太宰帥大伴の卿の宅に宴してよめる梅の花の歌三十二首

 

   841

   鶯の聲(おと)聞くなべに梅の花 

           吾家(わぎへ)の園に咲きて散る見ゆ      對馬目高氏老(おゆ)

 

   鶯の鳴く声を聞きながら我が家の庭を眺めていると、満開の梅の花がちらほらと、静か

   に散っているのが見える

 

   842

   わが宿の梅の下枝(しづえ)に遊びつつ 

            鶯鳴くも散らまく惜しみ         薩摩目高氏海人(あま)

 

   鶯が、私の庭に満開に咲いている梅の木の、下枝から下枝へと飛び移りながら、散る

   花を惜しむように鳴いている

 

   843

   梅の花折り插頭(かざ)しつつ諸人(もろひと)の 

                遊ぶを見れば都しぞ思(も)ふ    土師(はにし)氏御道(みみち)

 

   たくさんの人たちが梅の花を折って、頭にかざしながら楽しそうに遊んでいる姿を見る

   と、遠く離れた奈良の都が懐かしく思われる