さて、こんにちは。
昨日の胃カメラ、10時10分の続編です。
中嶋先生からの宿題に答えたいと思います。

上級者には必要のない説明であることを、最初に申し上げておきます。

胃カメラで難しいのは、瀑状胃で、なかなか幽門輪に近づけない、シチュエーションではないでしょうか?
この10時10分というワザを習得すれば、いかなる瀑状胃でも挿入可能なのです。
その理屈を説明していきます。

イレウス管を入れたことありますか?
難しい症例の場合、Fornix~Corpusでグルグルまわってしまって、なかなかP-ringを越えられなくて困ったことありませんか? 
わたしは何度もありました。

GFぐるぐる1
















胃カメラでは、左側臥位で寝ていますから、Fig.1のようにスコープは胃の体部大弯に落ち込むような力が働きますね。

Fig.1のように重力がオレンジ色の矢印の方向へ働いていること、
Fig.2と3の緑色の部分、つまり胃の弓隆部が背側に膨らんでいること、
Fig.2で示したように胃の体下部が何故か、いつも盛り上がっていること(オレンジ色の矢印

が、協調して胃カメラを十二指腸へ進めるのを困難にしております。

イレウス管も同様ですね。

そこで、胃カメラの先端屈曲部の背、の部分を、胃の盛り上がった大弯へ押しつけ、容易に進めるためのスキルが10時10分なんです。
GFぐるぐる2
















スコープを右ネジリすることでスコープ全体を後壁に押しつけ、スコープ先端の屈曲部を大弯の盛り上がり、に乗せるのです。
この盛り上がりにスコープを乗せた後も、右トルクを常に作用させることによって、胃の体部を恥骨方向へ伸ばすことなく(伸ばす量を最小限にしたまま)、幽門輪に近づけます。

この盛り上がりに乗せることがデキナイと、
GFぐるぐる3

















Fig.3のように、スコープがFornixでグルグルまわってしまい、幽門輪へ近づけません。そして、そのような操作をしているうちに、胃を過伸展させてしまい、嘔吐を誘発します。胃カメラの環境がどんどん、悪化してゆくのです。

御理解頂けますでしょうか?

胃に入ってから、ただ、なんとなく右ターンして、胃の真ん中をダダ押しで進むと、胃の大弯の盛り上がりに胃カメラの屈曲の背を乗せることが出来なくて、人為的に瀑状胃をこさえることになりますよ。そうするとゲーゲーしてしまいますね。


ポイントは、スコープに常に右トルクを加えることで、スコープ全体を胃の後壁に押しつけ、滑らせたまま、幽門輪へ近づく、ことです。

上級者には必要のないテクニックかとも思いますが、このワザを駆使すると、瀑状胃で困らなくなるとともに、患者さんがゲーゲーしなくなります。

ほんとです。