色々な作家を味見出来るのが本書のような数名の作家があるテーマに沿って書き下ろしたものを集めた作品集だろう。
図書館で借りるものが無かったのでなんとなく手にした1冊。

様々な曲をテーマに、6名の女流作家が書き下ろしている短編集だ。
『情熱の薔薇』は真野朋子の作品だ。
翻訳の仕事をしている32歳の希和子が主人公。
来日しているイギリスのバンドのインタビューを翻訳する仕事をしたことからコンサートの招待券を貰った希和子はライブ会場を訪れるが、若者たちの波に乗れずにいる。
会場で偶然出会ったアーミーコートを着た若い男はそんなざわついたライブ会場で廊下に座り込みヘンリー・ミラーを読んでいた。
若い男が読んでいたのは【北回帰線】だった。
思わず「【南回帰線】より【北回帰線】の方がおもしろいのよね」とつぶやいてしまう。
それを聞いて驚いた若い男はライブ終了後、希和子を追ってきて一緒にご飯を食べようと誘う。
若い男の勢いに乗せられて一緒に居酒屋に入ってしまう希和子 。
若い男と過ごす夜、そしてその後の男の行動力に揺れる希和子を描く。

6つの話、どれも恋愛を題材にある曲をテーマにして綴られる。
読みきり感覚で6名の作家を楽しめるお得な1冊。

<幻冬舎 2000年>

著者: 谷村 志穂他
タイトル: ホワイト・ラブ
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隣りの女 / 向田邦子

テーマ:
著者の絶筆作品となった『春』を含め5作の短編が収録されている。

表題作『隣りの女』はつましい2DKのアパートに住むサチ子が主人公。
サチ子は流産をきっかけに内職をはじめた。
自宅でミシンを使っていると、いつも隣から男女の声が聞える。
ミシンの音で誤魔化そうと思っても、サチ子は気になってしょうがない。
争う声のこともあれば、愛を囁く声のこともある。
最初は無視しているものの、やがて気になり壁に耳を当ててしまい後悔する。
節約、夫婦の行き違い等、サチ子は毎日に満足していなかった。
隣りの女は峰子というスナックのママだった。
昼夜違う男が出入りする峰子の部屋に興味が募っていた或る日、峰子が男の一人と心中をし、サチ子がそれを助けたことからサチ子の平凡な日常に波が立ち始める。

向田邦子の上手さを感じられる短編集。

<文春文庫 1984年>

著者: 向田 邦子
タイトル: 隣りの女
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島村洋子は意外と好きな作家の一人だ。
本書は、読んだのは二度目だと思う。
どうしてか、以前読んだ気がするのだ。でもこの『ココレナイドコカ』という名前ではなかった気がしてならない。

物語は物悲しいく悲惨な主人公達の9個の物語。
とてもせつなく、心に染みる。
小さな不幸、大きな不幸、他人にはわからない苛立ちや悲しみに包まれた登場人物たち。哀れまれるのは嫌だが、誰にもこの虚しさを話せないのもまた嫌だ。
でも、一人でどう立ち回ったらいいのかわからない感じがひしひしと伝わってくる。

『密閉容器』は容量の悪い年頃の靖代が主人公だ。
目立てないタイプの靖代は、いつも貧乏くじを引いているように感じている。自分の人生をシケた人生だったように思っている。
フラストレーションが溜まっても心の密閉容器にその憤りや不平不満を詰め込み蓋をして生きてきた。
彼女とは正反対に容量がよく結婚を控えた妹、父に先立たれ不安の為に娘達を縛り付けるような言動を続ける母親。
そんな境遇の中で、靖代は母親に逆らわず会社でも誰にも逆らうことなく生きていた。
そんな時、繊維関係の営業をやっている西という男と出会う。
西とは時々会い、食事をしたりデートを重ねた。
妹の結婚が決まり、靖代は妹の結婚式に着物を着ようと思い西の勤務先で山吹色の付け下げ訪問着を購入する。
帯や草履などの小物一式を含めて75万で購入し、靖代は着付け教室にも通い始める。
或る日、西と連絡が取れなくなり、それが何を示しているのか気づいた時、靖代は変化していく。

どれもこれも暗い話ばかりなのだが、飽きることなく読める。
悲しく暗いのに後味が悪い話は無い。
大人の女性なら共鳴出来る部分が結構あるのではないだろうか。

<祥伝社 2003年>

著者: 島村 洋子
タイトル: ココデナイドコカ
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最近書店でも見かける事が多くなった作家、平安寿子。
図書館で手にとり、最初の1頁を見て面白そうだと感じ借りてみた。
新しい作家を手にするとき、最初の1頁の印象で決めるのは私だけだろうか?
文体、文字の並びなどを見て自分と相性が合うか否かわかると思う。

著者は第125回直木賞推薦候補だったこともある名の知れた作家だった。
オール読物新人賞を受賞している女流作家だ。

『もっと、わたしを』はかわいらしい装丁の女性向き恋愛小説集だ。
著者のスタイルは1冊しか読んでいないのでわからないが、読みやすくまとまりのある文体で個性的な主人公が特徴だ。また、ちょっと癖のある人々をうまく絡ませることで物語りに深みを出しているように思う。

