朝鮮学校への「補助金裁判」判決 不当性要約3 | 星州李氏の京都アジョシ

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この判決の不当性は次の3点に要約できる。


①大阪府による補助金とは、元をただせば税金である。朝鮮籍・韓国籍の在日朝鮮人は、日本社会における永住者として、一般の「日本国民」と同様にありとあらゆる税金を負担している。その永住資格は、植民地支配の歴史の中で日本に渡り、定住するにいたったという、歴史に由来する権利でもある。それにもかかわらず、参政権を認められずに税金の使い道について議論できないことがそもそもおかしい上に、税金の一部が教育費として還元される道筋までもが閉ざされるのは不当である。この問題について「日本国民の血税を朝鮮学校に振り向けることに反対する!」というようなセンセーショナルな主張がなされがちだが、在日朝鮮人に限らず、永住資格を持つ在日外国人が、消費税のような間接税はもちろん、所得税、固定資産税などの直接税を「日本国民」と同様に負担しているという事実を見過ごすべきではない。


②大阪府が補助金支給の要件として、「学習指導要領に準じた教育」を掲げていることが不当である。朝鮮学校のような外国人学校は、多くの場合、学校教育法第一条に定める「一条校」ではなく、私立各種学校として位置付けられている。「一条校」ではない私立各種学校は、学校制度体系上において不安定で周縁的な地位に止まることを引き換えとして、管理運営体制や教育内容をめぐる自由を認められてきた。私立学校法第5条の規定も、行政が私立各種学校の教育内容に立ち入ることを否定している。それにもかかわらず、「一条校」を対象として想定する学習指導要領を持ち出して、「学習指導要領に準じた教育」をしなければ補助金を支給しないという対応は、不利益措置を媒介とした間接的強要である、しかも、「学習指導要領に準じた教育」という時の「準じた」は恣意的な解釈の余地が大きい。20年近くにわたって継続してきた補助金支給を、このような条件により中止することは、行政の継続性を損なうものであり、行政への信頼を失わせる。さらに、原理的には、朝鮮学校のみならず、地方公共団体からの補助金を不可欠とする大多数の私立学校の存立基盤をも脅かすものとなるだろう。


③大阪府は補助金を支給しない要件として、「公安調査庁による調査の対象となっている団体」とのかかわりを挙げている。これは実質的に朝鮮総連を狙い撃ちとした規定である。日本と朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)という国vs国の対立関係。それに由来する不信や敵意、いわば「公安警察」のロジックを、教育の場にそのまま持ち込むべきではない。北朝鮮の政策に問題があるとしても、それはあくまでも外交交渉や、国連の人権関係委員会などへの働きかけを通じて解決に努めるべきである。日本の批准した「子どもの権利条約」第30条においても、民族的・宗教的・言語的マイノリティの子どもたちが自己のルーツを確かめ、自らの文化や信仰や言語を守る権利を否定されてはならないと定めている。大阪府の定めた「大阪府在日外国人施策に関する指針」においても、「在日外国人学校の児童・生徒への嫌がらせや暴言・暴行などの事象」を防がなくてはならないと記している。今回の補助金支給停止は、大阪府による「児童・生徒への嫌がらせ」そのものであり、大阪地裁の判決はこれを追認し、正当化するものである。
 今日取り沙汰されている共謀罪をめぐる問題にもつながるが、実際の犯罪的行為によってではなく、思想や信条によって一定の人びとを「敵性国民」「犯罪予備軍」とみなして人権を制限するのは不当である。外交上においては不信や敵意を拭うことが容易ではないとしても、子どもたちは憎しみの連鎖からできるかぎり自由であるべきである。その原理を認めず、「公安警察」のロジックで補助金支給の要件を定めるならば、まず「子どもの権利条約」の批准を公に取り消す必要がある。

(Takeshi Komagomeさんのfbより)