一般質問の内容の報告です。今回は生活保護について。


日野市で不適切な事務処理があったという問題が起きたのですが、これは特定の自治体、特定の職員の問題というよりも、生活保護制度が抱える課題と捉えていく必要があるのではないかという視点から質問をしました。

----------


(かとうぎ桜子)

生活保護についてうかがいます。


昨年、東京都日野市で生活保護事務に不適切な処理があったことが公表されました。日野市でケースワーカーをしていた職員が処理すべき書類を放置して、入院による基準の変更の漏れや、年金や就労の収入の認定漏れが起き、それによって生活保護費の支給漏れ、過払いが生じていたという問題です。

そのケースワーカーが今まで担当したことのある244世帯のうち150世帯に不適切処理の可能性があることが判明したとのことでした。


再発防止のため「日野市生活保護事務の適正化に関する第三者検討委員会」が立ち上げられ、今年3月には報告書 が出ています。この報告書には、問題が起こった要因や問題点が挙げられています。例えば事務処理の計画・進行管理が職員任せになっていたこと、現金等の管理のルールが不徹底だったこと、東京都の指導を十分に改善に生かせていなかったこと、1人のワーカーの担当世帯数が過重であったこと、研修体制が不十分であったことなどです。


生活保護を利用する世帯が増えており、それぞれの抱える生活課題もさまざまである中で、生活保護行政がどのような体制をとって対応をしていくかは、どの自治体にも共通する課題です。そこで、今回の日野市の問題から見えてくる課題を練馬区としてどうとらえて今後に生かしていくか、という観点で何点か伺います。


まず、今回の問題を練馬区としてはどうとらえているか、基本的な考えをうかがいます。


二点目に、担当世帯数について伺います。日野市では2015年度のケースワーカー1人あたりの担当世帯数が114世帯であり、1人のワーカーの担当数は80世帯が適当であるといわれているところから大幅に超過していることが事務処理の停滞の一因であると、報告書には書かれています。

練馬区でも1人あたりの担当世帯数は約110です。区は、高齢者世帯への対応に生活支援員を入れることでケースワーカーの業務量の分散をしていると説明していますが、生活保護世帯のその時々の生活状況の変化を確認し、滞りなく生活保護に関する事務を実施する点においては課題があるのではないでしょうか。日野市の事例を受け、改めて区の考えをお聞きします。


三点目に、事務処理の計画・進行管理について伺います。日野市では事務処理の進行管理が職員に任せきりになっていたことが不適切処理につながったという分析をしていますが、練馬区ではケースにかかわる事務処理の進行管理、職場としてのチェックやサポートの体制をどのようにとっているのかをお聞かせください。


四点目に、生活保護を利用している人からの相談体制について伺います。生活保護を利用されている方が、ケースワーカーに相談しても十分な対応をしてもらえない、事務処理が滞っているように感じるなど、担当ワーカー以外に相談・問い合わせしたい案件が生じた場合、練馬区ではどのような体制をとっているのか、またワーカー以外の連絡先について当事者にはどのようにお伝えしているのか、お聞かせください。


五点目に、東京都の指導検査の状況と区としての事務改善への活用について伺います。日野市の報告書では都の指導検査結果を全庁的に認識して業務を改善していく体制が不十分だった点も指摘されています。そこで、練馬区における近年の都からの指導検査の状況と、その内容をどう現場の業務に生かしているのかという体制についてお聞きします。



(福祉部長)

今回の日野市職員による生活保護事務の不適切な事務処理は、市の第三者委員会の報告書によると、組織的な管理監督ができていなかったことに加え、人員配置の不足、研修体制や情報管理体制に不備があったこと等が原因であったものとされています。


区では、日頃から組織的な事務のチェック体制を整え、職員への継続的な指導・研修の実施、個人情報の管理徹底等を行っており、適正に事務処理が行われています。


(※「組織的な事務のチェック体制」について具体的にはどういうことなのか、後で担当者に確認したところ、ケースワーカーと、ケースワーカーを指導する立場にある査察指導員とで、事務処理やいつ訪問するかなどの情報を共有するシステムを作っていることや、事務処理の時期を明確にするなどの体制をとっているということでした。)



次にケースワーカーの業務量についてです。

近年、高齢化の急速な進行や生活保護世帯の増加によりケースワーカーの業務量は年々増えています。さらに、新たな制度の導入や改正等により、ケースワーカーが担う役割も拡大しています。そこで区政改革計画(素案)では、自立に向けたきめ細かな支援を確実に実施できるよう、ケースワーカーをさらに増員することと致しました。あわせて、個々の世帯の事例検討を充実し、児童相談所やハローワーク等の関係機関と情報を共有するなど、職員の相談支援能力を高める取り組みを強化致します。

(※「新たな制度の導入や改正等」とは、生活保護法の改正により事務的にも新たな手続きが必要になったこと―例えば住宅扶助 の基準額が面積別に異なるようになったことなど―を指すとのことです。)


次に事務の進行管理についてです。
区では、定期的な事務処理も職員に任せきりとせず、定期的に、係長が訪問実績や面接状況の確認とあわせて、業務の進行状況を把握しています。


今後も組織的な進行管理を徹底し、事務処理を適切に行ってまいります。

次に受給者による相談についてです。

受給者が担当ケースワーカー以外に相談を希望する場合は、係長が相談に応じ、事案によっては所長が対応しています。また、希望する受給者には、練馬区保健福祉サービス苦情調整委員や行政相談の窓口を案内しています。


次に都の指導検査についてです。
過去には、保護開始時に扶養義務者の確認や、預貯金等を把握する調査について改善が求められました。

そのため、業務マニュアルを理解しやすいように改定するとともに、研修で重点課題として取り上げるなど迅速に改善致しました。

今後も、事務の改善、職員の育成に取り組み、生活保護事務を適正に執行してまいります。