今回で、2014年度予算で質問した内容の報告は最後です。

昨年12月に「生活困窮者自立支援法」という法律ができたのですが、練馬区では今年度からそのモデル事業を実施します。

生活困窮者自立支援法は、生活困窮状態にあって生活保護は利用していない人が対象になるというものです。
今の日本の社会では、生活保護基準と比べて所得が低い状態にあっても生活保護を利用していない人が多いのです。
そんな中で、生活保護を利用していない生活困窮者を支援するとは一体どういうことなのか。つまりは本来は生活保護を利用できるような生活水準にありながら利用していない人がいることを正当化することにつながるのではないかと懸念されています。

生活保護を利用していると経済的な支援だけではなくて担当ワーカーが定期的に面接をするとか、就労支援とか、こどもがいる場合は学習支援をするなどのサポートがあります。そうしたサポートの中にはかえって生活保護世帯を苦しめる(たとえば体調面で仕事ができないのに仕事をするよう圧力をかけられる)などの課題もありますが、金銭給付だけでなく生活全体をサポートしていくということは本来は大切なことです。

現在の生活には困窮していても持ち家など資産があって生活保護が利用できなかったり、ぎりぎり生活保護基準以上の収入はあるから生活保護の対象にはならないけど困窮しているというような場合もあります。生活保護を利用していないと生活サポートの対象にもなりません。従来はサポートが受けられていなかった方がサポートを得られる体制を作ることはいい面もあるとは思います。

ですので、この1年、モデル事業をやるなかで、具体的な対象者がどのような人になるのか(本当は生活保護を利用できる条件にある人をこちらに回して生活保護切りをしてはいけない)、生活保護行政との連携をどのように行っていくのか、行政の委託といえども行政の視点ではなく当事者の視点に立ったサポート体制を作っていけるか、ということが重要な点だと思います。

今後始まる事業ですので、まずは現段階で考えられる課題を指摘しました。

-------以下、未定稿の議事録より------

(かとうぎ桜子)
次に、生活困窮者自立促進支援モデル事業経費について伺います。

このモデル事業は、生活保護に至る前の生活困窮者支援をするということですが、生活困窮状態に陥っていて、けれども生活保護の対象にならない人というのは、具体的にどのような人で、どのような形で支援を実施していくのか。また対象者数はどのくらいと想定されているのか、具体的にお聞かせください。

(練馬総合福祉事務所長)
現に経済的に困窮していて生活保護ではない方とはどういう方かというところですが、まず、例えば失業等で実際には現金収入がない。
ただし預貯金等があって、生活保護については資産も当然、生活保護の可否については判断しますので、資産があるため現段階では生活保護の対象にならないような方、そういった方がまず対象になると考えているところです。

また、2点目に、どういう形で支援を必要とする人を見つけていくかという部分でございますが、ここは、生活保護の相談窓口である福祉事務所だけではなくて、庁内いろんなところ、例えばお子様の関係であれば学務課や子育て支援課、保育課等、保育園・学童クラブ等の入園相談等の場所、それから、収納課で税相談、国保の相談をされるような場合、また、住宅課で住宅についての家賃が支払えないといったご相談がある場合に、そういう方について、この新しくできる事業についてアナウンスをさせていただき、紹介していただくということを考えているところです。

3点目が、対象人数ですが、なかなか非常に測定がまだ難しいところです。児童扶養手当の受給者数が約5,000人程度と考えておりますので、少なくともそのくらいの人数を想定しているところではございます。

(かとうぎ桜子)
モデル事業は社会福祉協議会に委託して実施するということですけれども、往来の生活相談の窓口である福祉事務所との役割分担はどのように考えていらっしゃるのか、お聞かせください。

(練馬総合福祉事務所長)
法施行時には、福祉事務所においては生活保護の受給者の対応で、自立相談支援事業においてはその前の方を対象としますが、モデル事業実施の際には、なかなかそこの切り分けが難しいと考えております。

そこで、まずモデル事業、平成26年度においては生活相談一般という形で、まず総合福祉事務所の窓口でご相談を受け、それで生活保護ではなく、自立相談支援事業の対象者と思われる方について、自立相談支援事業をご紹介していくということを考えているところでございます。

(かとうぎ桜子)
それから、生活保護を利用している方に対して実施されている就労のサポートなどの支援と類似する内容が多いと思いますけれども、委託先なども別の形態で実施されるということになるかと思います。

ただ、利用される方は、同じ人が、置かれた状態によって生活保護を利用したり、保護を廃止する場合もあるでしょうし、変化する可能性があると思います。

生活保護の受給の有無で支援体制が変わる形になると、支援の継続性が保てないのではないかという点を懸念するのですが、生活保護の支援体制と生活困窮者支援はどのように連携させていくのか、お考えをお聞かせください。

(練馬総合福祉事務所長)
実際、例えば就労支援といっても、一般就労を目指す方についてのハローワーク側の受け入れ体制というところは変わらないと考えております。

また、今後、就労準備支援等の実施等についても検討してまいりますが、国でも、生活保護受給者の就労支援等の委託先と、この生活困窮者の委託先の一体的な運用等についても検討しているところです。

そういった検討内容についても、どういう形でされていくのか、生活保護受給者と生活困窮者の対応をどのような形で運用していくのかという検討も見きわめたうえで、区としても対応を考えていきたいと考えております。

(かとうぎ桜子)
それから、生活支援を続けていく中で、その方の生活状態が少し整理されたりだとか、債務が整理できたりだとかしてきたときに、弁護士と連携することであるとか、生活保護の受給に切りかえた方がその人の自立が進むだろうということになる場合も、当然生じてくるかと思います。

往来、NPOなどで行われてきた生活困窮者支援は、生活保護申請への付き添いであるとか、弁護士との連携なども実施してきたと思いますけれども、生活困窮者自立支援法に基づく行政の事業の中でも同様に、そういったサポートも実施されると考えていいのでしょうか。お聞かせください。

(練馬総合福祉事務所長)
当然、生活保護の受給と自立相談支援事業と、両方とも区の事業として実施していくことになりますので、例えば、生活困窮者の方の自立相談の中で、生活保護が必要といった場合には、適切に福祉事務所につないでいく。また必要に応じて法テラス等の弁護士相談につないでいくといった対応は、きちんと検討して実施していけるような体制をとっていきたいと考えております。

(かとうぎ桜子)
この法律ができる段階から、さまざま懸念も出されていて、生活保護と別に実施されることによって、本当は生活保護が必要な状態にある人も保護を抑制することが目的になってしまうのではないかという懸念も出されているところです。

この事業について、区として、このモデル実施の間に、どのような点を課題として整理されていくのか、お考えをお聞かせください。

(練馬総合福祉事務所長)
新しいセーフティーネットをつくるというこの事業は、非常にやはり対象者の設定等が難しいところがございます。

そういう意味で、モデル事業の中で、生活保護ではない生活困窮者、どのような対象者という形なのか、発見や、それからつなぐ経路等の確定をきちんとしていきたいと考えているところです。