【読書】「音楽史を変えた5つの発明」 | リンパ腫&エトセトラ

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2011年5月、胃とその周辺に腫瘍が見つかり、血液のがんの一種、悪性リンパ腫と診断されました。これまでの経過をまとめながら、これからの治療生活について書きます。気に入った音楽やアート、職場に近い銀座のランチ情報も取り上げてみたいと思ってます。

読書は、基本的に雑食動物です。
ジャンルを問わず、いろんな本を読み漁ります。
でも、読んだそばから忘れます。謙遜で言ってるわけではありません。
残念ながら、掛け値なしに忘れるので、あまり血や肉にはなっていないのです。

▼図書館利用に徹する
長いこと自腹で本を購入していて、書籍代は経済的にとても負担でした。
一カ月で結構な額、買ってました。
ある読書ブログを読んでいたら、その人は大変な読書家なのですが、図書館一辺倒の人で、新刊ベストセラーは数年後に読みますと宣言していました。

これを知ってなるほどと思い、3-4年前ぐらいからでしょうか、なるべく本は図書館から借りることにしました。
僕の住んでいる市の場合、ネット申し込みで市内の全図書館から本を取り寄せることができます。直木賞を受賞したばかりの新刊本など人気の本は図書館すべてを加えると40-50冊とか、たくさん購入してありますが、予約待ちの順番は半端な数ではありません。

例えば、数日前のベストスリーと予約件数はこんな感じです。
第一位 東野圭吾「マスカレードホテル」     1944
第二位 東野圭吾「麒麟の翼」           1819
第三位 東川篤哉「謎解きはディナーの後で」  1749

予約件数が1000を超えるのはさすがに少ないですが、人気本ですと500人待ちはざらです。これが貸し出し期間2週間で回っていくわけですので、どれだけ待つか想像も付きません。

湊かなえさんの「告白」、借りるまで半年ではきかなかったように記憶しています。
そんなだったら買えばいいのにと思われるでしょうが、禁煙のタバコと同じです。
1本吸ったら命取り。必死に我慢するようにしています。

人気のない「お堅い」本でも新聞の書評に載ったりすると、最低でも30-50人の予約待ちになります。
これなら早く回ってくるかと言うと、実はそういう本は市内全図書館でもほんの2-3冊しか購入していないので、これまたかなり待つことになります。

僕は、新聞の書評欄を読んで、面白そうな本は貸出予約を入れ、順番が回ってくるのを気長に待つことにしています。順番が来るまでは、開架式の本棚から借りて間をつなぎます。どうにも待ちきれない本は、最後の手段で購入します。


 

「音楽史を変えた5つの発明」
ハワード・グッドール著
松村 哲也 訳
白水社

この本も新聞の書評欄で読んで、面白そうなので予約を入れ、数カ月して手にしました。ちょうど、ピアノとかバイオリンとか、どのような経緯で誕生したのかなと疑問がわいた頃、この本を知ったものでして。

毎年、年末になるとテレビや報道各社が、今年の10大ニュースなんてのをやると思います。その年の国内、海外のビックニュース番付けです。
一位、二位あたりは衆目の一致するところですが、三位あたりから後は結構、報道機関によって割れるものです。

この本は、音楽の歴史の中で重大事件「ベスト5」を絞り込んで、解説しています。原著は「BIG BANGS」。音楽の歴史の中で、宇宙が始まる第一歩、ビッグバンに相当する画期的な出来事の話です。

この本の著者がチョイスした画期的な出来事とは、こうです。
1.記譜法の発明
  音楽を楽譜に記録することです。11世紀初めにイタリアの修道士が発明したそうです。
2.オペラの発明 
  17世紀初頭、イタリアのモンテヴェルディが作曲した「オルフェオ」が初のオペラです。
3.平均律の発明 
  ハ長調といった調律のこと。バッハの「平均律クラヴィーア曲集」が歴史的にいかに画期的な曲なのかという話です。
4.ピアノの発明
  この楽器は徐々に改良を加えて発展してきた楽器ではなく、蒸気機関の発明のように突然、生まれたそうです。発明したのは、18世紀初頭、フィレンツェのメディチ家お抱え職人、バルトロメオ・クリストフォリという人です。

こんな人です。
 
ピアノと言うのはチェンバロなんかとはぜんぜん違う楽器なんだそうです。
著者は、ピアノの誕生を、ほかの楽器とは比較にならないくらい重要な意味があったと主張しています。

5.録音技術の発明
  エジソンが発明しました。これを気に音楽を聴く、演奏するということが、いかに劇的に変化したかが語られます。

それぞれの項目とも、とても興味深い話のてんこ盛りです。
ただ、このベスト5、記譜と録音は文句なしでしょう。続いて平均律が続くかな。
ここまではいいとして、次にくるのがオペラとピアノ。これは、どうでしょう。

この二つが画期的なことは、読むとよく分かるのですが、これを入れるくらいなら、もっと入れるべき出来事があるんじゃないか、あれを入れたら、これを入れたら・・・。

そんな想像が膨らみます。
そのヒントは、実は著者自身がこの本の中で歴史の一コマとしていくつも書いています。

例えば、西洋音楽がアフリカなど非西洋の音楽と出会った時の出来事、この出会いを通じて米国で生まれたブルースやジャズなどの音楽について、著者は大きな共感を込めて書いています。これなんて、ビック5に入れたらどうかなあとか、いくつか思いつきました。

そう、この本には、ベスト5に入れたほうがいいと思う「読者自身のベスト5」について、妄想を膨らませながら読むという楽しみ方があるんです。

著者は作曲家のようです。まあ、音楽は誰でもそうですが、偏愛の世界です。書いているのが音楽家だからなおのことでしょう。読んでいて、ああ、この人の好みで書いてるな、というところ随所にあります。

だから、思うんです。ベスト5を音楽好きの作家とか経済学者とかが選んだらどうなるだろ、とか。

平均律の章など、ちょっと難しいところもありますが、とても刺激的な1冊でした。