主人公となるのは、不器用なあまり恋愛や人生に自身が持てず、屈折感を抱いている男女。
仕事の話以外はうまくできない小太りな男、誰もが認める美男子の営業マン、自分のレベルを理解し自分がどう立ち回るのがよいのか把握している賢いOL、微笑めば喜ばない男は居ない美人の受付嬢、オヤジキラーを自負するシングルマザー、バーを経営するゲイなど、個性豊かな面々が繰り広げる日常を5つの短編にまとめている。

『いけないあなた』はキャリアウーマンの理佳にトイレに監禁された真佐彦の話。
堅肥りで口下手な真佐彦はモテない。生まれてこの方、モテたことがない。人生にポツンポツンと恋愛が落ちていた程度である。
壁紙メーカーの営業で営業成績は上々、役職手当を貰うほどだ。しかし恋愛についてはさっぱり。
そんな或る日仕事を通じて知り合った理佳と交際を始める。結婚を申し込んだが返事が無いまま1年が経過。プロポーズなどなかったようにデートを続けていた。
そんな或る日、監禁される。
理由は真佐彦の浮気だった。
モテない真佐彦が調子に乗ってしまったことが全ての原因だったが、事件は事件を呼ぶもので監禁されているトイレの外は泥沼化していた。
なんと、浮気相手の広子が登場したのだった。

男と女の小さなトラブルを非現実的なエピソードを絡めて面白く描いている。
装丁と内容がリンクしない不思議な1冊。

<幻冬舎 2004年>

著者: 平 安寿子
タイトル: もっと、わたしを
林真理子の昨今の短編小説の中では一番読み応えがあり、読み終えた後に満足感があったのがこの『年下の女友だち』だ。

主人公はイラストレーターのエミ子。中年で独身の女性。よく相談を受けるタイプ。
彼女を取り巻く世界に居る、ちょっと変わった年下の女友だちのエピソードを回顧録のように描く短編集。
登場する女性たちは容姿端麗でお金持ち、バリバリ仕事をするというよりは、あくせく働く必要は無いが一応仕事はしていて個性的なタイプが多い。
親が資産家だったり実業家だったりで、そういった娘たちは親からのお小遣いや仕送りで習い事や趣味に没頭しているものなんだろうか?
服装や持ち物、食事の場面などは華やかで羨ましい。
そういった女性たちの恋や結婚に悩み揺れる姿を描く。

『第四話 葉子と真弓』は主人公・エミ子が11年前に離婚した女性誌の編集者・山口の後妻・葉子から相談を受けるところから物語が始まる。
葉子は5年前に元夫と再婚しファッションメーカーのプレスに就く女だ。
エミ子は元夫の妻と付き合う趣味など無いのだが、エミ子のファンだという葉子は事在るごとに連絡を寄越すので付き合いが続いている。
或る日、葉子から「相談がある」といつもの調子で連絡がきた。気乗りはしないが話を聞くと山口の浮気についての話だった。
しかも相手はエミ子と一緒に仕事をしたばかりのフリーライター・真弓だと言うのだ。葉子の話に興味を持ったエミ子は真弓に連絡し、真弓の家を訪れる。
真弓と山口のいきさつ、真弓の過去。
エミ子は元夫の気持ちを推測していく。

著者が普段身を置いている普通ではない世界にいるだろう変わった女性たちのエピソードを淡々と報告してくれているような1冊はなかなか面白かった。
8つの物語全ての結末はいつも悲しいような、歪んだような、寂しいような、切ないような・・・そんな結末ばかり。
登場人物たちに嫉妬や僻みを感じるようでは、ダメなんだろうなぁ。
私とは生きる世界が違う人々の物語集といった感じなのだが、面白いのが不思議。それはきっと林真理子の文章力のなせる技だろう。

<集英社 2002年>

著者: 林 真理子
タイトル: 年下の女友だち
いい年して貯金が無い人、それは私だ。
本当に貯金出来ない。
浪費家で、次々モノを買う。
ネット通販という便利なものがあるせいか、はたまた繁華街に近い場所に住んでいてデパートまで自転車で行けてしまうせいか。
そんな私の目標は「貯金」だ。
あるサイトでこの本を紹介しているのを見て早速手にしてみた。

結婚を目前に貯金なしの現実に焦る32歳の女性が主人公。
一念発起し、わずか1年で135万円の貯金に成功した実例を元に、働いていても続けられる節約術を綴っている。
色々な節約関連サイトでも「おすすめ」として紹介されている節約本だ。
雑誌などでも活躍する著者のサイト「節約はじめの1歩」 をまとめた1冊なので本を買う前にサイトを見てもいいかもしれない。
家計簿のつけ方、節約生活の実例、ネットでお小遣い稼ぎする方法など、一般的なことから意外と見落としていることまで網羅されている。

