「言葉と光」


走りだしたら母の言葉がかき消されるかのようがむしゃらに走っていた。

トイレの裏へ向かうと、まださっきと同じ風景。

俺は息を切らしながら頭真っ白でその風景を見ている。


頭の中でなんて言えばいい?

考えても言葉が出ない。


不自然に立って居る俺に3人が、気付いた。


多分、血だらけの男は意識がもうろうとして片目で俺を見てる。

一人の男が俺の方へ目を鋭く唾を吐き向かってくる。


「何見てんだ?ちくったら殺すぞ!」


俺はなんて言葉を返せばいいか分からなかった。


やめろよの一言が出ない。
漫画や映画でかっこいいセリフとかよく言うが現実はそんな簡単じゃない。


シーンと静まりかえったムードで俺は何をしてんだよって自分に言う。

押さえてた男は、血だらけの男を蹴り俺の方へ向かってくる。


「お前なん年や?」


俺はすぐに乾いた口で2年と答える。


二人の男が俺に暴言を吐いてる。


「敬語つかえや」


「俺ら3年や。文句あるんかい?」


「もうええから、教室もどれや。」


一斉に二人から言葉が連鎖する。


俺 「でも、おかしいなって思って・・」


一人が俺の胸倉を掴み


「なにが?はぁ?」


「こいつはな、俺らの連れの自転車を壊して弁償代も持って来ねえから体で教えてんだよ」

「なめてるとおめえも一緒にすんぞ!」


「もういいから教室もどれや!」


一斉にズバズバとマンガントークで撃沈された。


俺は頭を上下に軽く振り、ゆっくり歩いて靴箱へ歩き出す。
後ろではさっきの続きが行われている。


なにも言えない自分にむかつき足を止め唇を噛み上を向いた。

太陽が眩しく顔の傷が痛む

上を向いたまま目をつぶり考える。


このままでいいのか?
違うだろ?
やられてるやつが死んだら俺はあの時助けていればって後悔しないのか?
違うだろう?
俺に誇れる物なんてないだろう?
喧嘩するのに理由はねんだろう?


口の中から鉄の味がする。


俺の中で信じれるのは新鮮な言葉でも難しい言葉でもない。
自分の言葉なんだ。


神なんていねえ、そう決めたのは俺自身。
信じれるのは自分だけ。


トイレへ走りだした。


俺は後ろを向いている男の頭目掛けてドロップキックをかました。
着地を失敗し尻餅をついたものの、慌ててすぐに立った。


血だらけの男を抑えてる男が驚いた顔で走って来た。


「なにすんだこらああああ」


飛び蹴りを食らわして来たが、俺は髪の毛を引っ張り顔面目掛けて
片手で何回も何回も顔面に拳を振り回した。

5発ぐらいで倒れこんだ。


もう一人が頭を抑え立とうとしていた。


俺は、すぐそいつの両耳をサッカーボールを触る感覚で掴み
顔面に膝を下ろし上げる感覚で膝蹴りをした。


俺 「すぐ倒れんなや、おらぁ立てや」


倒れてる二人を蹴り続けてる。


さっきまでいじめられてた男が、俺の後ろに抱きつき


「やめないよもう終わったよ、おい!終わったって」


俺は言葉がうまくないから暴力で表現する方法しかなかった。


倒れている一人のポケットから財布が見えていた。

俺は二人の財布を取った。


それを嫌な目で見ているいじめられっ子。

札だけ抜き俺はポケットに入れ込んだ。


いじめられっ子が俺を睨み口を開いた。


「そこまでしなくてもいいじゃん」


俺は興奮して震えながら言った。


俺 「金を取ろうが取られるか自分次第やろ?お前みたいなやつ見てると腹が立つ」


弱いくせに言い返してくる


「人のお金に手だしたらだめだよ。返してあげなよ」


俺「はぁ?お前頭おかしいんじゃねえの?人の金って札に名前書いてあるんか?」

またしても、懲りずに言い返してくる。


「そんなの屁理屈だよ。なんでもかんでも暴力振るって解決なんてしないよ」


俺「うるせえええええええ!おめーに何がわかんだよ。弱いくせに口だけだな」


「君達の方がよっぽど弱いよ。暴力が強ければ強いの?」


俺「うっせええええよくそが」


俺は頭に血が上っていじめられっ子の足を思いっきり蹴って顔面を1発殴った。

いじめられっ子は倒れてこんだ。


俺は頭の中で何してんだよ俺は?って思い歩いて行こうとしたら後ろから


「まだ話は終わってねええぞ!どこ行くんだよ!」


俺は後ろを振り返り走りいじめられっ子目掛けて飛び蹴りをした。


俺 「殺すぞおお!はぁはぁ」


「殺せるなら殺せば?君は間違ってる」


俺「喋るんじゃねええよ」


倒れてる血だけらけの口野郎をひたすら殴る蹴るを繰り返す俺。

頭の中でやってることはさっきまでのやつらと一緒じゃねえかって思ってる自分がいる。

いじめられっ子が痛みをこらえて何かを言った。
一言の大きな力強い拳が俺を沈めた。


「い・・いっつもいっつもそんな・・肩に力入れて疲れない?」


殴るのを止めて俺は無意識に涙が出ていた。
尻餅をつく様に崩れ落ち俺は泣いていた。
自分でも分かっていた。
人を傷つけて、自分も傷つけているって事を・・


「泣き虫なんだね。いてて、あ~君2年の聖史君だよね?」


俺「え?なんで?俺の名前を」


「だって有名人じゃん。」


俺は妹と母しか呼ばれた事がない名前を言われた。


「僕の紹介は後でね。まず僕を技術室に運んでくれないかな?」


「腰が抜けて立てないの。へへへ」


俺は笑っていた。
どのくらいぶりだろう?
こんな照れくさい感じで笑うの・・・・。


目の前の事でいつも一杯一杯だった。
暗闇のトンネルを歩き
今俺に少しの小さい光が手を差し伸べている。