My sweet home 《act.1》 噂



ママが亡くなって、義理の父親との二人きりの変な同居生活が始まって・・・・約一年。


義理の父との同居生活を始めるにあたり、いくつか彼と約束事をした。



1. 彼を「パパ」もしくは「蓮」と呼ぶこと

・・・・・・最初私は「敦賀さん」と呼んでいたのだが、他人行儀でイヤだと否定された。

「パパ」なんて・・・・・恥ずかしくて呼べないから、「蓮」と呼ばせてもらっている。

ただし、学校ではきちんと「敦賀先生」と呼ぶようにしている。


2. ママが生前言っていたいいつけを守ること

・・・・・・これは、高校生になっても”男女交際禁止”のことらしい。

ひどい話よねっ!!!!!


3. うそはつかない

・・・・・・当たり前よね。


4. お互いに遠慮はしない

・・・・・・一緒に生活するうえで、そんなことしてられないわっ!!!!


5. バイト先は「だるまや」だけ

・・・・・・私は、蓮の生活費のみで生活するのが申し訳なかったから、自分からアルバイトをしたいと

申し出をしたのだが・・・・・最初は却下された。

何度もお願いをしたら、しぶしぶ知り合いの料理屋さんのお手伝いをさせてもらえることになった。

それが・・・・・「だるまや」。

帰りが遅くなるといけないから、と、帰りは毎日必ず蓮が迎えに来てくれる。

仕事で遅くなるときは、「だるまや」さんにお泊りさせてもらう、という条件付で。

学校では、アルバイト禁止なのだが、理事長に特別に許可をもらったけど、もちろんみんなには、内緒。



とまぁ、数え上げればキリがない。

 


毎朝、私の仕事は、二人分の朝食とお弁当を作る。

そして・・・・蓮を起こして、ご飯を食べさせること。


蓮は・・・・・低血圧で起きるのが遅いし、朝食も食べようとしないっ!!!!


学校ではクールでかっこよくて、完璧にしているのに

家では結構間抜けなところが・・・・・ひそかに気に入っている。

(もちろん、本人にはナイショ。)


私は、結構この奇妙な同居生活を、それなりに楽しんでした。


でも・・・・・・ある噂を耳にしてから、少しずつ変わっていったのだ・・・・・・。




*




それは、2学期も始まってとある日のお昼休み。


先日行われた文化祭で人気だった、演劇部の劇の話をしていた。



「琴南先輩、きれいでかっこよかったよねぇ~~~っ!!!!!」



「私も、あんな素敵な王子様が居たら・・・・・絶対に惚れちゃぁぁぁぁ~~~う!!!!」



クラスメイトの女の子達が騒いでいたのは、劇の主役の王子役を演じていた

2年生の琴南奏絵先輩のことだ。


彼女は、生徒会長もしていて凛としてかっこよくて・・・・・

男子生徒にも人気があるが、じつは女子生徒では隠れファンクラブがあるほど人気だ。


・・・・・・かくゆう私も、ひそかにあこがれている。



「ねぇねぇ、でも・・・・・・琴南先輩って・・・・・・実は敦賀先生とできてるって噂、あるよね?!」



「「「えぇぇぇぇぇぇ~~~~~っ!!!!!!!」」」



なっ!!!!!なんですってぇぇぇぇぇ~~~~~っ!!!!!!!!


周りの女子生徒たちも・・・・・かなり驚いていたようだが、私は驚きのあまり

声も出なかった。


・・・・・・ちょっとっ!!!!何噂になってんのよっ!!!!!!

・・・・・・そんなこと、あるわけないじゃないっ!!!!

あの人、ママと結婚したのよ?!まだママのこと・・・・好きに決まってるじゃないっ!!!!


