先週末、母と2人で「風立ちぬ」を見て来ました。
ジブリ作品は親子で見に行くという習慣がありまして…
土曜の午後という事でほぼ満席だったのですが、ほとんど大人。
子供の姿は全然無かったなー。
以下ネタバレありの感想。
宮崎駿の趣味が全開の作品。
空への憧れ、可愛い女の子、美しい風景。
二郎が作っていたのは戦闘機だけど、それ以前に「美しい飛行機」だった。
ただひたすらにそれだけを追求した10年間を描いた物語です。
空と女の子の美しさについては、今までの作品の延長線上にあるよね。
でも今作は実在の人物が主人公という事で、ストーリーは淡々としている。
(夢の中の描写はファンタジーだったけれど。飛行機の中の華やかさとか)
ハラハラドキドキするような展開はなくて、でも何故か惹き込まれたのは、
きっと二郎のひたむきさに打たれたからなんだと思います。
彼は、歴代ジブリ作品の男性陣の中で一番格好いいよ。
わたしの中でハウルを超えました。ハウルが格好いいのは結局キムタクだから。
二郎の格好よさは、恋人の菜穂子が喀血したとの報せを受けて、
泣きながら着替えて電車に飛び乗り、それでも仕事を続けたところに集約されていると思います。
もうね、今思い出しながら泣きそう。
その場面で零れる涙の描写も美しかった。
優しくて、寡黙で、良くも悪くも飛行機の設計に頭が一杯で、不器用で。
幼少期から青年期に場面が移ったところで声も庵野監督に変わるのですが、
最初は激しく違和感ありました。ちょっと笑っちゃうぐらい。
だけどその違和感はどんどん無くなって、
菜穂子の手を握ったまま「煙草吸いたい。ちょっと離しちゃダメ?」の台詞なんてもう完璧に可愛かった。
ただ、彼の菜穂子への愛情って少しズレているんですよね。
初めて出逢った時は彼女の侍女・お絹の事しか想っていない。
軽井沢で菜穂子と再会した時は、彼女に言われるまで会うのが2回目だって気付いていない。
山の療養所を抜け出して逢いに来てくれた彼女を、戻さないし看病もしない。
「僕と一緒に暮らそう」と言って一緒に暮らす割に、毎日仕事に没頭。家でも仕事。
薄情ととられても仕方ないかもしれないです。
でもね、菜穂子はきっと、二郎のそういうところが好きだったんじゃないかと思うんです。
「看病するために仕事を辞める!」っていう選択をする人もいるだろうけど、
二郎の頭にそれは無いし、菜穂子もそんなの望んでいなかったはず。
短いけれど二人で穏やかな時間を過ごし、死期を悟った彼女は誰にも告げずに姿を消します。
二郎の妹の加代は、そんな菜穂子を見て「かわいそう」と泣くのだけど…
治療をしないと死んでしまうと分かっていながらそんな生き方を決断した二人に、
横から口出しなんて出来ないんだよね。
結婚式のシーンは彼女の儚い美しさに涙が止まりませんでした。
(というか、終盤泣きっぱなしでした)
二郎は夢の中で、イタリアの飛行機制作者・カプローニ伯爵と出会います。
そこでカプローニ氏が言った言葉。
「創造的人生の持ち時間は10年だ。君の10年を力を尽くして生きなさい。」
個人的に、この作品で一番響いた言葉がこれです。
わたしは10年力を尽くしただろうか…全然尽くしていないわ…
と、激しく自己嫌悪に陥りました…。
起承転結がそれほどはっきりしていないし、二郎の人間性には欠陥もあるし、
「つまらなかった」っていう意見も結構目にするのです。
が、クリエイターの人には響くものがある作品なんじゃないのかなぁ。
彼ほどの覚悟を持って生きる事は出来るのか。
右も左も反戦も飛び越して、宮崎駿が描きたかったのは「美しいものを創るという過酷さ」だったのではないかと思います。
わたしは魔女の宅急便に次ぐ勢いで、好きです。
もう一度観に行きたい。もっと考えたい。
脇役も魅力があって、みんな良かったなぁ。
本庄の声が西島さんだっていう事に終わってから気付きました。すっかり忘れてた。
野村萬斎にも気付けなかったし…それほど没頭して見てたんですね。
あ、志田未来ちゃんの「にいにい様」は恐ろしく可愛いです。
「風立ちぬ」は否定じゃなくて完了形!