今日は、先日ブログでお話しした「トニックウォーター」の比較試飲レポートをアメブロにアップすることにします。

先日、7月から正式に発売されるプレミア・トニックウォーター「フィーバーツリー」の試飲会に行ってきました。会場にはホテル系のバーテンダーを中心に70名前後が集まっており、ジントニックを中心としたトニックの人気を物語っているかと思います。

この原稿はFWJに書くか、アメブロに書くかを迷っていたのですが、やはり自分のスタンスとしてはどこかが出した新商品を誉めそやすことはどうも苦手ですし、特定の商品をこき下ろすことは、さらに性に合いません。

「こんな素晴らしいトニックウォーターが出ました」と書くなら他の人がやるでしょうし、いいところも悪いところも含めて水平試飲となるとFWJには合わないかな・・・と考えて、アメブロの方に書きました。

ま、前置きはそのくらいにして。

「辛口」と「甘口」の違いがはっきり分かれる・・・というか、ウィルキンソンのむせるほど挑戦的な(笑)辛口と「その他」の味の違いがあまりにもはっきりしているジンジャーエールはバーでも2種類置くのが普通ですが、トニックウォーターに関しては1種類と言うバーが圧倒的に多いはずです。19世紀、イギリスがインドを植民地にしたときの亜熱帯気候に不慣れな英軍が止渇飲料としてジントニックが広まったわけですから、かなり歴史はあるのですが、日本のバーで「トニックのブランドへのこだわり」というのは聞いたことがありません。今回フィーバーツリーの試飲会に出席するということで、せっかくだからこの際各メーカーのトニックに味の違いがあるのか、あるとしたらどのくらい違うのかを調べようと考え、仕事帰りに見かける酒屋を探して、あるだけの種類を買ってきました。

銘柄はウィルキンソン/カナダドライ/シュエップス(日本版)/フィーバーツリー/Q/プライベートブランド(都合で名前は伏せます)の計6種類。試験方法は最初スニフターで単独で香りと味を見た後、ジンを加えてもう一回チェックし、最後に氷とライムを加えたジントニックにして比べて見ました。

結論として、味の違いはそこそこあります。ただ、水平試飲した結果として特別な幾つかの銘柄を除くと、バーに行って銘柄指定をするほどではないのかな?とも感じました。1ブランドを除いては、どれもそこそこ美味しいですし。

それでは、わかりやすいように各ブランド別に筆者の独断と偏見で特徴を書いていきます。

《シュエップス(日本版)》
ここで日本版と書いたのは、本国(イギリス)版はキナが入っており、日本の物とは異なっているからです。英国版は一度飲んだ記憶があり、苦みがしっかりしていた記憶がありますが、今回の試飲には入っていません。さて、日本版シュエップスですが、生(き)で口にすると、けっこう酸味が前面に出た造りになっています。香り的には今回比較した6本のなかでは一番おとなしいですが、ジントニックにしたときにはスッキリ感をつよく感じました。
苦みに関してはジントニックにしたときはあまり感じませんでしたが、炭酸が抜けた後は包み込むような苦みを感じました。

《カナダドライ》
やや薬っぽい香りで、トニックなんですがジンジャー(生姜)系の香りも感じます。生で口に含むと甘さが後に残ります。カナダドライの特徴は香りの持続性と主張の強さで、ジントニックにしたときもジンやライムに負けることなく、けっこうトニックが主張します。リキュールやスピリッツの場合「人工香料不使用」は1つの「格」になるのですが、トニックの場合そもそも「キナ皮」という熱病(マラリア)の薬を加えた清涼飲料ですから、薬っぽいというのは、単純に評価を下げる基準にはなりません。むしろ口にしたとき「あぁ、いつもバーで頼んだ時に出てくるのは、この味だよな」と「安心」できる味で、カナダドライはジントニックにしても銘柄が分かりやすいと思います。好き嫌いの分かれる苦っぽさはありますが「定番」としての力量は備えているように思います。

