んでいる』のである。