◆折込広告の急減は広告主の環境の激変が原因である。その要因は① 用紙代の値上げ ② 消費の冷え込み ③ 流通再編による小売業態の変化 等である。そしてイノベーション進化による新しいライバルの出現も忘れてはならない。その主なものとして注目しているのは ① リクルートのタウンマーケット ② 郵政のインフォプラス ③ 凸版Shufoo!電子チラシ の3つである。タウンマーケットは1月16日から川崎・横浜地区へ大きくエリアを拡大。郵政はその特性を生かし、オートロックの高層を狙う。電子チラシは地上波デジタル化に伴い、テレビ機に印刷専用ボタンまで付けるという。これらのことも大変気になることだが、もっと基本的な2つの点で克服すべき難問がある。

◆ <1>2008年12月号の「選択」(量より質を重視した有料月間情報誌)に驚くべき記事が掲載された。広告宣伝費日本一のトヨタが新聞広告のコストカットを目指した電通との交渉の中で、ABC調査を問題化したというのだ。新聞広告はもとより折込広告もABC基準で、その配布数・料金も決定されており、その最大のクライアントが新聞に伴う広告基準に疑問を持ったということである。しかもその指摘を受けたABCの見解は、基準が「グレーな実態」だと認めてしまったというのだ。既に新聞の紙面広告では、大幅なダンピングもなされていることも報じられており、広告宣伝費日本一のトヨタがABCではなく、ビデオリサーチの調査を活用しようとしていることは、2位以下のクライアントにも重大な行動の変化を促すことになると予想できる。この重大事への業界の対応はまだ目に見えてこない。

◆ <2>20年以上担当員をやっていて、特に地方にいる時感じていたことだが、「新聞の紙面広告と折込広告の境界線はどこにあるのか」という問題がある。地方では大企業も少なく、広告主の数・広告量も少ない。その為、地方紙は自社系折込広告社を持ち、自社の新聞広告部と棲み分け調整し、折込配布まで操作する。これは地方紙に著しい。だが新聞への広告がこれほど急減・急変していくと、全国紙も例外でなくなる。現に、題字を入れ、広告増頁として、折込ではなく本紙として取り扱う新聞広告まである。「新聞広告の冷え込みは、新聞広告と折込広告の境界線を変える」可能性が高い。しかも首都圏の折込広告代理店は新聞社の資本系列にある。「蛸が自分の足を食う」現象が出てこないか。これも業界の明確な対応が見えない。

◆以上2点。急激な変化の場面にあって、業界に携わる人達にこの点を特に留意していただき、解決への行動を促すものである。