遺産から葬儀費用を支出することは認められるか | 川崎市宮前区の相続・遺言・家族信託・終活の相談室 雪渕行政書士事務所

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介護離職を経験して復活した終活サポーター・行政書士の雪渕です

Q
 父が亡くなり、長男である私が喪主となり葬儀を行いました。葬儀費用として父の預金から200万円を引き出して使用しましたが、一部の相続人から葬儀費用の額について不満が出ています。遺産から葬儀費用を支払うことはできないのでしょうか。

A 

 葬儀費用を誰が負担するのかについては、次のように色々な考え方があります。
①喪主の負担とする説
②相続人の共同負担とする説
③相続財産の負担とする説
④条理慣習によるとする説
 このうちの①の考え方が有力です。

葬儀費用とは

 葬儀費用とは、一般に死者を弔うのに直接必要な葬式費用のことをいうものと解されています。葬儀場などで葬儀を行った場合の式場使用料その他のほか、僧侶に支払うお布施、戒名料などが含まれますが、墓石の建立費用や四十九日の法要に要する費用などは含まれません。


葬儀費用の負担者

 葬儀費用の負担者については、先に述べたとおり、①から④までの考え方があります。
 ①は、喪主すなわち葬儀を主催した者は、自己の債務として負担すべきであるというものです。
 ②は、葬儀費用は、相続に関する費用であるから、相続人が共同して負担すべきであるという考えによるものです。
 ③は、相続債務の1つとみる考え方です。
 ④は、遺産相続とは無関係なもので祭祀の承継の一場面と考えるものと思われます。
 ②と③の考え方は、民法306条3号および309条1項が葬儀費用について相続財産に対する先取特権(複数の債権者がいる場合、他の債権者に先立って自己(葬祭業者)の債権(葬儀費用)の弁済を受けることができる権利)を認めていたり、相続税法13条1項2号が相続の課税にあたり相続財産から葬儀費用の控除を認めていることを根拠にしてもいます。前記民法の考え方は、葬儀費用について特別の先取特権を認めることにより、葬儀が確実に行われるようにしたもので、社会政策上の配慮によるものにすぎないといえます。また、相続税法の規定は、課税上のものであり、誰が葬儀費用を負担すべきかについて定めるものではありません。
 葬祭業者との関係では、喪主となった者が葬祭場を使用する当事者となりますから、喪主が一時的に負担することは当然ですが、②ないし④の考え方によれば、相続人もしくは相続財産に対して、求償する
(葬儀費用の支払を求める)ことができることになります。
 しかし、葬儀をどのように行うかについて、相続人との間の意見の対立があるときは、葬儀費用の負担について、争いが生じることもあります。葬儀が死者を弔うために行われるものであることを考えると、どのような葬儀を行うかは喪主となった者が決めることができるとしたうえで、その費用は喪主が負担すべきものとするのがよいのではないでしょうか。ちなみに喪主の負担としたものに東京地裁昭和61年1月28日判決などがあります。


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