6月6日、一般質問を行ないました。

テーマは、自殺対策、生活保護、災害対策、地域福祉と介護、の4点。順番にご報告します。4テーマなので、1テーマあたりの分量が多くなってしまうのですが…。



まずは自殺対策について。



自殺対策基本法の改正がされたのですが、国における自殺対策は超党派の国会議員で良い形で進められていると聞いています。その趣旨を活かし、区としての対策をさらに進めるべきという観点で質問しました。



以下、私の質問と行政からの答弁のあとに、この内容を受けて私が考えたことを書きます。

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(かとうぎ桜子)

自殺対策について伺います。


自殺対策基本法が改正され、この4月、施行されました。改正の中で特徴的な点を挙げますと、まず、基本理念として、「自殺対策は生きることの包括的な支援」であると書かれたということがあります。



自殺問題というと「亡くなった」という事実に目をむけがちで、いかに数を減らすかという点を重点に注目しがちかもしれませんが、自殺をなくしていくために必要なことは単に死なない状態にするというだけでは十分ではなく、生きていることがつらくなる要因の除去が必要である、生きるための支援が必要であるということでしょう。



また、自殺は多様で複合的な原因・背景を持つので、精神保健福祉的な観点からのみではない対策が必要で、保健、医療、福祉、教育、労働など関連施策との有機的な連携・総合的な実施が必要であるということも書かれています。



昨年の区議会で自殺対策について具体的にはどのような相談体制をとっているかという質問をした際、保健相談所での保健師による心の健康相談がそれにあたるという答弁がありました。こうしたメンタルケアはもちろん重要ですが、自殺対策はさらに包括的な視点からの対策が必要というのが、法の改正の趣旨であると考えます。



改正法の中ではまた、「学校は児童生徒に対し、かけがえのない個人としてともに尊重しあうこと、困難な事態や心理的負担を受けた場合の対処の仕方を身につけるための教育・啓発を行う」ということも書かれています。学校が児童生徒への「生きる支援」をするにあたり、区や教育委員会が行なうべきサポートも考えていかなければなりません。



そして「地方公共団体は自殺対策の総合的・効果的な実施のために実態把握や自殺対策のあり方の調査研究、検証、情報収集等を行う」、「地方公共団体は地域の状況に応じた施策を策定・実施する責務を有する」とされ、「市町村は自殺総合対策大綱や都道府県自殺対策計画、そして地域の実情を勘案して市町村自殺対策計画を定めるものとする」ということも書かれています。



つまり、自殺対策をより実効性のある「生きる支援」にしていくために、自治体に求められる役割が明確に示されたのが今回の法改正の特徴といえます。



次に、法改正の状況から、身近な地域に目を転じてみます。

特別区における自殺対策の取り組みを見ると、それぞれさまざまな工夫がされています。



まず、足立区は自殺対策において先駆的な取り組みをしてきていますし、新宿区では自殺防止の観点から「困りごと・悩みごと相談窓口一覧」という冊子を作っています。



荒川区では、若年層の自殺者の減少が見られないという問題意識をもって、2014年度から若年層への自殺予防相談事業を実施しており、電話や面接による相談を受けているほか、若年層を対象にした実態調査も実施して課題を分析しています。この事業はNPOに委託して実施していますが、財源はすべて東京都の補助金であるということです。



また、港区では2014年度、自殺対策推進計画を作っています。この中では、区内の自殺者の状況や傾向を分析し、それを踏まえた対策の計画を立てています。例えば、港区では自殺をされた方の中でも若年女性の場合は同居人がいる場合が多いという実態が見えたため家族への啓発を進めていくということや、物理的に自殺を防ぐために駅のホーム柵の設置を進めるなど、港区における自殺者の置かれた実態を検証し区としてやるべきことは何なのか、それはどの所管のどの事業でやるべきなのかを整理するという計画になっています。



また、板橋区ではこの5月に、区民ボランティアと東武鉄道のキャンペーンとの協働で、成増駅で啓発グッズを配布するというとりくみをしたそうです。



以上述べてきました法改正の状況や他の区の取り組みをふまえ、練馬区としての考え方をお聞きします。



まず、練馬区内の自殺の実態の分析について伺います。有効な対策をとるためにはまず、練馬区の実態を分析する必要がありますが、どのように進めていくか、考えをお聞かせください。



