或る本の歌に日はく
 
3288
大船の 思ひたのみて さな葛(かづら) いや遠長く わが思へる 君に依りては 言のゆゑも 無くありこそと 木綿襷(ゆふたすき) 肩に取り懸け 齋瓮(いはひべ)を 齋(いは)ひ堀り据(す)ゑ 天地の 神祇(かみ)にそわが祈(の)む 甚(いた)も為方(すべ)無み
 
※ さな葛 :枕詞 さな葛はビナンカヅラのことで、長く蔓が伸びることから遠長くにかかる
 
大船に乗ったように頼みにして、ますます遠く長くあって欲しいと思うあなたのことでは、言葉の災いもないようにと、神事用に作られた木綿のたすきを肩にかけて、地面を掘って神酒 (みき) を盛るための素焼きの壺を据え、天地の神々に私は祈ります。なんともするすべがないので。