エターナル・サンシャイン | In Hamony Today サムイを夢見る日々

エターナル・サンシャイン

記憶なんて所詮曖昧な物。
解釈次第でどうとも受け止められるのだ。
現実と非現実を行き来する展開。一度観ただけでは、全て正しく解釈しているとは思えないのですが、「記憶」の中が舞台だけに「本当の真実」が何であったのかなんて、誰にもわからないということで。雰囲気で眺めている部分も多いのですが、それでも感じるところのある映画でした。

記憶消去・・・というギミックを使っているため、突拍子もない奇妙な映画(カウフマン的な?)とも捉えられますが、実態はロマンティックなラブストーリー。少なくとも、僕はそう受け止めています。記憶消去のためのクリニックが気軽に存在するくらいで、現代の何の変哲もないアメリカが舞台となっています。ストレートな恋愛映画やSF映画では、決してありません。

おおよその物語:
主人公ジョエル(ジム・キャリー)は、大ケンカした恋人(ケイト・ウインスレット)が、自分と付き合った記憶を消去したことを知る。訪ねた先では、自分のことを全て忘れ去り、新しい恋人と仲睦まじく過ごす元彼女。絶望の中、自暴自棄になって自分も追随、相手の記憶をすべて抹消することにする・・・

記憶を消すためには、相手に対する苦い記憶を吐き出し、思い出の写真・モノ・場所・セリフを元に系図を作り、その記憶図・恋の終わりの地点から、出会いまでを遡る必要があるのだ。しかし、その過程で、彼女と過ごしたなんでもない日常を、喜びとともに思い出したとしたら?相手に対する不快感や怒りが強くなっていた時期から、過去へ遡ることによって得られるのは、最初に抱いていた淡い感情、強い気持ち・強い愛。忘れかけていたものを思い出した主人公は、記憶消去の作業を中断させるために、自身の脳の中で逃亡を始める。




観た人の評価が極端に分かれているようですね。それも理解できます。自分にしても今も部分的に?を抱えている箇所があったりと、すっきりカタルシスが得難いのは確かですから。そして、さまざまな場面で訪れるキテレツな行動や出来事が、素直に物語を受け止め・感動するというパターンを許してくれないのです。

でも、僕的には、恋愛を(記憶という仕掛けを使って)逆から描いたとってもロマンティックで素敵な物語に感じました。こんな話、ストレートに描かれたって、きっと「なんだよ、コレ」と小ばかにしてしまうかもしれません。ギミックと奇妙さが入り混じってこそ。そして、解釈を云々するのではなく、解釈なんてどーでもいいじゃん!とも思ってしまう。ちょこちょこと散りばめられている「キテレツさ」もまたスパイスになっています。

遡る(記憶消去)というギミックも、仕掛けのための仕掛けではなく、あくまでも「お互いを罵りあうようになってしまった、倦怠期のカップルが、それまでどう過ごしてきたのかを追体験する」ことによって、恋する気持ちとか、感情とか甦らせるところにポイントがあるため、途中からは随分自然に受け止められました。
登場人物はみんなが一癖二癖ある人ばかり。最初に登場したときのイメージのままではなく、隠れた物語を抱えていたり、隠れた顔を持っていたり。
第一印象と異なる顔が見えてくるのは、実人生といっしょ。表層的ではなく、想いを抱えている人々にみえてきます。

冒頭から、ジョエルの思い出(記憶)と現実とがクロスオーバーして、あっという間に釘付けになってしまいます。途中からは「どれが現実でどれが脳内?」と考えながらみていても、結局は進行についていく中でめくるめく迷宮に連れ出される感じでした。

役者陣はどれもよい中で、ケイト・ウィンスレットが秀逸でした。今回は演技派の女優としてではなく、揺れ動く情熱的な女性「クレメンタイン」本人として、確かな実感を感じてしまいました。

脚本 チャーリー・カウフマン
監督 ミシェル・ゴンドリー
出演 ジム・キャリー ケイト・ウィンスレット イライジャ・ウッド キルスティン・ダンスト マーク・ラファロ
公式サイト: http://www.eternalsunshine.jp/