二点目に、計画策定について伺います。改正された自殺対策基本法の中で自治体の計画策定について記載されたことをふまえ、練馬区としても、メンタルケアにとどまらない包括的で全庁的な「区民への生きる支援」を進めるための計画づくりが必要であると考えますが、区の方針をお聞かせください。



三点目に、教育における取り組みについて伺います。改正された法の中で、学校における児童生徒への教育・啓発について触れられていますが、練馬区教育委員会としてはどのような体制をとり学校での取り組みを進めてバックアップしていくか、考えをお聞かせください。



四点目に区民や民間団体との連携について伺います。先に述べた板橋区の事例では、「こころの健康サポーター」という区民ボランティアが啓発にかかわっていらっしゃったそうです。練馬区でも例えばゲートキーパー研修を修了した区民に呼び掛けて継続的に自殺予防の取り組みに関わっていただくことはできるのではないでしょうか。また、鉄道会社などの民間団体・企業との連携での啓発も進めるべきではないかと考えますが、区の方針をお聞かせください。


(健康部長)

私から、自殺対策についてお答え致します。

はじめに、実態の分析についてです。

区では自殺者数について、男女別、年齢階級別の分類を行ない、毎年公表しています。今後は、国や東京都などで公表している統計データを活用し、より詳細な実態の分析を進めてまいります。

次に、自殺対策計画についてです。

今後、国の自殺総合対策大綱、東京都の計画が策定されます。これらの計画を勘案し、区の実情を踏まえて、計画策定に取り組んでまいります。

次に、区民や民間団体との連携についてです。

区では、民生委員などを対象に、ゲートキーパー研修を実施しています。修了したゲートキーパーは民生委員活動などの中で研修成果を生かしています。

また、自殺を予防するためには、啓発を充実することが重要です。鉄道事業者など民間団体と連携し、自殺対策強化月間におけるポスター掲示などの啓発に、引き続き取り組んでまいります。


(教育振興部長)

私から自殺を防ぐための教育における取り組みについてお答えします。

こどもが死を選ぶことはあってはならないことです。1人ひとりの子が自己肯定感を持ち、困難を乗り越える力を身につけられるよう、教育の質を向上させていきます。

そのため、各学校では教員同士の学びあいや校内研修の機会を設けるとともに、教育委員会では自殺の背景や自殺予防をテーマにした研修を新たに実施するなど、こどもの心の揺れを敏感に感じ取り、個に応じた適切な指導のできる教員の育成に努めていきます。

また、各学校に心のふれあい相談員等を配置し学校での相談体制を充実するほか、学校教育支援センターを中心とする関係機関のネットワークを築き、学校におけるこどもの悩みや不安への対応を支援していきます。


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ひとまず、今後、練馬区としてもより積極的に自殺予防対策に取り組んでいくという答弁があり、良かったと思います。

今後は、具体的にどう進めるのか、考えていければと思います。


ゲートキーパー研修は、区が説明するように民生委員さん等、すでに活動されている方が受講している場合、新たに啓発活動にかかわっていただくのはちょっと大変だろうと思います。民生委員さんやすでに地域で見守り活動などされている方々は、すでにとても忙しいと思いますので。だから、区が説明するように、研修内容は新たな活動へつなげるというよりは従来やってこられた活動の中で生かしていただくのが良いと思います。

一方で、自殺の問題に心を痛め、なにかできないかと考え、今はまだ具体的に何か活動しているわけではないけれどもまずはゲートキーパー研修を受講するに至ったという方がいらっしゃった場合、その方が研修受講後にそのお気持ちや学んだことを活かせるような場を作っていくことは工夫の余地があるのではないかと思います。


私の質問の中で例にあげた板橋区は鉄道会社と区民と連携して啓発をやっているわけですが、この意義は単に成増駅で啓発グッズを受け取った人に対しての効果があるだけではなくて、この活動を一緒にやった人たちの中でも改めて他人事ではない問題として考えるきっかけになるという意味があると思うからです。