♪ 4話 記憶の中のあなた ♪

『誰なの?出てきなさい!通報したからね!!!』

中から聞こえるヘソンの怒鳴り声!

スハはドアを蹴破った!!!

≪怖いわ… 誰かいるみたい!!!≫

ヘソンを外に出し 家の中を見回るスハ

すると クローゼットの中に見知らぬ携帯が置かれ 鳴っていた

通報で駆け付けた警察官は わけが分からない

ドアを蹴破ったのはスハで

スハの怪我は 別の場所で負ったもので…

ただ携帯が鳴っただけで通報を? と戸惑う

のらりくらりの警察官にブチ切れるヘソン!

『知らないうちに誰かが携帯を置いて行ったんです 
これは住居侵入罪よ!

刑法第319条により 3年以下の懲役か500万ウォン以下の罰金よ!

当然償わせなきゃ!!!』

≪かなりの変わり者だ 面倒だな…≫

さっさと帰ろうとする警察官の心の声は まったくやる気なし

スハは追いかけて 携帯の持ち主に心当たりがあると耳打ちした

そして ヘソンのもとへ引き返すと 傷の痛みに倒れてしまう…!

意識を失ったというよりは 眠り込んだだけのスハ

その夢の中は 父親が亡くなった後の過去の光景に…

-*-*-*-*-*

納骨堂から 叔父に引き取られていくことになっていた

幼いスハには 生きていく場所を選べなかったのだ

その時 やさしく言葉をかけてくれる叔父の 心の声が聞こえた

≪死ぬなら子供を連れて行けよ! なぜ苦労を押し付けるんだ!

4人も育てられるかよ!≫

それでも ついて行くしかなかった

どんなに疎まれても…

ある日 遊園地で叔父たちとはぐれてしまった

発見した叔父に向かって 必死にここだと手を振ったのに…

≪頼むから消えてくれよ 海外移住の邪魔になるだろ!≫

-*-*-*-*-*

目覚めると 目の前にヘソンがいた

発熱してる自分を心配してくれている

≪親に連絡すべきかしら 心配してるはずよね

でもなぜ 傷だらけでうちに来たの? まさか不良なのかしら?≫

さっきまで名前も知らず 今も何も知らないままだ

『親はいないよ 質問があって来たんだ

来る途中で転んだだけだし 不良でもない』

便利な時もあるが やはり心を読まれるのはいい気持ちはしない

それでも 今日はここに泊まって 明日は病院へ行くようにという

自分はパク・スハだと名乗っても ヘソンは何も感じないようだ

10年前のことなど 忘れているのだ

『パク・スハ? 聞き覚えがあるような…』

考えたくてもクタクタで ヘソンは眠りに落ちてしまう

家の外の暗がりには ミン・ジュングクが立っていた…!

翌朝

ソ・ドヨンの家では 朝から御馳走だった

娘の誕生日に 母親が腕を振るったのだ

夜には 食事の予約を取ってあるという

『公訴を取り消したそうだな』

『……』

『弁護人はヘソンだったらしいな』

誕生日にしたくない話題を 取り成そうとする母親だったが

ヘソンの名を聞き 何も言えなくなる

『10年ぶりに再会した元家政婦の娘との初公判で 
惨めな姿をさらしたのか』

『ごめんなさい 負けるのはこれが最後よ』

食事をせずに出ていくドヨン

無能さを見せた娘に 父テソクは冷たかった

(これじゃ噂が立つわよ)

(噂とは?)

(ドヨンが実の子じゃないことよ)

『冗談が過ぎるぞ』

『本当のことじゃない!』

ヘソンの部屋で目覚めたスハ

傷は残っているが 元気を取り戻したようだ

リビングのソファーで寝たヘソンの姿に凍り付く!!!

ボサボサの髪 ヨレヨレのジャージ姿

2ℓのペットボトルの水をラッパ飲み!!!

『女性の大半の寝起きは こんな姿なのが現実よ

だから 幻想なんか捨てて現実を見なさい』

現実は かなり厳しいものだった

タッパーにご飯 キムチにコーン 調味料を入れてシェイク!!!

