ヘリの機体が遠くに去り、空も海も穏やかな空気に包まれると、誰かが呟いた一言でみんな一緒にその場にへたりこんだ。
「めっちゃくちゃ緊張したー」
「ちゃんと笑えてたかなあ」
「やべぇ。俺、顔固まってたかも」
「・・・もう帰りたい」
「俺も帰りてー」
みんな疲れ果ててマイナスな言葉しか出て来ない中、気になるのはカズの様子。
完全に寝そべってぐったりしてるけど、しゃべれるだけさっきよりはマシかも。
背中を擦ってやれば黙ってそれを受け入れた。
「・・・ふはっ」
突然、櫻井くんが一人で吹き出した。
何が面白いのか分かんないけど、それは今までオレの前では見せたことのない表情だった。
「ん?」
揺れたか?と思った次の瞬間、ものすごく大きく船が傾いた。
「わああっ」
視界いっぱいに突然現れた壁みたいな真っ白なそれは大きな客船だった。
「・・・す、すげぇな」
「今度はこの船に乗んの?これで会見するってこと?」
「もうこれ壁じゃん・・・」
ビビりまくるオレたちをよそに、次々と大人たちが縄梯子で船を上がっていく姿が見えた。
促されオレたちも順番に同じように船を上がり、全員が揃うのを待つ。
先にデッキに上がったカズがずっと心配そうに下を覗きこんで誰かに話しかけている。
「翔ちゃん、大丈夫?」
「・・・おう」
隣から覗けば櫻井くんが上って来ているところで、笑ってるのに苦戦しているようにも見えた。