お金を貯めたいけど、どうしたらいいのかわからなくて悩む人は必読。
丸山晴美の節約本より現実的だし、実行しやすいと思う。

<雷韻出版 2002年>

著者: 坂本 かずえ
タイトル: ゼロからの貯金生活
どこにあるのかわからない謎の街、フランクザッパ・ストリートが舞台の恋と食の物語。

89番地。
アイビーが絡まる古いアパートメントは人気物件。
ここに住むミミとハル。
二人の愛らしいある1日はとっても甘い。
73番地。
この街でたった一軒の映画館、トウィンクル・スター座。
古くて小さなこの劇場だが、他に映画館が無いので常に繁盛している。
テリヤのブーブーとソルベ。
二人を包み込む映画館の暗闇。
52番地。
この街の中でなぜか少し気温が高い場所。
キリンのリンキとシマウマのシマジョ。
二人のラブラブな新居があるせいで、ホットになっている。

架空の街、おとぎ話のような登場人物たち、優しくキュートな物語、これらにマッチした挿絵。
美味しそうな食べ物が溢れていてお腹が空くが、巻末にレシピが載っているので実際に同じメニューを食してみたいならチャレンジもできる。
大人向けの絵本のような1冊。

<光文社 1998年>

著者: 野中 柊
タイトル: フランクザッパ・ストリート
最近、思い出したように野中柊作品を読み漁っていた。
本書は、その中でもあまり面白くなかった1冊だ。

主人公は鹿の子。
鹿の子は日曜の昼下がりに別れた夫・ウィリーと待ち合わせをしていた。
一緒に暮らしていた頃に飼っていた愛猫「ユキオ」の命日に、「ユキオ」を埋葬した動物霊園に行く約束をしていたから。
2人は3年前に離婚し、お互い別の人と再婚している。
江ノ電に乗って腰越の霊園へと向かい、初夏の海辺でウィリーと過ごすうちに鹿の子は過去の日々や思い出を振り返る。
食事をしようということになりカフェに入る二人。
アメリカと日本でのウィリーとの生活、睡眠薬中毒になっていたこと、子供が欲しかったこと・・・鹿の子は1つ1つ思い出していく。
ウィリーから妻ジュディとの間に子供が生まれたことを告白されて衝撃を受ける鹿の子。
鹿の子と結婚している時には、子供はいらないって言っていたウィリー。
鹿の子は赤ちゃんにに会いたいとウィリーの家へと向かうのだった。赤ちゃんを抱いた時、自分が死んでもこの子が生きてくれればいいと希望に満ちた思いが鹿の子におとずれる

終わりと始まりを描いた不思議な作品。
猫も好きでは無いし、こういった元夫婦が題材となった作品にありがちな「良い関係」を扱った話も好きではない。
退屈せず読みきったが、特に面白いとは言えない作品だった。
野中柊の作風は少し変わってしまったのかな?

<新潮社 2003年>

著者: 野中 柊
タイトル: ジャンピング☆ベイビー
フードスタイリスト高橋みどりの新刊である。
1957年生まれ。女子美術短大卒業後、大橋歩事務所・ケータリングを経てフリーのスタイリストに。
前作の『うちの器』もよかったが、新刊もなかなかステキである。

「クウネル」や「住む」などで活躍中の著者。センスがいいのは当然かもしれないが、いつも著者の本の装丁はセンスがいい。
本書も印象的なストライプの装丁で飾っても楽しい。

暮らし方の提案本というのが一番近いのだろうか。
コート、革の鞄、高知での一日、朝の過ごし方とか、そういったことが綴られている。
自分の好きの基準を見極めて、気持ちのいい暮らしをしたくなる。

印象的だったのは来客があったときに洗面所がないので手ぬぐいのお絞りを出しているというエピソード。
今はおしゃれな手ぬぐいが沢山あるのだから、そうやって活用するのも手だな、と思った。
こんな風に生活を潤すヒントをくれる1冊。

<メディアファクトリー 2005年>

著者: 高橋 みどり
タイトル: 好きな理由

グ印観光 / グレゴリ青山

テーマ:
キョーレツなイラストで目を奪うグレゴリ青山。
男性かと思いきや、女性なのだ。
類稀なる面白本を生み出し続けている。

自宅に居ながら様々な旅へ誘ってくれるのが本書。
インド映画の世界、雪国での田舎生活、、大相撲観戦など濃い内容で胸焼けしそうなほど。
ただの旅本ではなく、著者の若かりし日のエピソードや趣味嗜好にまつわるエトセトラなど宝箱のように開けばザクザクと色々な物語が飛び出してくる。
私はバックパック旅行なんて一切興味がなく、きちんとツアーで大きなホテルに泊まり・・・なんて旅ばかりしているので著者とは系統が違うが、なぜか楽しめるのだ。
ただただ引き込まれ、理屈抜きに楽しめてしまう。
もちろん文才もあるが、ほのぼのとしてインパクト強なイラストも効果的で素晴らしい。手書き文字も趣があり私の好みである。

一度手にしたらハマる人が続出しているグレゴリ青山。
旅好きであろうとなかろうと、読んで損はなし。
忙しくて最近笑ってない、疲れてる、アナログが恋しいなんて方におすすめの1冊。

<メディアファクトリー 2004年>

著者: グレゴリ青山
タイトル: グ印観光