それが朝食だと渡された

『まるで犬の餌だ』

『食べてから言って』

しかもスプーンは1本しかないという

スハには しゃもじが渡された

部屋の中を見回すスハ

昨夜は暗がりで 何も見えなかった

『何か盗まれたものは? 犯人に荒らされたようだが』

『荒らされてないわよ』

『ならどうして… いつもこうなのか?!!!!!』

その日のスハは 終始憮然としていた

思い描いていたチャン・ヘソンという人物は 幻想として消え去った

いつの残骸か ピザの出前の箱が転がり

洗濯物が散乱し キッチンの汚れた食器は干からびていた

まさに汚部屋!!!

女性の9割はこうだから受け入れろと…!

一方 ヘソンは

娘の勝訴で浮かれている母チュンシムが またしても訪ねて来ていた

勝訴の次は結婚だと お見合いの話を持ち込んできたのだ

『実家はサウナの経営で成功し 彼は次男らしいの』

ヘソンは 勝訴したことで 仕事にやり甲斐を感じ始めていた

どんな言葉より その目の輝きに滲み出ている

それ以上は無理強いせず 母チュンシムは帰って行った

頻繁に届く ヘソンの母親のチキンに 

飽きてしまいそうだという事務所の3人

ヘソンは ソンビンからネイルアートのサービスを受けていた

『ネイルサロンだったら2万ウォンは取られてるわ』

『大した才能ね』

一方 スハは 先日の警察官のところへ押しかけ 質問攻めにし

心を読んで ミン・ジュングクの居場所を突き止めていた

憎き男は その片鱗も見せず ボランティアで炊き出しをしていた

遠くから見ても あの時の恐怖がよみがえる

しかしもう 無抵抗の幼子じゃない!

スハは 意を決してジュングクに近づく

『君も食べに来たのかな?』

『いいえ 僕もボランティアがしたくて』

『名前は?』

『キム…チュンギです』

その頃 ヘソンのもとには 新たな案件が持ち込まれていた

またしても 担当検事はソ・ドヨンだ

訴訟記録が大袈裟すぎると文句を言うヘソン

そうでもないと 事務員ユチャンが説明を始める

兄弟がコンビニ強盗し 一方が店主を刺し 他方が止めた

本来なら 一方は強盗殺人で他方は特殊窃盗の罪になる

※強盗殺人:強盗の最中に犯した殺人

※特殊窃盗:夜間に複数で凶器を用いて行う窃盗罪

しかし今回は 検察が 強盗殺人の共同正犯で起訴したのだ

※共同正犯:

2人以上が共同で犯罪を行うこと 同等に正犯として罰せられる

なぜ行き過ぎとも取れる訴訟になったのか

それは 兄弟が一卵性の双子であり 互いに自分が刺したと自白し

全く見分けがつかない程に瓜二つなため

監視カメラでも 判断不可能だったのだ

ヘソンは “刺した方”の担当になった

起訴状の上で“刺した方”は 弟チョン・ピルスン

『兄は濡れ衣です 僕が刺しました』

弟ピルスンによれば 自分は初犯で 兄ピルジェには前科があるという

今回有罪だと 累犯で無期刑になる恐れがあるという

※累犯:犯罪を繰り返して行うこと

弁護のこともそうだが 弟ピルスンが どうしても頼みたいことがあるという

ヘソンは 仕方なくピルスンの部屋へ行く

先日拾った仔犬の面倒を見てほしいというのだ

事務所のチャ・グァヌは 白目をむきながらパソコンに向かっている

もうずっと寝ないで 最終弁論の用意をしている

※最終弁論:裁判所に訴える最後の弁論

そこへ ヘソンが 仔犬を連れてやって来た

しばらく預かることになったという

『いつまでです?強盗殺人だと懲役10年は固いですよ』

ヘソンは 今回も無罪を勝ち取れると豪語する

すると事務員ユチャンが 今回は兄側と併合になると報告する

※併合:複数の事件を1か所で審理すること

『兄側の弁護人は手強いですよ 向こうも無罪を主張するはずです』

『兄側の弁護人は誰が?』

『あちらも国選です チャ弁護士です』

その時 白目をむいていたチャ・グァヌが とうとう意識を失った…

スハは ジュングクのボランティアを手伝っていた

明日の炊き出しの仕込みをしている

『見覚えがあるのですが 僕を知りません?』

『いや』

すばやく心を読む

≪誰だ?! 確かに見覚えが…≫

『先日 裁判所にいましたね』

≪あそこで俺を見たのか?≫

『そうですよね?』

『いや 行ったこともないが』

『では見間違いですね』

翌日 裁判所に向かう途中 ヘソンは シン弁護士とバッタリ会う

チャ弁護士の最終弁論の様子を見に行くというのだ

ことごとく ろうあ者の被告人に翻弄され チャ・グァヌは苦労していた

被告が罪を認めている案件だが どれだけ量刑を減らせるかが焦点だと

シン弁護士は 心配しているのだ

※量刑:刑罰の程度を決めること

ヘソンは 傍聴席に シン弁護士と並んで座り グァヌを見守る

緊張しているのか グァヌは パソコンの操作すらぎこちない

早く弁論をと判事が促すが グァヌは操作に夢中になり 答えない

傍聴席がざわつきだし とうとう判事が怒鳴りつける!

チラッと腕時計を見たグァヌが いつもの表情になり

判事に向かって 話し始める

『今ちょうど 被告人と同じ状況に

いくら説明しても分かってもらえず 50秒で机を叩き怒りましたね

自分の話が分かってもらえないと 人は声を荒げます

50秒が限界です

ですが考えてください それが50秒ではなく50年だったとしたら

被告人は 大声を出す代わりに寄付をしてきました

同じ境遇の障害者にと 3000万ウォン以上を寄付してきたのです

でも借金が返せなくなり 施設に助けを求めましたが 門前払いされました』

被告人は もちろん 過去の50年と同じように我慢すべきだった

寄付金を盗むのは犯罪であり 許されることではない

ただ たった1人でも被告人に耳を傾ける人がいれば…

グァヌは 切々と訴えた

ヘソンは 傍聴席を出て考え込む

そこへ ドヨンがあらわれた

今度の裁判の弁護人がグァヌだと聞き 偵察に来たのだ

勤評が間近だから気になるのかと 嫌味をいうヘソン

有能検事として 国選に負けた失態を 挽回しなければならないのだ

※勤評:勤務評定

ドヨンは ヘソンよりチャ・グァヌの方が手強いという

それを聞いたヘソンは 動揺してしまう

バカにしていたのに さっきのグァヌは別人のようだったのだ

一方 ミン・ジュングクは 昨日1日だけ手伝った高校生について

担当者から連絡先を聞かれていた

“ボランティア証明書”を渡すのを 忘れたというのだ

高校生にとっては 内申書に関わる大切なものだと言われ

ジュングクは 自分が届けると請け合った

高校に行くと 校庭にいる姿をすぐに見つけた

しかし近くの生徒に名前を聞くと キム・チュンギではなかった

『……パク・スハだって?!

君たち 彼の携帯番号は分かるか?』

その夜

シン弁護士が 事務所のみんなを飲み会に誘った

いまいちノリが悪いヘソン

シン弁護士が グァヌと自分と どっちを評価しているかが気になる

こうして飲み会にも誘ってくれるなら 初対面の非礼を許したということか

自分の長所は?と聞いてみた

『その目だよ 偽っているか見極める目!』

ヘソンは失望する

それはスハの力だった

つまり… 自分は評価されていない

何だか自信を失いかけそうになるヘソンだった

結局は ワインをがぶ飲みし ヘソンは酔い潰れてしまった

シン弁護士と事務員ユチャンは 呆れてヘソンを置いて行く

トイレに行っていたグァヌが 送っていく羽目に…!

グァヌに背負われながら 自分には“お邪魔虫”が必要だと嘆く

家の場所も分からないまま グァヌは どこへ送って行けばいいのか…

どうしてもヘソンに会いたかったスハが 事務所の前で待っている

そこへ通りかかるグァヌと 意識のないヘソン

グァヌが困り果てていることは 心を読んで分かった

スハは グァヌから受け継ぎ 家まで送っていく

ヘソンの家の中は 相変わらずの汚部屋だ

その時 ソファーに寝かせたヘソンがうわ言をいう

“お邪魔虫”が必要だと

『私の隣には彼がいなきゃ… 私の目は腐っちゃったのよ…』

スハは そんなヘソンを寝かしつけ 帰っていく

翌日のヘソンは とんでもない二日酔いだ

耳をつんざくような母からの電話…!

