練馬区は、来年度からの組織改正の素案を出しています。

その中でも大きな変更は、これまで健康福祉事業本部のもとにあった保育園や学童クラブ、虐待対応などの子育て支援分野について、教育委員会のもとへと移すというものです。私はこれに課題を感じているので、一般質問でも指摘をしました。

区役所の中の組織のことなので、一般的になかなかわかりにくいし、行政側の答弁が、一体何を言っているのかさっぱりわからないのでなおさら分かりづらいのですが、後半部分に私が感じている問題点についてコメントをつけますので、前半部分は辛抱してお読みください[emoji:e-263]

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(かとうぎ桜子の質問)

組織改正について伺います。

区は、子ども施策や生涯学習等の来年度からの組織改正についての素案を出しています。

子ども分野に関しては、基本構想でも主要な分野として項目を立てており、この基本構想を実現するために、今まで福祉と教育にまたがっていた子ども施策を一元化することを目的とするといっています。

素案には、組織改正の目的について
「乳幼児期から青年期に至るまでの子どもに対する総合的かつ切れ目のない成長支援を効率的、効果的に展開できる体制を構築すること」
と書かれていますが、しかし、区の出す素案では、必ずしもすべての子どもとその家庭が対象になるわけではなく、障害児、ひとり親、DVと虐待問題の関連、子どもの貧困、子どもの人権という観点ではかえって分断が起きる部分があることに私は大きな疑問を感じています。そこで、子ども分野の組織改正について何点か伺います。

まず、この組織改正によって、子ども分野には具体的にどのようなメリットがあると考えているのか。あらためて区のお考えをお聞きします。

第二に、子どもに関わる現場との意見交換の状況を伺います。
組織を変えるのであれば、ただ看板を付け替えるだけでは意味がなく、実際に子育てをしている人にとって、また継続的に子ども・子育て支援に関わっている人にとって分かりやすく使いやすいものでなければなりません。
しかし、今まで健康福祉事業本部にあった子育て支援の部分を教育委員会のもとに置くことによって、区長から教育委員会への委任、教育長への再委任などの必要性が生じ、かえって分かりづらい印象があります。このことについて、今、子どもの分野に関わっている区の職員や、また関係する区内の子育て支援や教育に関わる団体などからはどのような形で意見をお聞きになっているのでしょうか。また、どんな声があるかをお示しください。

第三に、今まで福祉と教育とで分かれていたものを一体化させるにあたって、物理的に庁舎内の配置の変更などはどのようなお考えをお持ちでしょうか。
たとえば幼稚園と保育園の担当が近くになるなどの形で、日頃からの情報交換ができるようになるのでしょうか。連携体制が具体的にどう進んでいくのかをお聞かせください。

第四に、特に支援を必要とする子どもや家庭への対応について伺います。
ひとり親家庭への支援、障害児への支援、DV問題への支援などは福祉分野に残るという今回の組織改正は、すべての子どもと子育て家庭を支えるという意味では大変不十分であると考えます。

たとえばひとり親家庭を支えることとその家の子の育ち、学校とのつながりは密接に関連します。

また、虐待の問題では保健相談所、福祉事務所、学校、地域、幼稚園や保育園との連携、都の児童相談所や警察等との連携を、子ども家庭支援センターが核となって行っていきますが、虐待問題と家庭でのDV問題は関連する場合も多いし、子どもにとっての様々な生活課題は貧困問題を原因にすることも多く、福祉の視点からの支援が欠かせないものです。

今回の改正によってこれらがかえって分断されるのではないかと懸念します。健康福祉委員会で質問した際には、「今まで通りの組織間の連携をしていく」という答弁がありましたが、今まで通りの連携で済むならばそもそもなぜわざわざ組織改正をするのでしょうか。矛盾を感じます。お考えをお聞かせください。

また、特に障害のある子に対しては、インクルーシブの視点が欠かせません。
子どもに対する総合的かつ切れ目のない成長支援をすべての子どもに対応できる形で組織改正をするのであれば、今までは地域の学校に行かずに特別支援学校や少し離れた特別支援学級に行くという形で近所の子どもと交流する機会を持てなかったり地域の人たちとも離れてしまうこともあったり、福祉と教育のあいだで分断されがちだった障害のある子への支援を、地域全体で行えるような体制作りをしなければなりません。なのになぜ、障害児は一体化される子ども施策からは外されてしまうのでしょうか。障害のある子は総合的かつ切れ目のない成長支援を受けられる対象からは外されるのでしょうか。
これは、区が障害のある子どもたちにどう向き合うかという姿勢がとわれる問題です。お答えください。

