今回で、2-3月の区議会定例会で私が発言した2017年度予算に関する報告は終わりになります。

3月15日の議会最終日の本会議で討論した内容です。

動画は区議会ホームページ(3月15日の「予算特 討論・採決」というところ)から見られます。


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市民ふくしフォーラムとして、2017年度一般会計、国民健康保険事業会計、介護保険会計、後期高齢者医療会計予算に反対の立場から討論します。


今後、行政に求められる役割は何なのだろうか。厳しくなっていく財政、老朽化する公共施設など、課題はさまざまありますが、その中でも見失わずに持ち続けなければならない行政の役割は、住民が孤立せずに安心して暮らせる地域づくりなのではないかと私は考えます。そしてそれが、「行政の効率化が必要」という言葉のもとにないがしろにされている現状があるのではないかという懸念を持っています。


私は昨年末、大阪の釜ヶ崎という地域にある子どもの施設でボランティアをしてきました。釜ヶ崎は日雇い労働者の街です。今は高齢化して介護が必要になっている人もいたり、非正規で厳しい労働環境にある人、ひとり親の家庭、外国から来て慣れない日本社会の中で子育てやお仕事を頑張っている人など、様々な境遇の人がいて、こどもたちを取り巻く環境も厳しい面もあります。でも、この街で暮らす人たちは自分の持っている生活のしんどさを一人で抱え込まずに身近な周りの人に話せている。つらい時は誰かが支えてくれるんだという安心感と温かさのある街でした。


労働の問題や貧困問題、障害のある人を取り巻く厳しい環境、子育ての大変さ、介護の問題など、生活課題を抱える人は日本中どこの地域にもいますが、多くの場合は誰にも相談できず、自分だけで頑張ろうとしていて、困っていることは自分の胸にしまって、孤立してしまっています。一方でこども食堂をやりたいと思う人がたくさん出てきているように、ご近所に困っている人がいるなら支えたいと思っている人もたくさんいるはずなのに、なぜつながることができないのか。釜ヶ崎から帰ってきてからずっと考えていたのですが、その理由の一つ、行政があまりにも効率を求め、余白を切り捨ててきたからではないかと思い至りました。


練馬区は、今年度で出張所を廃止します。

かつては区内に17か所ある、身近な出張所に行けば対面で住民票を取ったりする中で自分の困りごとを解決するための行政のサービスを知ることもできました。今、出張所を廃止し、自動交付機も廃止して、コンビニ交付に切り替えても、住民票を発行するという本来業務は一見滞りなくできるでしょう。コンビニ交付以外にも郵便局や区民事務所で証明書は取れる。それで何か問題なのか、課題は顕在化しづらいかもしれません。でも、自分の生活の困りごとを抱え、もやもやした不安をどこに相談すればいいか分からない人の行き場所は失われてしまいます。区は、出張所の跡を地域包括支援センターなどにして身近な相談の場を作っていくのだといいますが、高齢者という枠組みには入らない人、自分の困りごとを話す場は地域包括支援センターではないと感じている人はどうなるでしょうか。出張所の廃止は、区民であればだれでもアクセスできるという幅広さ、余白を失うことです。


予算審査の中で私は、バリアフリーマップや清掃における戸別訪問収集、あしすとの事業防災カレッジの福祉事業所向け研修などは良い取り組みだと述べました。区の職員が手間を惜しまず現場を歩き、区民と対話し、ともに考え、課題を見つける。今ある施策では抜け落ちて困っている人、孤立している人の声を聴く。そうした地に足のついた取り組みをもっと広げていくべきだと考えるからです。


今回の予算審査の中ではまた、指定管理者に任せている現場のスタッフの処遇は事業者の責任だという区からの答弁がありました。もちろんルールとしてはそうでしょうけれど、施設の改修などの計画だけは区が立てて、現場で働いている人に与える影響を考慮しない姿勢、現場にいる人に対する想像力が働かないような姿勢は残念です。少なくとも指定管理導入施設を休館にする必要のある時は、可能な限り早い段階で事業者と協議するといった配慮のしくみは必要です。


行政の役割は、地域の人と人をつなげることなのではないかと、私は考えます。多様な課題を持つ区民一人ひとりに思いを馳せられること、委託しているものも含め、区民に近い現場で働く従事者の声にも耳を傾けた施策を作っていくという、もっと血の通った区政を目指すことを求めて、討論とします。