《ウヰルキンソン》
香りは弱め、苦みも一番柔らかく、シュエップスより苦くありません。ウィルキンソンで特筆すべきはライムとの相性で、これが入らないとジントニックにしてもいささか物足りなさを感じるのですが、ライムを多めに入れてピール(皮片)を入れると、まずまず、というかかなりいけます。他のトニックで作ったジントニックより、女性なら気に入りそうな味です。男女で来た客にジントニックの作り分けをしてみるのも一興かもしれません。

《プライベート・ブランド》
香りはおとなしめで、生では少し青っぽい物を感じます。炭酸は6本のなかで一番強く感じました。100円で他の倍以上(500ml)入っているし、ここまでの感想ではブランド名も入れる予定だったのですが、ジンを加えたところで化学的な嫌味が残ることに気付いたため、本品に限ってブランド名を出していません。これでジントニックを出されたら、とくに後味の点で、かなりキビシイと思います。

《フィーバーツリー》
「熱病(フィーバー)除けの木(ツリー)」というブランド名からわかるように、キナを使用していることを前面に出した、最近脚光を浴びているプレミアム・トニックの先駆けとなったブランドです。コンゴ産のキニーネを始め、シシリー島のレモンオイル、ビターオレンジを使用しているということで、使用ボタニカル(8種類)の一部とはいえ原材料とその産地を明示していることにも好感が持てます。天然素材を使用しているため賞味期限も14か月と短いものの、価格も筆者が購入したのは168円と、さほど高くはありません。使用素材には入っていない筈ですがリンゴに近い香りがします。味の個性としてはむしろ抑え目で、マネージングディレクターのTim Warrillow氏から試飲会で伺ったところでは、最近バーで脚光を浴びているプレミア系のジンの特徴を生かせるよう、個性は控えめにしている、ということでした。日本的な・・・というか清涼飲料水系のカナダドライに対して、全然関連性は無いのですがフランス的というか、フレンチ・レモネードのしっかり、どっしりした飲み口に共通するものを感じました。そのせいか、これを試飲しているときに無性に生ハムが食べたくなって、幸い自宅にあった切り落としをリッツに載せたものを試飲の中休みに食べたのですが、やはりよく合いました。

《Qトニック》
268円(筆者購入時)という、他の3倍近い値段のプレミア・トニックです。味から説明すると香りは少し弱めですが、泡のキメは一番細かく、ジントニックにしたときはいささか素っ気なささえ感じます。おそらく、こちらもフィーバーツリー同様、プレミア系のジンと合わせることを想定してフレーバリングを控えめにしているものと思われますが、生で飲むと包み込むように感じられた苦みが、ジントニックにすると最初は強く感じられなかった苦みが徐々に「ズドーン」という感じで重みを主張してきます。19世紀のインドで英軍兵士に飲まれていたのは、こんな味か・・・と想像するような味です。いや、根拠はないんですが直感で(笑)。

で、21世紀的には、1杯1500円はしそうな高級なバーでこれを出されたら「おぉっさすが」とうなりそうな気がします。カナダドライのジントニックのような「今風」清涼飲料の概念と19世紀の欧州の人の「爽やかさ」は違うようで、インドの英軍がキナを効かせたジントニックなら、アルジェリア駐留のフランス軍が止渇飲料としたのがパスティスやアブサンの水割りだった・・・そんなことを彷彿とさせる味でした。

以上でレポートは終わりです。ウィルキンソン以外のトニックもライムとの相性はいいので、オシャレなカフェみたいなところでコロナのようにライムの薄切りを瓶口に差して出すような飲み方があってもいいような気もします。試飲中に写真も何枚か撮ったんですが、以前、アメブロで被災地ボランティアの写真をアップしたときは30分近くかかったので、今回はアップしておりません。が、掲載した方が比較試飲の様子も分かりやすいと思うので、気が向いたらアップしようと思ってます。$トワイライト・パープルのブログ-手前からScw/FT/Q/CD/PB。
$トワイライト・パープルのブログ-中休み中。グラス内の緑はライムのピール