(・・・・・・ツキン)


そう思うと、ちょっと胸が痛いのは・・・・・きっと、気のせい。



「何でも、よく演劇部の部室で二人っきりで残っているところを見たことがある人が居るらしくって・・・・

ちょっとした噂になってるんだよぉぉぉ~~~???」



「えぇぇぇ~~~~っ!!!!!敦賀先生は、みんなの先生だよねぇ~~~!!!!!」



「でも・・・・・校医の安芸先生、敦賀先生のこと狙ってるって話も聞いたけど・・・・・・」



「イヤぁぁぁぁぁ~~~~っ!!!!!!そ、そうなのぉぉぉ~~?!

それならまだ・・・・・・琴南先輩のほうが良くない???

安芸先生、色気ムンムンで・・・・・・ちょっとイヤだよねぇ~~」



さっきの女の子達はいまだにそんな話をしていたが・・・・・・

私は聞いているのがいやになって、席を立った。



実は・・・・・・・


蓮は、非常にモテル。

学校内で、一番人気だ。


背が高くてかっこよくて、誰にでも愛想もよく、それでいてえこひいきもしない。


確かに・・・・・・・・もてるとは思う。



でも、私は彼の違う面を知っている。


私と話していると良く笑うし、怒ったりもする。

泣いてる顔は見たことないけど・・・・・

いつも真剣に毎朝、ママの遺影に手を合わせる顔つきは

誰も見たことのない顔。


ママと二人で居た時を見たのはほんのちょっとだったけど

本当に幸せそうにしていた。


だから・・・・・・・蓮は本当にママのこと好きなんだって思ってる。

そして、それは今でも変わらないって・・・・・・信じてる。




*




その日の放課後、私は噂がどうしても気になってしまって・・・・・


こっそりと用事もないのに演劇部の部室の前まで来てしまった。



コンコン・・・・・



「どうぞ~」



中から女の人のキレイな声がした。



「・・・・・失礼します」



中に入ると、琴南先輩が一人だけみえた。



「・・・・・あなた、誰???何か御用かしら???」



「えぇ・・・・っと。

私、一年C組の最上キョーコ、といいます。

顧問の敦賀先生、お見えですか??」



私がこう挨拶すると、琴南先輩はちょっと目の色を変え、ジッと私を見てきた。

まるで全身、品定めをするように・・・・・・



「・・・・・・・あなたが・・・・・・」



「????あ、あのぉ~~~????」



「あ、あぁっ!!!ごめんなさいね??なんでもないの。

・・・・・敦賀先生は今、会議中なんじゃないの???

職員会議が終わったら、一度こっちのほうに顔を出すと思うけど・・・・・

何か用事なのなら言付けしてもいいし、ここで待っててもらってもいいけど、どうする??」



「っ!!!!い、いいえっ!!!!!!

たいした用事でもないので・・・・・・・失礼しますっ!!!!!!」



「・・・・・ふぅ~~ん、そう・・・・・・・・」



ピシャンッと部室の扉を閉めて、駆け足で帰っていった。


・・・・・・あの、琴南先輩と、お話しちゃったぁ~~~っ!!!!!!


うれしくて、胸がドキドキしてた。

当初の目的など、すっかり忘れたまま・・・・・・・





*




職員会議が終わった蓮は、演劇部の部室へ行くと、今日も奏絵だけが一人で残っていた。



「・・・・・・今日も、か・・・・・・」



「・・・・・・悪かったわねっ!!!!」



「ふぅ~~~。・・・・・・何時まで、居るつもりなんだ???」



「・・・・・いつもの時間くらい、かな??」



「・・・・・・わかった、よ。」



「あぁ、そうそう。

あの娘(コ)、ここに来たわよ??」



「・・・・・あの娘(コ)??」



「先生の・・・・・・・・特別な娘(コ)・・・・・・・」



「っ!!!!!な、何か言ってたか???」



「いいえっ?!・・・・・大方、変な噂でも耳にして、様子を伺いにきたんじゃない??

