今回は、地域医療計画に書かれている精神疾患の医療についての質問をご紹介します。
地域医療計画には、様々な疾患の現状と課題、今後すべき対応などが書かれているほか、たとえば区民の医療についての啓発など、様々な項目が書かれています。
これらの課題に具体的にどう取り組んでいく考えなのか、気になる点がたくさんあります。私自身が医療を利用して感じる課題(例えば元気なときから医療についての正確な知識を得られる場の充実とか、患者に対する病院の情報開示とか)、また区民の皆さんから医療に対するご意見も多くある中で、具体的にどう取り組んでいくかを考えていきたいのですが、現段階での区の方針を聞くとどうも明確でありません。

質問をする前の段階で担当者に「この計画に書かれているこの事業は具体的にはどう取り組んでいくのか」といくつかの事業内容を聞いたのですが、医師会がやる、医療機関がやる、東京都がやる、といった答えが多いように感じました。
区が主体的に対応することがない計画を作ることに一体何の意味があるのか…どうも、「練馬区は23区の中でも病床が少ない区だから、病床を確保しましょう」というところだけが先行しているのではないかという印象を持ちました。

そこで、今回は、特に計画の中で記載が不十分と感じられた、精神疾患の医療について質問しました。

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(かとうぎ桜子)
区は3月に地域医療計画 をまとめましたが、その中で特に精神疾患への対応について伺います。

地域医療計画の中では、精神疾患の現状と課題については全国の患者数しか示されておらず、区独自の具体的な対策も記されていません。他の疾患については区内の病院での対応状況などが具体的に示されている一方で、精神疾患についての記載が抽象的なのはなぜでしょうか。
また、精神疾患は重点的な対応が必要な5疾病のうちの1つに位置付けられていますが、PDCAの指標として、「4疾病ごとの年齢調整死亡率」という指標が示されている一方、精神疾患への対応の指標は示されていません。これらの記載を見ると、練馬区は精神医療への取り組みに力を入れていないのかとも感じられてしまいますが、区は精神疾患の医療の充実についてどのようにお考えなのでしょうか。

また、PDCAの中に、精神疾患のアウトリーチの充実などの指標を加えるべきではないでしょうか。考えをお聞かせ下さい。

(地域医療担当部長)
精神疾患は早期に発見し適切な医療に結びつけることで回復が促進されるものであり、正しく理解をしていただくための啓発活動と、相談機能の充実が重要です。
そのため、区報やホームページを活用して広く周知を図るとともに、保健師等相談にあたる職員の技術を向上させ適切な助言を行うことにより、早期発見・早期治療に努めてまいります。

さらに、病院訪問や入院患者の相談、福祉サービスの情報提供等を行い、退院後も安心して地域生活を送れるよう医療と福祉の両面から退院促進を支援してまいります。あわせて区内の精神科病院を含む医療機関や東京都中部総合精神保健福祉センター等と連携して、未治療者や医療拒否者に対する医療支援を充実してまいります。

また、現段階では精神疾患医療の成果指標として、人口10万人当たりの自殺死亡率を定めておりますが、新たな指標については、今後、東京都保健医療計画の数値目標等を参考にしながら検討してまいります。

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精神疾患対策の指標として、自殺者の減少をあげているということですが、やはりこれでは不十分であると私は考えます。自殺のひとつの重要な要因としてうつ病などの精神疾患はありますが、自殺の原因は様々な要因が絡み合うことが多いため(たとえば経済的な理由、家族の問題、身体的な病気を苦にして…など)、自殺者の減少が精神医療の充実の成果とだけは言えないでしょう。

むしろ、その前に答弁している、未治療者等への対応をしていく具体的な道筋を整備し、その対応状況を指標にするほうがいいのではないでしょうか。

練馬区は、入院できる精神科の病院が多くあります。
精神疾患は、入院が長期化するという問題があり、福祉の視点で捉えられるようになってからもまだ歴史が浅いのです。
しかし、精神疾患も身体的な疾患と同様に一定程度症状が落ち着いたら自宅での生活に戻っていくべきです。入院時の対応の充実のみならず、いかにして地域生活に戻っていくことができるか、地域の診療所や福祉施設等との連携が必要な分野です。
こうした多機関の調整役として行政が果たすべき役割は大きいと考えます。