『母さん… 前に話が出た お見合いをしようかな』

『仕事と結婚した筈じゃ?!』

『破談になったわ きっと縁がなかったのよ』

仕事を休むわけにもいかず 出勤するヘソン

栄養ドリンクのフタが開かないだけでも 不幸な気がする

そこへ すがすがしい顔でグァヌが現れる

昨夜は 酔った勢いでグァヌを ハンサムだと口走ったらしい

『どう? まだ僕がハンサムに見える?』

『正気になって! まだ酔ってるの?!!!』

そう一喝したが ヘソンは戸惑い トイレに駆け込む

今日になってもまだ グァヌがカッコよく見えてしまうと…!

先に事務所に着いたグァヌ

するとシン弁護士が ミン・ジュングクの件をチャン弁護士に聞いたかという

どうにもジュングクの件が気になっているようだ

ちょうど入ってきたヘソンが その名前を聞き 激しく動揺する

『なぜ彼を知ってるんですか?!』

『彼の刑務所の同期から聞いたよ 最近 出所したぞ』

『え?』

『君を捜してると』

ヘソンの動揺は怯えに変わる

『いつですか?』

『1か月前 君の世話になったとか

その日の帰り道

ヘソンは バスの中でも怯えていた

ずっと続いている謎のメールを開く

<I'll be there>

『まさか これも彼が?!』

バス停から家までの徒歩も 怖くて仕方ない

帰宅すると スハが 壊れたドアのノブを直している

今は スハの存在すら煩わしい…!
締め出される前に ヘソンの心を読むスハ!

≪彼も ミンの仲間かもしれない!≫

帰るスハの携帯に ミン・ジュングクから着信が入る

なぜ 自分の携帯番号を?

<パク・スハだな? 気づかなかったぞ
>

<……!>

<裁判以来だから 10年振りか?>

指定されたハンバーガー店に行く

ジュングクは スハが心を読めることを知っている

『狙いは何だ』

≪大きくなったな 10年前のように 心を読む力は健在か?≫

ジュングクは 面白がって 心だけで話す

『思ってることを口に出せ!』

≪何を恐れてるんだ 傷つけられるとでも?≫

『携帯電話はお前の仕業だな?!』

隣の女子高生が 気味悪がって見ている

周囲からすれば スハだけがしゃべっているからだ

≪あれしきでビビッてるのかよ≫

『何が狙いだ』

≪心配するな お前に恨みはない

10年前も 狙いはお前の父親だった 今回もお前じゃない≫

『だったら誰なんだよ!』

≪…弁護士になってたな あのアマだ!≫

殴りかかるスハ!!!

周囲の女子高生たちが 悲鳴を上げて逃げ出し

店員が スハを取り押さえる

『助けて~ 殺されるよ~』

薄ら笑いを浮かべ ジュングクは初めて声に出して助けを求めた

その頃ヘソンは スタンガンとバットを握り締めて寝ようとしていた

微かな物音も気になり 眠ることができない

そこへ 先日の警察官から着信が…!

スハが 人を殴って逮捕されたという

『被害者は?』

『処罰を求めないと言って帰りました

出所後なので関わりたくないと』

それでも 暴行したことは確かなので 保証人なしでは帰せないという

『…被害者の名前は?』

『ミン・ジュングクです』

ヘソンは 怯える自分を励まし 現場の映像を確認させてもらう

目撃者によれば 被害者が無言のまま スハだけが一方的に話し

突然殴りかかったというのだ

<彼女に命を救われた! 俺の命はなかったも同然だ! 俺が守る!

いいか 手を出したらぶっ殺すぞ!!!>

映像の中のスハが叫ぶ声

ヘソンは思い出した

-*-*-*-*-*

裁判の後 怯える自分に向かって

声を失っていた幼い子が 初めて声を出した

「僕が… 守ってあげる」

「話せるじゃない あなた 名前は?」

「パク… スハです」

-*-*-*-*-*

自分の前に突然現れた“お邪魔虫”は パク・スハ

あの時の幼子だったのだ

いつもそばにいて いつも助けてくれた パク・スハだった…!

スハは 警察官を相手に ミン・ジュングクを捕まえろと喚いている

しかし今は ジュングクが被害者で スハが加害者だ

出所後 ボライティアに没頭しているジュングクは 警察の信頼を得ている

『そんなに言うなら証拠を持ってこいよ』

『証拠はあります! 僕は人の心が…』

『やめて!!!』

ヘソンが飛び込んできた

目で必死に訴えている

≪無駄よ 10年前のように笑い者になるわ

パク・スハ… あなたを思い出したわ≫


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