bankholyday ロンドン在住で保険仲介業者のPAとして働く著者が描く、ロンドン金融街・シティを舞台にした、日本人女性の物語。
仕事に恋に終わりかけの結婚生活に奮闘する姿を描く痛快な恋愛小説。


主人公・エリコは31歳。
ロンドンの金融街・シティでコンサルに勤めている。
翻訳アシスタントとして雇われたが現在はPA(パーソナル・アシスタント)として勤務している。
3歳年下のイギリス人・ティモシーと電撃結婚して6年。
現在夫はフランクフルトに単身赴任中である。
結婚生活は破綻しており、明るい未来の無い別居と化している。
しかし離婚までの道は遠く、なかなか具体的な話に着手できないでいる。
もう一度女としての人生を歩みたいと、エリコは恋に走る。
シティで知り合う男性陣は皆ゴージャスで知性的な男ばかりである。
橋渡しを頼んだはずの恋多き同僚・クリス、妻との離婚を目前に動きの悪いジェイムス、同僚の女性から紹介されブラインドデートをした紳士・ローレンス、やり手で気難しいビジネスマン・スティーブ、公開ディスカッションで知り合ったチャールス・・・
魅力的な男性を前に、エリコは持ち前の美貌とトークでターゲットと接近していく。
勿論、思い通りに落ちない相手もいるが、そんなことは気にしない。
次の恋を見つけるだけだ。
仕事も恋も、中途半端は嫌というはっきりした意志を胸に、エリコは今日もシティを闊歩する。
そして、昔のフィアンセ・公一の登場でエリコとティモシーの結婚生活にもファイナルアンサーが出ようとしていた。


コメディ要素も多く、欧米で暮らす日本人女性の姿をうまく表現し面白い。
アメリカ男性とは違う、イギリス男性の魅力や物足りなさを上手く描き読んでいて飽きない。
アクティブ、ポジティブ、そんな言葉が似合う女性が主人公の物語は読んでいて気持ちがいい。
失恋しようとも、離婚問題が迫っていようとも、落ち込まないし無駄に悩まない。
仕事も恋もディナーもワインも、とことん楽しみ後悔はしない。
そんな潔い、サムライのような主人公が私は気に入ってしまった。
時折、会話の中に混じるジョークやウィットに飛んだ会話も小気味良い。
著者は本書が1冊目の出版のようなので、今後の作品も期待したい。
重く湿っぽい恋愛小説ではなく、楽しくポップな恋愛小説を求める方にはおすすめの1冊。


<集英社インターナショナル  2005年>


十貴川 洋子
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