「アリースター誕生」2018年 アメリカ

 

ブラッドリー・クーパー監督の「アリースター誕生」は、クイーンのフレディ・マーキュリーを描いた伝記映画「ボヘミアン・ラプソディ」と並ぶ心に響くいい映画だった。

 

この同じタイミングで音楽がメインとなる映画が二つ並んでしまったことは、「アリー/スター誕生」にとって、損なことだったのではないか。もしかしたら、「アリー/スター誕生」に足を運ぶつもりの映画ファンも、「ボヘミアン・ラプソディ」を観た後では『まあ・・・、クイーンの映画を観たから同系列のはイイヤ!』と、思った人も多かったのでは? 実はぼく自身がそうだった。


でも、「アリー/スター誕生」の予告編で聞いたギターの音に懐かしさを感じ、さらにその音が心と体に染みわたるように気持ちがよかったので、『ギターの音を聞くためだけでもいいかな?』くらいの軽い気持ちで映画を観た。


映画では特別な音楽の才能を持つもの同士が、恋人になる悲劇も描いている。特に男性側のさびしい現実を感じた。世界的ロックスターである自分が、世にどんどん出ていく恋人の姿を目で追いつつ、酒に溺れ人生を落ちていき、いつのまにか過去の人となる。彼女にとって周りにとって邪魔者のような存在に陥る。自分のプライドが自己を破壊していく。軽い気持ちでみた映画が、観終わった後ではまた、自分でもあきれるくらい泣いていた。
 

当映画はレディ・ガガの初主演だという。
2013年に『マチェーテ・キルズ』で映画デビューし、女優業に進出したガガ。出演作は他に4本ある。

ぼくにとって彼女の印象は、奇抜なファッションが好きな目立ちたがりのポップス歌手というイメージで正直、興味の薄い歌手だった。この映画では、そんな奇抜な飾り込みのレディ・ガガは封印し、彼女自身の素で勝負している。ぼくはレディ・ガガという歌手を見直した。「アリー/スター誕生」での彼女の歌はすばらしい。そして彼女自身も、とても綺麗で輝いて見える瞬間を感じた。


1月13日、ガガは放送映画批評家協会賞授賞式で見事主演女優賞を獲得した。アリーを演じたガガは、ゴールデングローブ賞でも主演女優賞にノミネートされていたが、惜しくもベテランのグレン・クローズ(『天才作家の妻 40年目の真実』)に敗れ、受賞を逃していた。ガガは受賞スピーチの初めに、同じ舞台上でやさしく見守るグレンに対し、「うちのママがグレンと友達なの。だから今夜、あなたが受賞したことはとってもうれしいわ」と同時受賞となったグレンを祝福したという。
 

グレンもまた受賞スピーチで、「世間は女優同士を競わせがちだが、わたしたちはお互いを祝福しあっている」と言い、ガガとの同時受賞をうれしく思うとコメントした。

参照:レディー・ガガ、放送映画批評家協会賞主演女優賞を受賞で喜びの涙
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