狐崎浜のFOXグループ | 夢と希望の水産業

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一般社団法人三陸海産再生プロジェクト 代表理事の木村隆之のブログ

三陸海産再生プロジェクトの広報室室長の中村暢宏です。



4月27日(金)に支援先の狐崎漁港のFOXグループに会いに行きました。訪問の目的は、FOXグループのメンバーから直接話しを伺い、支援金がどのように使われ、また現在漁がどのような状況かを肌で感じ、今後の支援のあり方に繋げていくことです。この訪問には竹谷理事も一緒です。



石巻から出発した我々は、カーブしかない山道を車で進んでいました。左手に万石浦を見ながら車を走らせましたが、水面は本当に穏やかで鏡のようです。山道を走っていると、竹谷理事が「おっ、あそこに鹿がいる!」と叫び声を上げました。野性の鹿です。左手の山の斜面に子連れの鹿数頭がこちらをじっと見つめていました。


都会の方は野生の鹿を見る機会はありません。自然が豊かだからこそ、鹿がいるわけですが、これから訪問する狐崎浜は、いったいどれくらいの自然が回りにあるのだろうか、海はどれくらい綺麗なんだろうかと期待で胸が膨らんできました。



合計8頭の鹿を見ながら約40分で狐崎漁港に到着。曇り空から小雨に変わっていました。車を降りると、ご支援先のFOXグループの皆様が港で待っていらっしゃいました。港を背にすぐ近くまで山がせり出しています。その山の頂上付近にも数頭の鹿がいました。本当に自然の豊かな漁港です。


驚いたのは風が大変強いのです。牡蠣保存用の冷凍庫を入れるコンテナハウスを見せていただきましたが、数日前の強風でコンテナがひっくり返ったというのですから、風の凄さが伝わります。


まとめ役の古内さんをはじめ6人全員が色黒で海の男そのものです。代表の平塚さんや古内さんの案内で、漁の状況を伺いましたが、一番の収入源の牡蠣が貝毒発生中で市場に出せず現金収入がないとか、津波で牡蠣棚の多くが流され、支援金で牡蠣をつるすロープを買うにも、品薄で値段も高騰しているため十分に準備できていない状況などうかがいました。支援金があっても物資がすぐには取り揃えられない状態で、「支援金即漁再開」になっていませんでした。


漁港でしばらく色々なお話を伺っていましたが、雨と風が強くなってきたため、漁港での取材は終了。車を10分ほど走らせ近くの宿にてFOXグループの皆様と打合せ兼懇親会を行いました。長テーブルに向き合って座っていましたが、お互い緊張した雰囲気に最初は場がかたかったものの、だんだんとお酒も入ってきて、彼らの漁に対する思い、現状への不安が出てきました。




夢と希望の水産業-懇親会




彼らが口々にするのは、「俺達は漁のプロ」ということです。平塚さんの「俺たちは本物のプロ、本物を獲ってくる。獲ることには自信がある!」「早く仕事をして汗をかきたい!」という言葉には支援金だけではどうにもならない部分もあり、もどかしさを感じました。


嬉しかったのは、「お酒を飲んで、これだけ楽しい場は震災以降初めてだ!」と口々に言われたことです。今後に繋がる具体的な支援方法は見出せませんでしたが、彼らの心にほんの少しだけでしょうが、火を灯せたようです。



翌日は、FOXグループの皆さんのお誘いで牡蠣棚まで船に乗せていただきました。船上で、大きな牡蠣を頂きましたが、海水だけの味付けですが、プルンと口の中で弾けます。何と、津波に流されずに残されていた3年ものの牡蠣だそうです。本当に美味でした!あっという間にぺロッと5つほど頂戴しました。



夢と希望の水産業-漁船



 牡蠣を頂いてから船を少し走らせ、仕掛けていた蟹カゴを引き上げますと、毛蟹の一種のトゲクリガニが中からごそごそ出てくるわ。合計30匹ほどで籠が一杯になりました。また、ホタテととれたての昆布も船上で頂戴しました。生昆布ですが、ぬめりが適当にあるのですが、甘みが濃くて口に含むと磯の香りがぷーんと漂ってきます。美味でした。ちなみにホタテと昆布は震災後に、少しでも収入になるようにと副業で始めたそうです。漁師さんなりに、収入を確保しようと今までトライしていなかったことにもチャレンジしています。



港にあがると、ドラム缶を半分切った大きな釜で先ほどの蟹を浜茹でしていただきまして、茹で上がったばかりの雄と雌の蟹を両方頂きました。海水で茹で上げただけですが、味付けもいらない蟹の味は今まで頂いた蟹の中で一番おいしく感じました。雄より小ぶりですが雌が美味ですね。あかっこ?という卵が雌にはタップリ付いていて、これがまた美味しいのです。やっぱり蟹はスーパーで買ったものではなくて、浜で食べるのが一番です。この新鮮な味をどうやって会員の皆様にお届けするのか、あるいはこの場所に会員様をお連れして召し上がっていただくことで熱烈なファンになっていただけると感じました。



夢と希望の水産業-カニ


お腹も満足になったところで、時間が来てしまい漁師さんとお別れの時間です。FOXグループの皆様と握手をして狐崎漁港を後にしました。帰り際に、阿部さんが「あの家(港の目の前にあるご自宅です)今改築中なんだけど、治ったら夏家族で遊びにきてくれやー」という言葉に、たった二日のご縁でしたが、彼らも我々に気を許してくれたのでしょう。現地に足を運び、語り、そして誇りとする漁の体験を通じて、私も彼らのためにがんばるぞ!と気合が入りました。


まとめですが、FOXグループの皆様の漁の現実、海産物の美味しさが伝わりましたでしょうか?
支援金によって少しずつですが、彼らの漁も再生しつつあります。阿部さん曰く「津波で牡蠣棚の海の底が全部洗われて、牡蠣が育つには最高の状態なんです。」


また「牡蠣は海に入れておけば、あとは海が育ててくれるんだ。」と。この言葉からは豊かな自然に囲まれた海には魚や蟹はとっくに戻ってきているのが伝わります。海は確実に蘇っています。津波でさえ海は自然の循環の中で、前向きに捉えているようです。


今後は、会員の皆様にはあの美味しさをどうやってお届けするのか、あるいは我々が体験した漁師船上ツアーを会員の皆様にも体験していただくためにはどうしたらよいかを理事メンバーと論議していきたいと思います。


つたないレポートですが、最後まで読んで下さいましてありがとうございました。