卵のコレステロールは血管を丈夫にする

卵はコレステロールが多いからと敬遠する人もいるが、一日に一個~二個は食べたい食品である。病院食では心筋梗塞などの回復期の患者に、一日に卵一個を献立に入れるところが多い。これは適度にコレステロールを摂取することで、かえって血液のコレステロール過剰を防止してくれる働きがあるからだ。

人体に必要なコレステロールは、三分の一が食物から摂取され、残りが肝臓で合成されている。そこで、極端にコレステロールの摂取を制限すると、不足を補おうとかえって過剰なコレステロールが肝臓で合成されるのである。

また、卵に含まれるタンパク質は、必須アミノ酸のバランスが満点に近い。しかも、他のタンパク質で十分補給しにくいトリプトファンといったアミノ酸が十分に含まれている。

トリプトファンは、いらいらする気分を鎮め、落ち着いた気持ちにさせる効果も持っている。なお、牛乳にもトリプトファンが多いので、なかなか寝付けない場合、暖めた牛乳をゆっくり飲むと不眠にも有効である。

たかだか卵一個というかもしれないが、一個に含まれるタンパク質は5グラム程度である。また、卵には一緒に摂取したタンパク質の利用効率を高めてくれる働きがある。その結果、朝食に食べると、昼食前まで勉学の力などが落ちないという効用があるようだ。

アメリカで調査したところによると、朝食をトーストとジュース程度で済ませた子供と、さらに卵などのタンパク質を加えた朝食を摂った子供を比較した結果、卵を食べていない子供は、昼前に計算ミスや記憶力の低下が見られたのに、卵を加えた朝食を摂った子供はそれが少なかった。

なお、コレステロールには有用な働きがある。血管の弱いところを補強して破れないように保護するとか、赤血球の幕を保護してその寿命を長持ちさせるほか、女性ホルモンの材料として重要だ。また、ビタミンDの原料でもあり、さらに、腸で脂肪を乳化して消化液がうまく働くことができるようにする乳化剤となる胆汁酸の原料としてなど、多方面にわたって重要な働きをしているのである。

コレステロールは一時期、動脈硬化を引き起こす元凶のようにいわれたが、これは誤解であったことが判明している。これは、高血圧が長い期間続いて、血管が破れないように防御するため、動脈にコレステロールが粘り着いた結果、動脈硬化になったというわけである。

つまり、結果だけから、コレステロールが悪者にされたようだ。実際は動脈硬化はコレステロールが原因ではなく、高血圧が原因だったのである。