暗記モノの復習の重要さを説明するときにエビングハウスの忘却曲線がよく取り上げられます。
桜井家もこれをみて復習のタイミングについて考えました。
しかし、タイミングが合えば良いってものでもないのです。
「子どものやる気」が前提となることを忘却して忘却曲線を説明しているようではギャグの域。
暗記テクニックを語る前に、まず必要なのがやる気であることは言うまでもない。
暗記よりも、算数よりも、まずここに悩んでいる親が多いのではないでしょうか。
わが子のやる気を引き出すためにはどんな作戦があるか。
まず思い浮かぶのが「将来の夢を持たせよう」という作戦。
ところが、夢を持たせても子どもはやる気を出さない。
そのとき一瞬だけで終わり、やる気は持続しないのです。
こんなに親は必死なのに、なぜか子どもはピンとこない。
子どもは呆れるくらい悠長に構えているのです。
なぜか?
答えは驚くほど簡単なところに転がっていました。
子どもにとって、大人になるのはまだずいぶん先の話なのです。
その呑気な顔を見て親は叫ぶ。
「そんなことないわよ。あっという間よ!」
親が焦るばかりで子どもはのんびりしている。
それをみてイライラしてしまう。
19世紀のフランスの哲学者・ポール・ジャネが考案した「ジャネーの法則」がそのヒントになります。
“生涯のある時期における時間の心理的長さは年齢に反比例する”
中学受験の場合、子どもが受験勉強をしている時期は10歳から12歳あたりになります。
仮に子どもが12歳、親が40歳だとすると、子どもは生涯の12分の1程度の感覚で時を過ごしているのに対し、親は生涯の40分の1の時を過ごしていることになります。
子どもと親の年齢の比が、12:40
反比例するということは、
子どもと親が同じ時間を過ごすときの感覚の比は、40:12
つまり、10:3
子どもは3倍以上の長さだと感じていることになります。
子どもが立っている地球は、親よりもかなりゆっくり公転しているのです。
受験まであと半年しかない、1年しかない、それなのにわが子は他人事のようにのんきな顔をしている。やる気がないんだろうか。そう思ってしまうのです。
親子で月日が過ぎる感覚に大きな差があることに気付かず誤解してしまうのです。うちの子はやる気がないんだと・・・。
「中学受験する」と本人が言っている以上、そんなわけがない。やる気はあると思うのです。
しかし親が不思議なくらい急かすものだから、その理不尽な要求にどんどんやる気を失ってしまう。
結局、本当にやる気を失うまで食い違い続ける。
私が作った人生表。
これは生涯を実際の長さで考える作戦。
いったん速さを別にして長さだけで考えた表。
その生涯の何分の1が今回の機会であり、その何分の1が今日であり、計算上は今日どれくらい勉強したら良いのかを子どもと話し合うときに、心理的長さの違いを強く意識して子どもと同じ感覚を共有する。
こっそり子どもの速さを想像してみる。
いま、どれくらいのスピードで生きているんだろうと考えてみる。
1年なんてあっという間という感覚は大人の世界。
そういえば自分が小学生の頃って1学期がかなり長く感じられた。
目線を合わせるって、そういうことだと思うのです。
だからといって悠長なことを言ってられないのも事実。
そんなとき、感覚で話し合うのではなく、割り算された長さで話したい。
1日ってそんなに大したことができない。数問しか解けない。すると計算上こうなる。
きっとその計算は理解できても、その月日の長さに子どもはうんざりしている。
ここで一緒にうんざりしてやれるかどうかが勝負だと思うのです。
半年や1年をとてつもなく長い時間と一緒に思ってやれるかどうか。
あと1年という時間を出来る限り同じ感覚で捉えてやりたい。
親の逸る気持ちを子どもに理解させるのではなく、子どもが今過ごしているスピードで話し合いたい。
これは受験を併走するために必要な親のスキル。
暗記テクニックよりもまずやる気。
エビングハウスよりもまずジャネー。
哲学者の私としてはそう思うのであります。
(-。-)y-゜゜゜
じゃあね~ (^^)/・・・で〆ますよね普通は。
桜井さん、うちの子受かりますか? ―中学受験 親の悩みにすべて答えます より一部抜粋
2017.5.1
桜井信一