一般質問の内容のご報告。今回は犯罪被害者支援について市区町村が取り組むべき課題についてです。

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(かとうぎ桜子)
犯罪被害者支援について伺います。

日本では2004年に犯罪被害者等基本法が制定され、犯罪被害者等基本計画に基づき被害者支援の施策が進められていますが、自治体のとりくみはまだまだ不十分ですし、犯罪被害者の抱える困難への社会の理解も不十分であり、より一層の支援と啓発を進める必要があると考えます。

練馬区でも2009年に犯罪被害者等支援基本方針、2010年に犯罪被害者等支援の手引きを策定していますが(こちら )、具体的な支援としては普段おこなっている区民からの相談対応と同様、福祉事務所などそれぞれの部署での対応をし、犯罪被害に遭った方が窓口で再びつらい思いをする二次被害を防ぐための手引きを策定するにとどまっています。

犯罪に巻き込まれたとき、犯罪への対応そのものは警察であり、裁判など法的対応は弁護士に相談するなどの対応になりますが、当事者にとって必要な支援はそれだけにとどまりません。

例えばご家族を亡くしてしまった方は死亡届をはじめとする手続きが必要になりますし、家庭環境の変化により健康保険の手続きが必要になったり、こどもの保育が新たに必要な環境になったり、ストレスで体調を崩してしまった場合は心身のケア、今までやっていた仕事を辞める必要が出た場合はその後の生活に不安を抱えることや、家事をするのもつらいという場合もあり得ます。法的な問題への付き添いなどは弁護士に依頼できる一方、日常生活へのサポートは見落とされがちですが、重要な課題であると考えます。

東京都には被害者支援都民センターが置かれていますし、民間団体でも被害者支援にとりくむ団体はありますが、弁護士や専門の医療機関などの紹介が中心ですので、日常生活へのサポートは身近な自治体である市区町村が行う必要があります。

私はこの7月から8月に、議会事務局を通じて都内区市の犯罪被害者支援の窓口の状況を調査しましたが、相談員を置いての対応をしているのは杉並区、中野区、多摩市、国分寺市です。まだまだ対応している自治体の数は多くはありませんが、犯罪被害者の日常のサポートをするうえで市区町村の果たすべき役割は大きいと考えますので、以下、質問をします。
(調査結果はPDFで掲載しました。
・23区の相談窓口の状況はこちら
・26市の相談窓口の状況はこちら
・23区の相談件数はこちら
・26市の相談件数はこちら

・第一に被害者支援窓口の必要性についてです。
たとえば中野区では兼務の常勤相談員を1名、非常勤相談員を1名置き、犯罪被害から時間がたっても安心して相談できる体制づくり、必要な場合の行政窓口での手続きへの付き添い、一定期間無料で家事のサポートをする協力員を派遣するなどの支援をしています。
この5年間の相談件数の推移を見ると、中野区の場合、多いときで年間延べ100人近い方からの相談が寄せられています。
中野区の人口は約31万人、練馬区の人口は約71万人ですが、単純に人口で比較して考えても練馬区では中野区よりも多い相談が寄せられてもおかしくないはずです。しかし、実際には練馬区で把握している相談は年間1人か2人という程度の状況です。これは練馬区で相談のニーズがないのではなく、相談窓口がないために困っていても相談できずに苦しんでいる人がいる可能性を示すのではないでしょうか。

こうした現状を見たうえで、練馬区としては犯罪被害者支援の相談窓口の必要性、また区として被害者の生活支援の必要性をどのように考えるか、お聞かせください。

・第二に、苦情対応の窓口についてです。
行政窓口の対応の中で、犯罪被害について心無い言葉をかけられることで被害者が再び傷ついてしまう二次被害が起こる可能性があります。また、練馬区のように犯罪被害者に対応できる専門の相談窓口がない中では、被害者が行政窓口に行った時に自分が犯罪被害に遭ったということを言うことができず、言えないからこそ傷つくという経験を持つ場合があります。
二次被害を受けた時に苦情を申し立てる、相談できる場が必要です。たとえば保健福祉サービス苦情調整委員で犯罪被害者支援に関する苦情相談は受けられるのでしょうか、あるいはその他の策は講じられているでしょうか、お聞かせください。

・第三に行政職員を対象とした犯罪被害者支援に関する研修の実施状況と今後の方針を伺います。
行政窓口で区民に接する立場にある職員が犯罪被害者支援と二次被害の問題について知る機会を持つことが重要です。これまでどのような内容で研修を取り組んでこられたか、またどのくらいの職員が参加してこられたのでしょうか。研修実施による成果はどのようにとらえられており、今後どのように充実させていくお考えか、お聞かせください。

・第四に区民への啓発についてお聞きします。
練馬区統計書によれば2012年の石神井警察署、練馬警察署、光が丘警察署管内での刑法犯の認知件数は合計7467件、また交通事故の発生件数は1853件です。
社会生活を送っていれば誰もが交通事故や犯罪被害にまきこまれて今までの生活を大きく変えることを余儀なくされる可能性はあります。しかし、そのことについてまだまだ一般的な理解が広がっていないのではないでしょうか。具体的な被害者支援とともに、犯罪被害に関する啓発の事業を充実させることも重要ですが、今後どのように取り組まれるかをお聞かせください。

(総務部長) 
犯罪被害者支援についてお答えします。

区は、練馬区犯罪被害者等支援基本方針および犯罪被害者等支援の手引を策定し、犯罪被害者の方からの相談や問い合わせを適切に受け止められる対応をしています。また、区の各種制度の案内や区関係窓口への同行など、橋渡しも行っており、区の組織が連携し、適切な支援につなげるよう努めています。

つぎに苦情や相談の対応窓口についてです。
犯罪被害者支援に係る二次的被害の苦情などについては、保健福祉サービス苦情調整委員ではなく、犯罪被害者の方への支援を統括する人権・男女共同参画課で対応しています。
今後は、二次的被害の対応窓口を区ホームページで分かりやすく表示するなどの工夫に努めます。

つぎに、職員を対象とした犯罪被害者支援研修についてです。
毎年、犯罪被害者支援に精通している講師を招き研修を行い、被害者の方の心情、窓口での具体的な対応などを学んでおり、毎年30人程度の職員が受講しています。
さらに、研修を受講する職員数を増やすなど、研修体制の充実を検討していきます。

つぎに、区民への犯罪被害に関する啓発事業の充実についてです。
毎年、犯罪被害者のご家族の方や有識者をお招きし、犯罪被害の実情や支援の必要性についての啓発事業を開催しています。
今後は、啓発事業の要旨を区ホームページに掲載するなど、啓発事業に参加できない区民の方にも幅広く犯罪被害者支援の必要性を訴えていきます。