(かとうぎ桜子)

犯罪被害者支援の中でも特に、性暴力の被害者支援についてうかがいます。




性犯罪に関しては、2014年から始まった法務省の「性犯罪の罰則に関する検討会 」を経て、現在、法制審議会 で刑法の見直しについての議論がされています。




審議会では強姦などの罪を起訴する際に被害者の告訴を必要とする「親告罪」の規定の廃止、罪の対象範囲の拡大、法定刑の引き上げなどが話し合われていると聞いていますが、性暴力被害の当事者や被害者支援をする団体からは、これを機に被害に遭った人を取り巻く環境の改善を求める声があがっています。




例えば、公訴時効の撤廃・停止について、配偶者間の性暴力への対応、こどもが被害にあった際の配慮、現行ではかなり厳しく問われている暴行脅迫要件の緩和・廃止についてなど、現在の法制審議会の中では十分に取り上げられていない問題への意見のほか、当事者支援や加害者の再犯防止対策、家族内や学校等での性暴力被害への取り組みの必要性など、刑法の範囲にとどまらない全般的・包括的な支援の必要性が提言されています。




私はこうした当事者・支援者による集まりに何度か参加しましたが、そこで、法制度を改正、あるいは新たに作っていくにあたってはまずは、法律の専門家だけで議論するのではなく、当事者の声を反映させるしくみを作ってほしいということが、多くの関係者の思いであると感じています。それは、性暴力被害にあうことが、その人のその後の日常生活や人生に大きな影響を与える問題だからです。




また、内閣府が2015年に行った「男女間における暴力に関する調査報告書 」によれば、無理やり性交をさせられた経験のある女性は6.5%となっています。ここには男性被害者は含まれていませんし、加害者が顔見知りであるため訴えることをためらって事件化していないケースなど、実際には警察で把握されるよりも多くの被害が起こっていると考えられます。




また、ねりま情報メール で届く安全・安心情報では頻繁にこどもを対象とした痴漢被害などの情報が届きますが、こどもを対象とした性被害についても潜在化したものも多数あり、被害者の心に深い傷を残すものとなります。

性被害は誰にも起こり得る問題として身近な自治体においても取り組む必要があり、被害者支援の情報提供を幅広く行っていくことが重要です。




練馬区の男女共同参画計画素案には、「性犯罪、ストーカー被害、セクシュアル・ハラスメント等、あらゆる暴力の防止に関する啓発活動に取り組む」とありますが、具体的にはどのように取り組むのでしょうか。

例えば区民向けには練馬区が例年実施している犯罪被害者週間の講演で性暴力被害の当事者の声を聞く機会を設けることや、こどもたちに向けて被害にあった場合の相談先の啓発をするなどの取り組みが必要と考えます。また、被害に遭って身近な場所で相談したいと思った時に、練馬区のどの相談窓口に行けばいいのか、区のホームページや「わたしの便利帳」などを見てもわかりづらいため、例えば区民相談などの既存の相談先についても「ここでは性暴力についての相談もできる」ということを明記して欲しいというご意見を、当事者の方からいただきました。




豊島区では性暴力被害に遭った人が情報を得られるスマートフォンのアプリ を開発しました。アプリでは、性暴力の相談を受けているワンストップセンターや民間の相談機関、警察の相談窓口、また区内の医療機関などの情報を調べることができます。こうした取り組みを参考に、相談できる窓口の一覧をホームページに載せることや、区内の医療機関との連携で、性暴力被害のケアができる婦人科、精神科、心療内科等の情報を発信したり、こどもが相談できる場の情報提供といったとりくみが有効ではないかと考えます。

また、性暴力被害は女性、男性、こども、セクシュアルマイノリティなど、どんな人にも起こり得るものですが、相談しづらいと感じてしまう方もいるとうかがいます。だれでも相談できる場があることも啓発することが重要です。




練馬区としては性暴力被害者支援について、人権の観点からの区民への啓発、また被害者への情報提供など、具体的にどのように取り組んでいくか、考えを伺います。



(総務部長)

区は毎年、性暴力も含めたあらゆる暴力の防止に関する啓発として、当事者や支援者の声を聞く機会を設けた講演会などの事業や研修を実施しております。引き続き、被害者等が置かれている状況や区の支援について区民理解を深めるための啓発や、被害防止のための情報提供に努めてまいります。




現在、男女共同参画センターや保健相談所など区の相談窓口では、性暴力被害の当事者やご家族のご相談に応じ、医療機関や専門機関への案内や職員が同行するなどの支援をしております。



今後もホームページや啓発事業等を通じて、相談窓口の明示と周知をしてまいります。あわせて、医療機関や支援団体などの情報提供の方法をさらに工夫するなど引き続き検討してまいります。



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今回は犯罪被害者支援の中でも特に性暴力被害者の支援について詳しく質問しました。


性暴力は、被害にあった人がなかなか言いづらいという現状があると思います。被害者にはなんの落ち度もないので、本来ならば被害にあったことを隠す必要はないのですが、実際にはそうはなっていない現状があります。


被害者が夜中に出歩いたから悪いんじゃないか、もっと気を付ければよかったんじゃないか、と被害者が責められることも多いし、加害者が顔見知りである場合が多いために「合意の上だったんじゃないか」と言われることも多い実情があります。


そのため、身近な周囲の人に言えないだけでなく、警察に訴え出ることもできない、がんばって訴え出たとしても犯罪として取り扱われないということも多くあります。質問の中にある「暴行脅迫要件」というのは、本当に嫌だと抵抗したのか、ということが問われるということです。でも、突然襲われて恐怖で凍り付いたようになったり、抵抗したら殺されるんじゃないかとおそれて加害者の指示に従うこともあり、そういった心理が十分に考慮されず犯罪として取り扱われない場合も見られます。例えば、「逃げられない性犯罪被害者 」という本などをお読みいただくと、現状の課題が見えるかと思います。


暴力に限らず「性」のことはあまり語られないことも多いですが、上記のような実態を変えるためにはまずは性暴力が置かれている現状を社会で共有する必要があると思っています。

また、今は国での議論も進められている時期でもありますので、今回この問題をとりあげました。



私が議員になったばかりのころに、婦人保護施設に携わっている方からお話を聞きました。婦人保護施設は売春防止法に基づく施設であるため、偏見の目で見られることも多いということなのですが、入所している人の中には性的な搾取、暴力などの被害にあった方も多いとのことです。

そして、性にまつわる暴力が、その後のその人の人生に大きな悪影響を与えるということを、この婦人保護施設の方のお話から学びました。


以来、性暴力に関する勉強会があると参加するようにしていたのですが、ただ勉強するばかりでは「わかったつもり」の頭でっかちになる一方だという思いもあって、数年前から議会がない合間に被害者支援の活動のお手伝いを少ししています。


そんなこともあって、私自身が活動する中で感じたことや、いろいろな集まりに行って感じたことをふまえ、またそういう中から出会った当事者にも今回の質問に対しての意見をお聞きしながら、質問をつくりました。