最後に、検討されてきた児童相談所の区への移管との関係を伺います。地方分権の議論のなかで、東京都の児童相談所を将来的に区に移管させることが検討されていますが、その場合の対応は今回の組織改正のなかでどう位置づけられるのでしょうか。お考えをお聞かせください。

私は、今回の組織改正の素案は、子ども施策のわかりやすさという点からも、すべての子どもへの支援という点からも不十分であり、かえって混乱を招くものであると考えます。一旦撤回し、子どもの視点に立った対応はどうすべきか、検討し直すべきです。


(健康福祉事業本部長の答弁)

まず、組織改正による子ども分野でのメリットについては、基本構想と長期計画に基づく子ども関連施策が一体的、総合的、かつ効果的に展開できるようになることであります。また、組織の一元化により、子どもに関する担当窓口等が区民にとってよりわかりやすくなるということであります。

次に、子どもに関わる現場との意見交換についてであります。職員には保育園長会や児童館長会などを通じ、また青少年育成地区委員会をはじめとする子どもに関わる団体についても随時情報を提供しております。こうした中で、新たな組織と各団体との関わり方に変更があるかなどのご質問はいただいておりますが、組織改正の方向性等についての特段のご意見は伺っておりません。

次に、組織改正に伴う庁舎内の配置変更については、組織改正を伴わない既存組織の配置を含め、全庁的な視点で、良好な職場環境となるよう検討を進めてまいります。

次に、特に支援が必要な子どもや家庭への支援については、子ども施策と福祉施策との両面から対応していく必要があると考えております。ひとり親家庭への支援については、主に親への福祉的支援が中心となっており、現在、総合福祉事務所で様々な事業を担っていることから、福祉分野において一体的に取り組んでいくことが効果的であると考えております。

また、障害児への支援については、障害者福祉施策としての自立に向けた支援が中心であり、「乳幼児期から青少年期までの成長支援」にとどまらず、「生涯を通じて成長段階に応じた一貫した支援」が重要であります。こうしたことから、今回の組織改正の検討においては、引き続き健康福祉事業本部が担うことといたしました。

いずれにいたしましても、子どもの健全な育成を支援していくためには、教育委員会と健康福祉事業本部との連携は大変重要であり、組織改正後についても子どもの視点に立って、さらなる連携強化に努めてまいります。

次に、組織改正と将来的な児童相談所の移管との関係についてであります。今回の組織改正は、現行の区組織における子ども関連組織の一元化を図ることを目的としております。一方、児童相談所の区移管は、23区全体の問題として、現在、東京都と具体的協議が開始される段階であり、今回の組織改正とは別に検討すべき都区間の課題であると考えております。

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区の答弁が、わかりづらいなあと思う理由。
①私は、素案に書かれている「目的」を読み上げた上で「だけど今の素案では、子どもがかえって分断される部分があって、メリットが感じられないから、もっと具体的にメリットを説明して欲しい」と質問しているのに、答えが「目的」に書かれている以上のものではないということ。なんだ、結局具体的なメリットは特にないってことかな?と思ってしまう。

②組織改正を機に庁舎の配置を工夫して連携が進むのかな、でも大幅な庁舎の配置変更はお金がかかるだろうなあ・・・と思って、庁舎内のレイアウトについて質問したら、「組織改正を伴わない既存組織の配置を含め、全庁的な視点で、良好な職場環境となるよう検討を進めてまいります」ときた。
もはや言葉の意味が理解できないんだけど、うーむと唸りながら解釈した結論としては、「区役所内の配置は、組織の改正とは別なこととして、全体的に良い感じにします」って訳せば良いのかなぁ・・・。

③障害のある子が障害のない子への対応と異なることについては、全然説明になってないと思う。

④いま、東京都にある児童相談所を将来的に区に置こうという話は、具体化はまだこれからとしても議論されていることなのに、それを想定しない組織改正であるのも不思議。具体化したらまた組織改正するのかしら。

それにいま、国でも「子ども・子育て新システム」というものが検討されていて、これまた具体的に区にどう影響するかはこれから議論しなければならないのに、その前に急いで区が先に組織改正したら、国や都の状況が変わるたびに対応しなければいけなくなるのでは?と思います。しかも急いでやるメリットが見えない・・・というか、デメリットが目立つように思います。

これは質問をしてみて改めて、疑問を感じる課題です。