一応・・・・・・父親なんでしょ???」



「・・・・・・一応、って・・・・・・」



「あぁ~~~らっ!!!!!私の目はごまかせないわよ???」



「・・・・・・・・」



「そんなににらまないでよっ!!!!みんなの大好きな敦賀先生が怖い顔してたら・・・・・

嫌われちゃうわよぉぉぉぉ~~~~????」



「・・・・・・・別に、嫌われたってかまわないよ・・・・・・・」



「彼女以外は、でしょ?!」



「っ!!!!こ、これ以上話をすると・・・・・・ここでの逢瀬はやめにするぞっ????」



「なっ!!!!そ、それは困るから、お願い・・・・・・ね、先生・・・・・・???」



「・・・・・・・・本当に・・・・・・どうしてこんな人と付き合ってるんだ???」



「あっ!!!!私の彼の悪口、言わないでよっ!!!!!」



「大体・・・・・俺との噂をそのままにしてるのだって・・・・・いい隠れ蓑になるから、だろ???」



「あらっ!!!!先生だって、彼女だけにフォローしておけば、案外いい噂なんじゃないの???」



「・・・・・・ヘタに他の生徒達が近づかない、かも・・・・・ね。」



「ほぉ~~らっ!!!!!お互い利害が一致してるんだから、文句言わないのっ!!!!!

ちゃぁ~~~~んと、彼女にフォローしておきなさいよ???

もちろん、私と彼の関係は秘密にしておいてよ???」



「・・・・・・ハイハイ、わかりました。」



ガラガラ・・・・・・



「お待たせっ!!!ちょっと・・・・遅くなったけど、もう終わったから。」



「・・・・・社先生」

「倖一さんっ!!!!」



「・・・・・奏絵。お待たせっ!!!!」



ギュッと抱き合う二人を横目に



「じゃあ、社先生、いつもどおりよろしくおねがいします。」



「あぁっ!!!いつも悪いなぁ~~」



ヒラヒラと手を振り、退室した。


・・・・・・・・さて、どうやって言いくるめようかな????




*




「じゃあ、本当に琴南先輩とはなんでもないの??」



「あぁっ!!!彼女は真面目な生徒で、演劇に対してもすごい真剣に取り組んでいるんだ。

大体いつも部活が終わった後に演技指導をして欲しいといって話が長引いてしまうことがあるから

そこを他の生徒に見られて噂になってしまったんだよ?!



「・・・・・どうして、否定しないの???」



「・・・・・実は結婚してますって???」



「じゃあ、どうしてママとの結婚はナイショなの???」



「・・・・・・一応、冴菜さんとの約束だから・・・・・・」



「ママとの約束って、そんなにいろいろしたの??

いつも、都合が悪くなると”約束だから”って・・・・・・

そうやって言うだけじゃないっ!!!!」



「・・・・・・・・いつか、ちゃんと教えるから、今は言えないんだ・・・・・・」



「・・・・・・・・いつかって、いつ????」



「ふぅ~~~ん・・・・・・・・・・

キョーコが大人になったら、かな???」



「???大人って、成人式を迎えたら??

高校を卒業したら???」



「・・・・・・・精神的に、大人になったら、ってことかな???」



「・・・・・????何それっ!!!難しいよぉ~~~~っ?!」



「そっ。難しいの。

早く教えて欲しいのなら、早く大人になりなさい。」



「っ!!!!!せこいっ!!!!ひどいっ!!!!!人でなしっ!!!!!!」



「・・・・・・人でなしって・・・・・・・ちょっとひどくないか???」



「いいのっ!!!!!!もう知らないっ!!!!!!!!!」 



バタンッ!!!!!


・・・・・・いつものパターンに・・・・・なっちゃった。

絶対に、口では勝てないんだから・・・・・・



く、く、悔しいぃぃぃぃ~~~~っ!!!!!!!!!!




act.2へつづく。



タイトル修正しましたm(_ _ )m